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ガイアに愛をもらった男  作者: かんじがしろ
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容姿端麗

副艦長は陸戦隊への誤解を解いてくれた上に、副艦長の豪華な料理にありついた、陸戦隊と鹿島隊長であった。

容姿端麗

 ホール食堂内は、広い長めのテーブルを一列に並べて、ひな壇には艦長席と空席、向い左側席に艦員が席についていた。

我等陸戦隊の礼服は、ベージュ色に金糸の刺しゅうで、左胸に師団マークに桜連隊マークを貼り付けてある。

余談ですが、陸戦隊の勇猛果敢な菊連隊と我らの桜連隊はライバルである。

航宙軍礼服は、白地に青のストライプ、同じ様に左胸に師団マークに連隊マーク、しかし全員のマークは、ばらばらである。

艦員同士も初顔合わせらしく、出航時の通信ミスをお互いに謝りあっている。

他方では、修理部品と工具の情報交換を、話し合っているのが聞き取れた。

この輸送艦は、余程の慌ただしい出航だった様である。


「お待たせしました。」

「お待たせ~~」

六人の給仕達は、礼服の上にエプロンをかけて、艦長殿から、席順に手儀はよく配膳していった。

「隊長~まだ、掴んではだめですよ~お代わりありますから。」

 とホルヘ陸士が、今にも手が出そうな俺に気づいて声掛けしてきた。

そんな声掛けを無視して、俺は、米だ!サバの味噌煮だ!肉じゃがだ!唐揚げだと心の中が踊りだしていた。

それだけでなくテーブルの中央に、すきやき鍋料理が五つ並べられている。

最高の豪華内容に、

「おおおおお~~」

と、俺だけでなく皆は目を輝かせて、最初の一口をどれにするか決めようと、各料理を見比べている。

エプロンをはずした陸士達がそれぞれ席につくと、副艦長がムキムキ娘を従えて入場して来た。

場は物音しない、みんなが副艦長に見入っている原因は、副艦長が化粧しているのである。

俺も初めてみた副艦長の化粧顔と、綺麗に肩下でカットされた薄赤毛姿に、

”キレイ、キレイだ!立てば芍薬しゃくやく、座れば牡丹ボタン、歩く姿は百合の花”

俺は胸の中で歌いだし、俺の目玉はおそらく、ハートマークになっているかもと思ったが、きっとなっているだろう。

副艦長は艦長殿の隣席に立ち、軽く頭を下げると、艦長殿は、ハ、としたように強く速く拍手した。

見とれてしまっていたのは、俺だけではなかったようだ。

艦長の拍手を合図に、現実に引きも出された様に全員の拍手が始まった。

ムキムキ娘は席に着きながら、

「隊長。目がウルウルで、口が開いていますよ!」

脳筋娘の言葉に、俺は慌てて左手で口を抑えた。

「冗談ですよ。」

と、言われ振り向くと、脳筋娘はニコニコしながらも目は笑っていない。

「この料理は、白いのがササニシキです。さかなのサバの味噌煮とポテトの肉じゃがといいます。鳥の唐揚げは鶏肉に油がしみこみ、絶妙な味です。中央にあるのがすき焼き鍋で、祖母の故郷地球の家庭料理です。これ等の材料は、この艦の永久保存庫の中身です。」

みんなは、副艦長の話の途中から、むしゃぶるように食べ始めていた。

俺も皆に負けまいと、嚙ぶり付いた。

副艦長の前置き挨拶は料理の紹介しているのだが、俺はそれどころではない。

しかしながら、何か懐かしい単語を氣いたような気がしたが、副艦長の前置き挨拶ごと、ご飯とおかずでお腹の方へ流し込んだ。

満腹感はあるが、まだすきやき鍋料理があるので、食欲は飽きることなく、身体中がすき焼き肉を求めた。


受皿を構え、鍋からすき焼き肉を箸で摘み取っていると、艦長殿と副艦長の会話を聞き取る気はないのだが、しかし、気になる言葉が発せられた。

聞き耳していると、

「初めての料理と味だが、すごくおいしい。飲み込んだ後、口の中に残る微かな甘さが、口の中から次を要求している。こんな感じのある料理は、は、じ、め、てだ。貴官は、全てに完璧な達人だ。」

「そんな~ことご座いません。口に残るのは甘味と言い、祖母の故郷の規範味付けです。私も大好きで、いつも祖母におねだりしていました。お蔭様で味は、覚えていました。」

俺もつい、懐かしさあまり、二人の会話に割ってはいてしまった。

「ご祖母殿の故郷とは、地球星の日本と言う地方でしょうか?」

「そうです。」満場の笑顔で返事してくれた。

その笑顔は卑怯だ。

観音菩薩の生まれ変わりか、ヴィーナスの再来かと思わせる笑顔である。

おそらく俺の頭の上には、♨浮かんでだろうと思い、天井を見上げた時、突然の足の甲に激痛が走った。

ムキムキ娘が小声で、

「固まっているのか?会話を続けなさい!」

と、言われて、

「御祖母殿の故郷は、私の生まれ育ったところのようです。料理は同じ物ですが、味は、老舗料亭の味付けとは、この様な感じのおいしさだろうな~と、想いながらいただいています。」

「お世辞でもうれしいわ~。鹿島陸佐、祖母と同じく箸をお使いでしたので、もしかすると、と思っていました。祖母の先祖はサムライだと自慢していましたし、黒い鞘にゴールドの色で、花と鳥を張り込んだふところ刀を祖母に見せていただきました。私はふところ刀より、きれいなカバー布地が好きでしたが。鹿島陸佐も侍ですか?」

「私などとんでもない、私の地方では、侍を武士とも呼びます。戦う人の意味ですが、

礼、信、節、義、技を持つ者です。私は、そこまで及びません。技だけは、丹精したいと思います。」

「陸佐殿の特徴は、シーラーの自慢していた話しから、信、節、義、技を兼ね備えた、最高の隊長だと思いましたが?」

「それは、買い被りです。この様な晩餐会招待いただき、そんなに持ち上げられたら、恥ずかしくて、穴に入りたいです。」

「それならば、今日のこと、貸でいいかしら?」

「大きな借りと思っています!隊としても、何ができるか?到着するまでには、何かを見つけたいと思います。ご要望がございましたらお教え下さい。」

「では、許して欲しい。」

副艦長は急に立ち上がり、テーブルへ手付き頭を下げた。

みんなが注目している。

ヤバい、皆を敵の回さないよう、収めねばならないと思い、

「で~ひゃ~。許します、許しています。全部ゆるしました。みんなが証人です。」

 と、分別なく、叫んだ。

「ありがとうございます。」

 副艦長は交渉時の顔とは違う、優しさが漂っている。

皆は、何事もなかったように、一斉に鍋料理に手出し始めた。

副艦長殿は微笑み、軽くうなずき、私の向きから目をそらした。

ニコニコ顔の艦長殿に顔向け、真顔で小声気味に話し、何かを説明しているようだ。

「隊長。ハンカチーフいりますか?」

「いや。持っている。」

俺はズボンのポケットから、しわくちゃのハンカチをとりだし、額とこめかみの汗を拭いていると、副艦長殿と目が合い、ニッコリされた。

急いでしわくちゃのハンカチを手の中へ包みこみ、副艦長殿の上機嫌の顔に、

お腹も、胸も、満杯である。

こんな事、俺の人生では今までになかったような、これが噂に聞いた、昇天ではと思えた。


 皆が完食すると、陸曹三人は自分の皿を持ち、調理場に行き、後からムキムキ娘が付いて行ったが、矢張り、ムキムキ娘の指示している声が聞こえた。

陸曹三名共にムキムキ娘の上官であるが、三名共上下関係を気にしないらしい。

「いいの、隊の女神だから。」

と、三名はいつもニコニコ顔で寡黙かもくである。

陸曹三名の戦闘中以外の大声は聞いたことがない。

彼等は作戦の理解が早い、新兵を保護しながら戦闘出来る中堅だ。

新兵がミスると、訓練場で新兵が理解するまで、そして自分達が納得するまで付き合ってくれる。

テーブルに残った俺たち八人は、航宙軍乗務員の手伝いを辞退してもらい、テーブルを拭き片付け、軽く床面を掃きだし会は終了した。

満足のいった食事快感だった。

 




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