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ガイアに愛をもらった男  作者: かんじがしろ
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多忙

多忙

私はアンドロメダ銀河の星座連合星都テンプレー星に生まれた。

父は星座連合評議会副議長、元軍人で小隊を率いたのち、次は中隊を率い、最後は大隊を率いて25の星を開拓した。

開拓の英雄と二つ名持ちである。

母親は、小隊を率いていた父の部下であった。

今でも父を愛して尊敬している。

ただ、昆虫を見付けると、「蟲だ。」と、踏みつける癖がある。

「ママ。それは昆虫。」

と、叫ぶと、父は

「ママが正しい、それは、蟲だ。見つけたらお前も踏みつぶせ!」

と、両親ともに蟲嫌いであるが、踏みつけた虫は絶対に昆虫だ。

野菜を害する虫を駆除してくれる益虫だと、胸の中で叫んだ。


ハ5454護衛艦隊から独立補給艦イW0001に転属命令が届き、副艦長兼任上級航宙技官を任命された。

”イW”頭二つ名は聞いたことがないので、特別輸送艦なのだろうかと思案させられた。

宙港に着き、ゲート125の窓から外を覗くが、それらしき艦は見当たらない。

「んんん、場所間違えたか?」

不安になったが、

私の横を通り過ぎる隊から二人の兵が、

「うお~。今度の移動は輸送艦でなく、客船か?」

と、ハモっている。

突然、小柄な兵が飛び出し勢いのまま一兵の尻に蹴りを入れ、正面の兵の股に大蹴りを入れた。

大蹴りをされた受け手側は軍靴を掌で受け、勢いそのまま後ろに飛びのいた。

二人共上級格闘者だろう。

「今は作戦移動中だ、気を抜くな!」

と、小柄な兵は女性らしいが、母も陸戦隊だったがこんな気迫はない。

ほかの兵たちは後ろの騒ぎを無視して受付をすまし、ゲートの中へ入っていった。

それを追うように、騒ぎの三人とも駆け足でゲートをかけぬけた。

先頭上官グループが後ろの騒ぎを無視している原因は、その行動は日常茶飯事であるかのようで、異質な隊であると思われた。


受付に行くと艦司令室へ来るように言われ、受付を済まし、客船型の側面を確認すると、イW0001とかかれていたので、間違いなく独立補給艦イW0001であると確認した。


「星座連合軍、マーガレット‘パラベシーノ上級航宙3等航佐イW0001乗務任命を受け、まいりました。」

「着任ご苦労!君は凄いですね、副艦長可の戦略室経験者と航宙技官資格者、これらの二名の補充を申請したら、上層部からお叱りの言葉貰い、軍には今人員の余裕はない全て一名でこなせるものを送る。何とかしろ!とのことだ。さっそくだが、丸、丸、三、丸、後出航だ。」

慌ただしい三十分後の出航である原因は、到着予定時間に余裕がなく、人員不足で出航できなくて困っていたらしい。


乗船後は、毎日が艦及びコースのデータと輸送物の確認をしなければならず、睡眠不足に陥っていた。

輸送物の確認中に一部の命令書に驚いたのは、輸送物の紛失や粉砕等の傷がないようにと記されていた。

「輸送艦は運送屋か⁉」

 と、愚痴ってしまうほど疲れさせられる内容であるが、確かに輸送艦は運送業者でもある。

 二回目の亜空間ワープ後に、要約トランクから私物をだして荷物の整理ができた。

そんな激務中。 

「鹿島上級陸戦3等陸佐より、面会希望です。」

と、リカーから通信が入った。

「了解した。10分後小ホール室にて、会いましょう。」

急ぎデータをまとめ、報告のまとめは後回しになった。

「鹿島。」父と同じく英雄と呼ばれているが、礼、智、覇気が感じられない。

知り合った男性皆、礼、智は持ち合わせていたが、彼とは何度か会っているが、只の戦闘狂だけの陸戦兵にしか感じない。

小ホールのドアを引き、中に入ると既に英雄殿は部屋中央あたりの席にいた。

彼は席に座ったままで、ほんの少しだけ会釈した。

「今回は何でしょうか?」

「この艦、娯楽設備は多々有りますが、訓練用設備がありません。積み荷の中にある、

対敵仮想マシーンお借りできませんか?壊すことはないと思います。」

「何度も繰り返し言いますが、荷をほどくことはできません。訓練でしたら、この艦は大きです。廊下は長いです。工夫してくださいますよう。他には?」

 いつも無理難題を持ち掛けられて、顔を見るのもうんざりな男なので、最後の言葉は吐き捨てた。

「多々有りますが、工夫してみます。」

「では工夫してくださいますよう、お願い申し上げます。」

この艦の通路は、他の輸送艦の通路より倍以上に広く、直線距離も長いので体力維持には有効であるはずだ。

訓練場として提供している部屋は、元カジノ室で、スロットもルーレットもないが、高低差は工夫次第で、じゅうぶん利用できるはずである。

そんな工夫も考えきれない指揮官を持ったことに、苦労しているであろう彼の部下隊員たちには同情してしまう。


艦司令室に戻り、機関部に遅れていた連絡を通達した。

「艦司令室です。機関長いますか?」

「はい、機関部機関長モードです。」

「燃料補助タンク五千ガード分は、輸送先に届けなければならない燃料なので、エンジン通穴パイプラインとの閉鎖確認、終わりましたか?」

「連絡遅れてもうし分けありません。エンジン通穴パイプライン閉鎖済みです。」

「了解です。」

燃料コックは外側近くなので、万が一不備な事態が起きたとき、艦中央にある補助タンクを守るためである。

たった九人だけで、この大型艦を運営することは、奇跡としか思えない。

皆、帰港まで持つだろうか、との思いが込み上げる。

本当に人手が欲しい、特別緊急事態でなければ陸戦隊の手は借りられない。

”忌々しい”と、誰かでもないが何かに八つ当たりを欲した。


六回目の亜空間ワープが大事もなく済み、アーロ星の気象情報を調べたいが、リカーICには軍用データしかなく、軍駐留以前の記録がない、図書室の本か図書専用ICで調べ物ができないかと、図書室に入るとあの時のモーレツ娘が、机にうつぶせ寝していた。

「あら、どうしたの?」

この子に興味があったので、声をかけてみた。

娘はビックリしたようで、

「副艦長殿、見苦しいとこお見せして、申し訳ありません。」

「いいのよ、ここは娯楽施設だから、気楽にしましょう。」

「ありがとうございます!」

「なんでこんな所で寝ていたの?」

「ジャンプです。以前はなんともなかったのですが!苦手になったのです。何か良い方法がないか?調べたが何も見つからず、ふて寝してしまいました。」

「ごめんね、ワープは普通長くても5時間ぐらいなのに、10時間もんね~。帰りの燃料が補給地までギリギリなので、燃料節約のために亜空間ワープを長くする必要があるの。」

 航宙軍の出航遅れ不手際を隠して、燃料節約吞みだけを伝えた。

「それは気にしていません!ただ、輸送艦での移動が、私達の訓練場なので、この艦は向いてなかったのです。そのストレスだと思います。」

「訓練が好きなの?」

「生き残るには必要です。それと隊長をケガさせたくありません。」

「隊長、好きですか?」

「好きです。でも男女間のことではありません。隊長は戦闘中、全隊員の状態を常に見ています。私は何度も助けられています。みんなもそうです。だからみんな強くなりたいのです。」

「訓練とは、体力造りと思うのですが?」

「航宙軍と陸戦軍とでは、敵との距離が違います。私達は、一メートルに敵がいます。ミスると名誉の戦死です。」

「私に理解できるように、説明してくれる?」

「戦闘後、隊長にスキを指摘されますが、私と経験少ないものには、言葉では修復できないのです。仮敵では死にませんので、対敵仮想マシーンで納得できるまで訓練できればと、いつも思っています。特に隊長殿のプログラムは各自に合わせてもらえます。」

「貴女の部屋へ、時々お邪魔します。いいですか?」

「副艦長殿でしたら、何時でもドアを開いています。」

 トカゲモドキは、二本の長い刃爪を振り回して襲い掛かるが、それを払いのけて、交わしながらの肉弾戦で倒す。

払いのけきれないと、倒すのは無理である。

払いのけても前は安全だが、後ろから刃爪が襲い掛かるので、仮敵訓練は生き残り訓練であり、陸戦士には、移動中の訓練は義務付けられている。

その訓練義務は、上官からの強制訓練ではなく現場からの声だった。


他の陸戦隊と輸送艦で同舟時、隊員達は移動作戦中なのに命の洗濯と酔っぱらっていた。

しかし、この隊の隊員たちからはアルコールの匂いを感じたことがない。

本当は、輸送艦には全訓練用の設備を導入する義務がある。

この輸送艦責任者は、私を含め陸戦隊の訓練を重要とは思い至らなかった。

訓練設備設置工事不手際のままの、無理な出航は航宙軍と当艦にある。






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