領地の併合
領地の併合
期待してたサンビチョ王国領連合の動きが全く無いようである。
そんな折、ヘレニズ.サンビチョ公爵の城郭都市三湖街三キロ先に、魔物が現れたとの事である。
サンビチョ王国領連合を引きずり出すチャンス到来と思い、軍団の幹部を集めた。
「三湖街三キロ先に魔物が現れた。これを狩りに行きたいと思う。」
「この時期に魔物狩りとは、別の目的を含んでいますか?」と、トーマスが尋ねた。
「そうです。サンビチョ王国領連合との、戦闘を目論んでいる。」
「どの様に引きずり出しますか?」
「三湖街とパンパ街へ、互に救援依頼を出す。」
「ヘレニズとトマトマの名前で、援依頼を出すのですか?」
「そうです。」
「こちら側が三千人だと、出て来ないと思いますが?」
「表に出るのは陸戦隊十二名と、盾を装備した火炎放射器隊五十名、爆裂砲と煙幕弾を搭載した軽機動車輌十五台、液体窒素搭載車輌二台にて展開する。」
「爆裂砲を表に出すと、出てきにくいのではないでしょうか?」
「狩場に近いヘレニズが出てくるのは、狩りが終わってからだろう。」
「では、作戦会議だ!」と、パトラが叫ぶと、
「合点承知」とエルフ種族戦士の合唱が響いた。スクリーンいっぱいに、三湖街周辺の地図画像が映し出されている。
魔物が現れる周辺を、赤い円で描き、ヘレニズ軍の予想進路を黄色線で表し、トマトマ軍の予想進路を青線で表した。
三湖街とパンパ街の偵察隊は各三騎馬を配備し、三湖街城壁から隠れる位置に、三十騎の騎馬隊を忍ばせて、ヘレニズ.公爵の出陣を偵察隊と偵察衛星に確認させ、城門に引き返せない位置まで出たところを、爆裂弾丸で門を破壊して退路を断ち、背後から騎馬隊が襲い、捕獲することを指示した。
城壁側の魔物が現れる赤い円外側に、ヘレニズ軍の予想進路を黄色い線を囲むように三角柵に草木を利用して隠匿し、そこに千名の銃撃隊を伏せる作戦で臨んだ。
トマトマ軍に対しては青線の向かいに三角柵に草木を利用した隠匿にて、千名の銃撃隊を伏せる作戦で臨んで、進行してくる前方に、進撃を止めるために爆裂弾丸を打ち込む。
トマトマ軍前方に爆裂弾丸を打ち込むと、兵たちは逃げ出すと思うが、逃げる兵にかまわずに、騎馬隊三十騎はトマトマ軍の後方からトマトマを捕獲するよう指示した。
残りのエミュー隊千人は控えに回り、猫亜人救護班百人の警護兼ねて伴い、ヘレニズ軍とトマトマ軍の間に配置して遊撃部隊とした。
朝日が昇る一時間前、パンパ門から進撃した。
エアークラフトとトラック荷台を付け出しの重機動車、エミュー部隊、軽機動車、騎馬隊、クレーン車、オートバイ、放水車、ありったけの車と、動くもの全てを動員しての、三千人の出陣である。
聖騎士団からも同行を求められたが、移動するのに搭載過剰過ぎると断った。
パトラの運転で、シリーやジャネック等白色甲冑組六人とミクタを乗せて、魔物が出現するであろうと思われる、地図上の赤い円に向かった。
「閣下たちが魔物を倒したら、私はエミューに乗り、パンパの街の門番衛兵に、手紙を届けるだけでよろしいのですか?」と、親衛隊に似せた甲冑を身に着けたミクタは聞いてきた。「パンパ街の門番衛兵とは、打ち合わせ済みなので、大丈夫です。」
ヘレニズからの手紙を、トマトマ宛に送る文章は、『こちらは、三千人の兵が揃った矢先に、亜人協力国の指導者が、二十人程で魔物を倒しに、三湖街近くの三湖森へ出向いたようですので、挟み撃ちにして打ち取りましょう。』との内容をヘレニズの封蠟付きで、届けることにした。
逆にトマトマからのヘレニズ宛には、
『ようやく兵が、千五百人集まりました。亜人協力国を偵察に向かわせた兵によると、指導者を含めて二十人だけで、魔物を倒しに、三湖街近くの三湖森へ向かったようです、挟み撃ちにして打ち取りましょう。』との内容をトマトマの封蠟付きで、届けることにした。
トマトマの手紙は、シリー、とジャネックに託した。
ヘレニズとトマトマの封蠟印型は、テテサから借用した手紙に付いていた、封蠟印の複製である。
赤丸で囲んだ森沿いに着いた頃、東の空は白い霞が広がり、独りぼっちの雲の下方は、赤く染まりだし、 銃撃隊は三角防御柵にせわしく草木をむすび、藪を装いだした。
タブレットパソコンを開くと、皆作戦通り全軍配置に付いているようである。
コーA.Iに魔物の位置を探すように指示したが、魔物の位置を特定できないとの連絡がなされた。
周りを見渡すと、陸戦隊が手持ち無沙汰げに徘徊している。
何故か総司令官改め首席行政長官となった薙刀片手にマーガレット首席と、パトラ副首席が魔物の鱗甲冑を着して、俺の後ろに付き従っている。
「まさか、二人共魔物退治に加わるつもりですか?」
二人は目を爛々と輝かせ、興奮しているかのように頷いている。
「パトラの経験した、快感を味わいたい。」
「私も、もう一度、快感したい。」
「命にかかわる危険なことなのに、快感したいと。」
「閣下に守ってもらえると、信じています。」
パトラもマーガレットに同意するように、満願笑顔で頷いている。
トーマスに助けを求める為に周りを見回すが、トーマスは俺と目を合わせるのを避けるように、背を向けた。
他の陸戦隊全員が、俺に背を向けながら偵察を装い徘徊している。
皆邪険な推測をして、関わりたく無いのだろうと思うことにした。
トーマスを呼び、
「魔物を持って待機していても、埒が明かない。探しに行こう。」
「それは、是非とも。」やはりトーマスにも、現れないかもと不安があったようである。
先導にトーマスとシーラー、ホルヘの三人を命じ、タブレットパソコンにコーA.Iの示した矢印の方へ向かうと、魔物に踏み潰されたのであろうと思われる獣道が現れた。
輸送艦に取り付けてあった、対艦用レーザー砲を乗せたキャタピラー重機動車を、
先導隊の後ろにつけて、獣道を進んだ。
二キロも進んだろうか、開けた原っぱに出ると岩山に洞窟らしき穴がある。
草を踏みつけた魔物の足跡は、洞窟入り口まで続いている。
「洞窟の中に入ります。」と、トーマスの声が、無線を通じて連絡をよこした。
俺も軽機動車から降りて、爆裂砲とレーザー砲等を積載した軽機動車を、洞窟入口を囲むように配置につけ、対艦用レーザー砲を乗せたキャタピラー重機動車を中央配置して、
「魔物の体が洞窟内なら、岩山に当たると岩が崩れる恐れがある、足元だけにしてくれ。」とマークとサブウェイに伝え、エアークラフトにも、無線で待機を命じた。
陸戦隊用のレーザー砲と、爆裂砲は頭と腕を狙うよう指示した。
対艦用レーザー砲を、洞窟の奥に向かって射てば討伐できるが、目的は魔物の素材の確保である。
トーマスからの無線が入り、暗視装置を使い魔物を確認したと連絡を受けた。
「これから、魔物を誘い出します。」とトーマスの声がすると、三人は洞窟から飛び出して軽機動車輌に飛び乗り、われらの方へ帰ってきた。。
魔物の頭が洞窟から四つ足で、頭だけがニョロっと出たとこれで、一斉射撃を命じた。
凄い土埃で魔物を確認できない。聞こえるのは岩の崩れる音だけである。
「射方止め!」と叫んだ。
土埃が収まり、這いつくばった魔物は頭半分だけの損傷なので、
「残りの頭吹き飛ばせ!」と叫んだ後にもまた土埃が舞い上がっていく。
「射方止め!」を発すると同時に、
「チャンス」コーA.Iの声が響いた時に、マーガレットとパトラが、洞窟入り口の魔物に向かって走り出した。
無謀と思える行動だが、俺はそれを追うしかない。
土埃の中は薄らであるが、魔物の片足が岩をはねのけて、立ち上がろうとしているのが確認できた。
マーガレットとパトラがその足首に、真っ赤に発動した薙刀と剣で切りかかり、傷つけるだけと思ったが見事に切断した。
しかしながら、足を切断したのだから、魔物の巨体がマーガレットとパトラの上に、崩れ落ちて来ることまでは考えてなかったようで、何時も冷静なマーガレットはパトラにたぶらかされたのか、後先考えず無茶をしたようである。
全力疾走で二人を其々に両脇に抱え、崩れ落ちる魔物からぎりぎりの間合いだが、全力で避けるしかなかった。
魔物の倒れる衝撃音で振り向くと、何であんな倒れ方なのか不思議だが、這い蹲るのではなく、あおむけに倒れている。
陸戦隊全員も、二人が駆け出した後を追いかけたようで、あおむけに倒れている魔物の腹によじ登り、心臓付近を切り裂いていく。
尾刃は洞窟の落盤で、身動きが出来ないようで、岩の向こうの尾刃を確認できない。
今回の魔物の討伐戦は、コーA.Iとマーガレットやパトラの勝利のようである。
尾刃が洞窟の落盤で身動きが出来なかったのは、ついていた一言だろう。
マーガレットとパトラはお互いに抱き合い、
「快感」と言い合っている。
「俺が抱きかかえての移動も、コーA.Iの計算に入っていたのかい?」
「そう、コーA.Iの完璧な計画です。」と、パトラは胸を押し出す様に、俺に抱きついて来た。
パトラだけでなくマーガレットまでもが、抱きついてきたので、二人の放漫な胸の感触を味合わさせてもらったのは、いい役得であると鼻の下を伸ばした。
後は皆に任せて、パトラの運転でマーガレットと俺を乗せて、ヘレニズたちの待つ森の入り口に向かった。
魔物解体に控えている猫亜人は、クレーン車を伴い洞窟に向かった。
ヘレニズとシリー、とジャネックに伝令を頼み、各部隊長に魔物を倒した事を、通信した。
サンドイッチと革袋のミルクティーを、笑顔いっぱいのマーガレットが俺に差し出したので、
「随分な無茶しやがって、コーA.Iの協力は、どの様な背景からだ。」
「魔物に一太刀入れたいと、懇願命令しました。」
「閣下の援護があるだろうから、九十八パーセントの成功確率でした。」
「残りの二パーセントは?」
「マーガレットと私が、途中でずっこける確率。」
「俺が動かない場合の確率は?」
「閣下は、私たちが飛び出したら必ず後を追うのは、確実だと思っていました。」
「何を根拠に、確実だと?」
「私たち二人を、特別な人と思ってくれているでしょう。」
確かに図星であるが、二人を前にどちらかを選べと言われたら、どちらも好きなのに気づかされたので、返事ができなかった。
快感のために行動したにしても、楽観的なパトラの行動は理解出来るが、マーガレットの性格からすると、無謀と思える挑戦に驚かされた今回の魔物討伐であった。
シリー、とジャネックは三湖街の門から逃れる脱兎の如きのように、憤慨しながら伝令から帰って来た。
「ご苦労様でした。」
「非礼な門番達であった。我らをトマトマの女親衛隊だと思い、卑猥な言葉をかけてきた。」
シリー、とジャネックはかなりの怒り方である。
ジャネックは、俺の耳元で、
「シリー様に、特別なやさしい言葉をお願いします。」
と、小声でささやいた。
「シリー、私の頼みでいやな思いをさせたが、今回の任務はシリーでなければ、うまくいかなかったのです。これから起こることはシリーの手柄です。」
「いやな思いをしたことは、閣下に貸しということで、よろしいですか?」
と、シリーは恥じらいながら小声でささやいた。
シリーに言った事は本心でそう思っての表現であり、トマトマの女親衛隊の噂から思いついた人選であったので貸しを素直に認めた。 二つに分離された魔物が、クレーン車と重機動車輌に引かれて森から出てきた。
これからトラックに積み直すようである。
三湖街の城門が開き、百人ほどの傭兵に続いて、徴用されたと思える粗末な木製鎧を着こんだ二百人ほどの棍棒兵団と、銀灰色の甲冑を纏った百人位の騎士団風が後ろから現れた。
四百予のヘレニズ兵は広めに展開した。
我らの戦闘員が少ないのを確認しての、鶴翼の陣のつもりだろう。
ヘレニズ軍の鶴翼陣を中央から割るように、エミュー部隊が前面に現れて、その中央辺りに黄金甲冑を纏うった小太りの男が現れて、部下に指示をしている。
指示されたと思しき男がエミューに乗り、魔物を解体と積み込み作業中の猫亜人達に近寄り声掛けした。
「この魔物は、当方の領地に生息していた魔物だ。さっさと魔物を置いて立ち去れ。」
猫亜人は驚いたようにトラックやら、魔物の影に隠れた。
エミューに乗った男は、勝ち誇ったように、魔物の周りを徘徊して、
「責任者はどいつだ!」と叫んだので、「俺が亜人協力国の守り人で、指導者である。」と、言ってエミューに乗った男に小枝を片手に近づいた。
「ヘレニズ.サンビチョ公爵様に魔物を献上するならば、配下に加えてくださるとの下知である。」
「お前がヘレニズ.サンビチョ公爵ではなくて、ただの使い走りか?」
「ただの使い走りか?だと、俺は親衛隊長のドトールだ!口の利き方に気をつけろ!」
かなりプライドの高い男のようである。
「ヘレニズ.サンビチョ公爵とは、お前みたいな馬鹿をよこすとはかなりの臆病者のようだな。奪いたければ、自分で出向け!と伝えろ」と言って、小枝でエミューの顔をはたいた。
ドトールはエミューの暴走に耐えるように、必死になってエミューを制御しながら、エミュー部隊に突っ込んでいったが、制御するのは難しいらしく、他のエミュー部隊を混乱させていた。
隊列整わぬまま、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールは突進して来たが、ほかのエミュー等はばらばらである。
「合点承知」とパトラの声掛けでそれを合図に、森の影から爆裂砲が門を破壊して、三十頭の騎馬隊が側面から現れて、鶴翼の陣で備えていた兵の前に爆裂閃光弾丸を三発お見舞いすると、騎馬隊を避けるように、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールを除いて、すべての兵が城壁沿いに逃げ出していた。
射撃隊からは二発の銃声がしただけで、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールの乗ったエミューはもんどりをうち、ヘレニズ.サンビチョ公爵とドトールは投げ出された。
ドトールは、抜いた自分の剣でのどを貫いてしまった即死であった。
ヘレニズは脳震とうのようで、大の字に倒れている。
「何だ!戦闘はないのか?」パトラの呆れた顔と言葉である。
マーガレットも薙刀を振り回し、気勢を上げている。
この二人は戦闘狂かと疑りたい心境であると同時に、悋気も隠し持っているのなら、怖いと思われ、重たい女たちだろうと思った。
ヘレニズは気が付いたらしく、俺の前に連れてこられた。
「ヘレニズ、何故に魔物を横取りしたいと思ったのだ。」
「ここは俺の領地で、すべてが俺のものだ!」
「そんなのは屁理屈だ。城壁の外は全て他国と共有している事だろう。パンパ全て亜人協力国の領地だと、宣言したのは俺たちだ。」
「それこそ屁理屈だ。三湖の森はみんなが認めた俺の領地だ。」
「他人の獲物もお前のものなのか?」
「献上すれば、配下にすると伝えたはずだ。」
「では、お前の領地を俺に献上すれば、配下にしてやろう。」
「ふざけるな!俺はサンビチョ王国の公爵だぞ!」
「今はただの捕虜だ。領地を俺に献上すれば、身代金無しで解放しよう。」
ヘレニズは不利になると沈黙を決め込むようで、俺の目をそらして天を仰いでいる。
ハービーハンから無線が入った。
「トマトマは無傷で捕縛しましたが、女騎士団二十名はわれらに向かい挑んできたので、すべて肩を射抜き捕獲しました。エミューから落ちた時に、打ちどころが悪い者もいるようです。救護班を依頼します。」
トラックで救護班を向かわせ、ハービーハンからの状況説明を聞くと、爆裂閃光弾一発で、トマトマはいの一番に逃げ出して、トマトマ軍二百は後を追わずに、蜘蛛の子を散らすように逃げ去ったとのことであったが、トマトマ軍の進軍からかなり遅れていた女騎士団は、逃げてくるトマトマを庇う様に、エルフ族騎馬隊に向かってきたとのことである。
正体不明の女騎士団のようである。
ハービーハンは、束縛されたトマトマの身柄を連れて現れた。
「久しぶりだなトマトマ、何で俺たちに挑んできたのだ。」
「ぼられた穀物の精算だ!」
「あれはお前が住民の為に必要だと言っただろう。だから俺が配給してやったのだ。恨まれる筋合いはない。」
「配給は、俺が行わねば意味が無い。」
「すまなかった。俺の早とちりだったのか。しかし、今回の争いはお前の方から仕掛けてきた。お前は捕虜だ。お前の領地を取り上げねば収まらない。」
「勝手にしてくれ。だけども、サンビチョ王国が黙っている訳がないぞ!」
「そこでだ、相談だがお前の領地を白金貨五十貨で買ってやろう。」
「たとえ売るとしても、白金貨五百貨だろう。」
「今のお前の領地は、白金貨五十貨の価値しかないだろう。」
「白金貨五百貨の価値はある。」
「お前を捕虜として、亜人協力国に招待しよう。ゆっくり考えて返答してくれ。」
白金貨五十貨は、星座連合の五億クレジットであるが、鉱山一つの価値もないけれども、
トマトマには充分すぎるだろう。
ハービーハンが、捕縛したヘレニズを馬の後ろに引いて現れ、トマトマの綱を受け取り、二人揃えて引いていった。
マーガレットとパトラは、女騎士団を医療病室に案内するようなので、トーマスの運転で、
シリーとジャネック、ミクタを軽機動車に同乗させて、
「ミクタ殿。ヘレニズとトマトマの領地を治めてくれ。基本は農奴と奴隷の開放で地主の解体と教育の充実を整えてほしい。それと余剰人員の樹海跡地への移住の面倒を見て欲しい。あとは治安の安定もお願いします。」
「難しいが、必ずや成し遂げて見せます。」
「農奴と奴隷の開放、地主の解体、とは、どういう意味ですか?」と、シリーが聞いてきた。
「地主の土地は、小作人と農奴達が耕作していて、作物は全て地主のもので、小作人や農奴、奴隷は食べるだけの人生です。小作人と農奴達の耕作地は小作人と農奴達の耕した土地です。売られた奴隷は、事情を確認して解放する。罪人奴隷は罪の分だけの期間にします。」とミクタは説明しだした。
「貴族の荘園も、農奴のものですか?」
「当然です。」
「貴族と地主の威厳と生活は、維持できません。」
「それは彼らの問題で、われらは関知しません。亜人協力国には貴族も地主も必要ないことです。」
シリーは釈然としないようで、ジャネックに同意をまとめるが、ジャネックは首をかしげるだけで、同意を表さないようである。
ミクタの説明は、我らの基本をテテサが理解し賛同して、説法教育に取り入れてくれた成果によるものである。
「軍隊の事は、トーマスとよく相談し合ってください。」
ミクタはうまくやる男だろうと、トーマスの顔を覗くと微笑んで頷いた。
コーA.Iの通信が入り、女騎士団の身元がサンビチョ国王女と解ったとのことである。
王女はサンビチョ国王の命を受け、女騎士団を率いてパンパの街に着き、亜人協力国の守り人が本当に魔物を倒したのか、亜人協力国の守り人はどの様な人なのか調査すると、パンパ街の住人全てが褒めたたえ、勇者であり爆裂魔法の魔術師だと言い合って、魔物は間違いなく倒す力があると言い合ったので、半信半疑ながら、修道院を訪ねていったらしい。
そして、今まさに魔物と戦っているらしいと、修道院長の知らせでその場所に向かっていたが、トマトマ軍が亜人協力国と交戦しているとは知らず、爆裂音の方からトマトマの乗ったエミューが避難する様に女騎士団の方へ来たので、サンビチョ国王女の立場では、保護する義務があるので、女騎士団に向かい襲い掛かってきた、奇怪な野獣に乗ったエルフ族に立ち向かたとのことである。
王女を含めて、十七人の重傷者が出たようで、全員に万能薬と、銃創には万能塗り薬を使い、骨折者にはギブスをあてがい、暫くの間亜人協力国で養生させることにした。
ヘレニズとトマトマが捕虜になったことを知り、女騎士団は騎馬隊に対して自主的敵対行為でなく、正当防衛を主張しているようである。
モニタースクリーンに、航宙技官の溶接技能講習を受けた猫亜人技能者による、樹海の中に傍に向かい合わせに造られた檻に、ヘレニズとトマトマがハービーハン、ハスネ、ヒビイ、トトラ、ら四人に、それぞれの檻に収監されている。
「ここが、捕虜収容所です。安全な場所ですから、寛いでください。もし条件を受け入れるのであれば、ぶら下げてあるボタンを押してください。話し合いに応じます。」と、
ハービーハンは二人の捕虜に呼び掛け、檻から離れていった。
朝食を済ませて、モニター室に出向くと、陸戦隊が全員揃っている。
昨夜の当番は、ヤンとホルヘの二人で、
「昨夜のヘレニズとトマトマは、半狂乱でした。」と、ヤンが説明して、モニタースクリーンをアップした。 五匹の黒い猛獣コヨーテ似豚鼻が、檻に近寄り二人を威嚇しだしている。
二人はそれぞれの檻の中央で震えているが、豚鼻の爪は届かないようなので檻の中央でへたり込んでしまい、トマトマに至っては、ぶら下げてあるボタンを押し続けている。
豚鼻は諦め切れないのか、檻の周りを徘徊しだした。
豚鼻が徘徊をやめて、樹海の奥を警戒する等に威嚇の体制になると、トカゲ顔似の
ダーホーが四頭現れた。
ダーホーは攻撃的であるが、豚鼻はダーホーの爪と牙の毒を知っているようで、遠巻きに威嚇している。
四頭同士が正面から向き合い対峙しているが、ダーホーの攻撃に豚鼻は避けているだけのようであるが、一頭の豚鼻がダーホーの背後から襲い掛かり乱戦となった。
しかしながら、ダーホーの爪と牙は、一頭の豚鼻に爪先を食い込ませ倒した。
爪先を食い込まされた豚鼻は、もんどりうちながら、腹を上に向けて痙攣している。
残りの豚鼻は、形勢不利と思ったのか、逃げ去った。
ダーホー同士が、豚鼻の絶息した肉を奪い合う光景に、ヘレニズとトマトマは、小便を漏らしたのか、檻の床から水滴と液体の流れが確信された。
ダーホー四頭の胃袋は、豚鼻一頭では喰い足りないのか、檻の二人に襲いかかった。
檻の格子は、ダーホーの頭を通さない狭さで、イラついたダーホーは、頭を格子に向けて
突進しだしたところ、丈夫な格子のようであるが、檻の受ける衝撃はかなりのようで、
右に左に揺れだしている。
ヘレニズとトマトマは、半狂乱に成りながら、ぶら下がったボタンを引き契り、握りしめて何度も押している。
ダーホーは、時々諦めた様に静かになるが、しかしながら、諦め切れないのか、格子に何度も頭を打ち付けてくる。
ヘレニズとトマトマは何度目かの攻撃で、ボタンを檻の外に落とした後に、直一層大声で喚いている。
ヤンとホルヘの二人は、ヘレニズとトマトマをかわいそうと思い、救助に向かおうとしたが、ダーホーも疲れたのか寝入ってしまい、静かに成ったのでそのままにして、今に至っていると、報告した。
俺を含めて、タゴール、キキロ、カイラを伴い、二台の軽機動車で、捕虜収容所に向かった。
捕虜収容所に近づくと、ダーホーは、俺たちを威嚇する様に、首を横に激しく振り出した。
皆一斉に魔物の尾刃を発動させて、ダーホーに向かい、難無くダーホーの首を切り落とし、首と足首をレーザー銃で、時間を掛けて墨にした。
ヘレニズとトマトマは、目の下にクマを作り、顔はゾンビの如く青ざめて、ぐったりと打樋枯れている。
声をかけても上の空で、目は宙に向けたままである。
絶息したダーホーを、今日の食事として、耕作地に居る人と猫亜人の集落に運び、車から降ろしていると、人間の老婦人がトマトマに気付き、小枝をもって近づいて来るなり、トマトマに襲い掛かっかる。
「孫を返せ、娘も返せ!」と叫びだした。
慌てて引き留め、訳を尋ねた。
「食料はすべて、種籾までも搾取して、孫も娘も寒い冬を越せず、餓死してしまったのです。」
「悔しかったのは解ります。今度はトマトマの番です。トマトマの領地は、亜人協力国の領地になります。」
老婦人をなだめて、艦の迎賓室に向かった。
立会人はテテサにお願いして、同意書作成は、マーガレットとパトラとマティーレにお願いし、ムースンとミクタは傍観者として、皆を召集した。
テテサは是非とも立ち会いたいと同意し、サンビチョ王国の王女イアラも立会人として、同席させてくださいと懇願してきたので、軽く承諾した。
「トマトマ、お前の領地は、白金貨五十貨だが、お前の領民だった餓死者の供養として、二十五貨、お前の取り分は二十五貨とする。異存があるか!」と、恫喝した。
トマトマは頭を垂れて、同意した。
樹海で一晩過ごした出来事から来た茫然自失なのか、老婦人からの仕打ちを受けた悔恨の情なのか分からないが、自らの悪事を認めたと思うことにし、後で幾ばくかの援助をしてやらねばならないだろうが、次のヘレニズとの交渉が控えているので、この場では厳しい態度を示し、温情を示す事は、出来ない事である。
「ヘレニズ!お前は権利があるからと、俺らが倒した魔物をよこせと言って、戦いを仕掛けてきた。だったら、俺たちがお前の領地をよこせと言っても、お前の理屈だと可能だろう。」
「そんなの屁理屈だ。」と、ヘレニズは強がった。
「では、どういう落とし前を着ける心算だ!」
「身代金でどうだ。」
「いくらだ!」
「白金貨五十貨でどうだ。」
「よし!白金貨五十貨で、お前の安い首を買おう!勇者の剣で試し切りだ!マティーレ、白金貨五十貨を用意しろ!」
「どういう意味だ!」
「俺とお前は交戦して、俺が勝った!お前の全てをいただける権利があるはずだ。だがら、お前の領地は頂くが、テテサの願いで、命は取らないつもりであったが、お前は自分の首に白金貨五十貨を付けた、買ってやろう。金貨はお前の家族に送る。」
担架で運ばれてきて、俺を始終観察していたサンビチョ王国の王女イアラが、横から口出しした。
「白金貨二百貨出します。命だけはお助け下さい。」
「落とし前をつけたい!俺は白金貨二千貨用意しよう。」
「マーガレット、白金貨二千貨用意しろ。」
「はい、閣下、すぐにお持ちします。」
「俺は人の命は、金に換えられないと思っていたが、サンビチョ王国では、命は金に換えられるとは、知らなかった。」
白金貨二千貨はコーA.Iの調査と、ムースンの助言によれば、ヘレニズ.公爵領の五年分の税入であろう。
しばらく沈黙が続き、陸戦隊十人が金貨木箱を持ち、マーガレットに付き従い、現れた。
「閣下、白金貨二千貨用意しました。」と、言いながら、テーブルの上に、白金貨二千貨を積み上げた。
「王女イアラとやら、ヘレニズの首と白金貨二千貨を預ける。持ち帰ってくれ。」
ヘレニズとイアラは狼狽して、テテサに口利きと助けを懇願しだした。
「聖者テテサ様、助けてください。」と、傍の担架を押し退け、深椅子から起きだし、テテサに跪いた。
「傭兵募集を行い宣戦布告したのは、ヘレニズ.サンビチョ公爵様です。剰え、盗賊みたいに、倒した魔物を強奪仕様とした事は、尚も許されません。ガイア様に愛された亜人協力国とサンビチョ王国は、今戦争状態に入っているようですが、魔物を倒し、魔法の爆裂、魔法の剣、勇者の剣、魔物の鱗甲冑、魔法の矢の筒、ガイア様の眷属、魔法の荷車、このような国を相手にしたならば、多くの死傷者が出ますので、両国は戦争を終結して頂きたく思います。」
「叔父様、如何に収めましょうか?」
「今、亜人協力国と戦争をしても益は無い。我が領地で済むなら、休戦しよう。そして国交を結び、商取引を活発にしたい。」
「では、条約締結書類の作成をして、お互いにガイア様に誓いましょう。」
「良しなに。」
ヘレニズ.公爵領改め、湖領とし、トマトマ伯爵領改め、パンパ領と決めた。
ミクタに新たな指令として、パンパ領民のトマトマ被害者の調査と、白金貨二十五貨の分配を頼んだ。
ムースンを別室に呼び、亜人協力国は、サンビチョ王国との交易を行なう際、全ての商取引の窓口にヘレニズを指名し、便宜を図って欲しいと指示した。
「ヘレニズは、トマトマみたいな馬鹿ではない様になので、ヘレニズへの売値は、小麦、イモ類、銀貨二貨で固定してほしい。」
「食料は今高騰しています。麦とイモ類の相場は、一キロ当たり銀貨三.五貨です。」
「亜人協力国に対しての、ヘレニズの恨みを少し減らしたい。ヘレニズが、サンビチョ王国で大量の食料を安く流通すれば、領地を失くした風当たりも弱くなるでしょう。」
「先ほどの恫喝には驚きましたが、閣下は、優しい人ですね。領地を併合したのは領民の為に、更に、追い出した領主のプライドを守ってあげ、生活基盤を安定させてやる。できた人です。私はいい指導者に巡り合いました。閣下に付いていきます。」
こそばゆい、ムースンの言葉に、はにかんで見せた。
その日は、ヘレニズ.サンビチョ公爵領地と、トマトマ.ドンク伯爵領地の併合条約締結祝いと、魔物の肉が手に入った事で盛大な宴会を行った




