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ガイアに愛をもらった男  作者: かんじがしろ
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心に決めた、かたき討ち

 心に決めた、仇討ち。

  真夜中の熟睡中にドアを開ける音で目を覚ました。

ジャネックの大声に驚きと同時に、父の身と兄の身に良からぬ事が起きたのではと不安が頭をよぎった。

ジャネックと侍女がベッドに現れて、私の甲冑を各自の手に用意して控えている。

既にジャネックと侍女共に甲冑の出で立ちである。

「姫様、すぐに甲冑を召して大広間へ、ミクタ侯爵様がお待ちです。」

甲冑を急ぎまとい、大広間に向かうとミクタ侯爵は甲冑を脱がされて、傷の手当てを受けていたが、かなりの重症のようでエルフ製造の万能薬の小瓶がミクタ侯爵のそばに転がされている。

更に万能傷薬を矢傷や切り傷に塗り込んで手当をしているのは、私の母であり第一皇后であるが、ミクタ侯爵の姉でもある。

「シリー良く聞いて、叔父のドーミイ公爵の裏切りで、王閣下とそちの兄皇太子は戦死したとのことである。」

高原戦場での戦いにおいては、中央前衛の指揮を勇敢な兄皇太子が取り、ミクタ侯爵は右翼中衛に控えていた。

前衛で 戦闘が始まり、味方であるはずの左翼中衛タリア伯爵と後衛に控えていたドーミイ公爵軍が突然に王の中央後衛本陣を襲いだした。

ドーミイ公爵は王の弟であるが、気の小さい臆病者と揶揄されている。

私には、そんな叔父上様が裏切るとはとても信じられなかった。

ヒット王国軍は予期せぬ裏切りに会い、中衛と後衛がいなくなった左翼前衛は総崩れとなり、中央前衛の皇太子軍と中央中衛は前方と左翼からの攻撃で窮地に陥っていたが、。

ミクタ侯爵の後ろ後衛が王の応援に向かうのを確認し、何とかして皇太子軍の応援に行こうとするが、ミクタ侯爵軍は皇太子の所まで何とか突進しようと試みたのだが、既に左翼から分断されてしまい、皇太子は数人の護衛に守られて戦っていたが、敵の波の中へ飲み込まれてしまったので、王の本陣に数名を連れて向かうが、王の身印もドーミイ公爵の軍により、既に掲げられていたとのことを告げられた。

 母は目を真っ赤にして、

「シリー皆を連れて、パンパ街のテテサを頼りなさい。ここに残り屈辱を受けるよりも敵を討つチャンスを探しなさい。」

テテサは母の幼馴染で親友である。

私はジャネックと侍女等に引きずられるように、六名で王都を脱出してパンパ街を目指した。

わが身は既に賞金首かと思い、町娘の装いでテテサを訊ねた。

テテサは私にすぐに気づき、

「母マーサーによく似た娘ですね。」

と暖かく迎えてくれて、修道院長に紹介された。

「ここの領主には、身分を隠した方がよいでしょう。あなた達の身分を知ると良からぬ事になるかもしれない。」

ここのトマトマ領主は強欲な人らしい。

麦もイモ類も全ての食糧は領主の管理下に置かれており、チビチビと高値で街に放出しているらしい。

普段であれば麦一キロ当たり二銀貨であるが、ここでは四~五銀貨らしい。

他領地の商人はトマトマ領主に安く買いたたかれるか、難癖をつけられて強奪される為に、この街に来なくなったそうである。

そんなある夜、農民姿の一団が修道院にお参りにきて、

「私達は、今夜で農地を捨てます。ガイア様お守りください。」と、祈っていた。

「ガイア様は、導き、お守りします。」

と、テテサ様は応えているが、テテサ様は農地を捨てるという領民に対して、ガイア様の加護を求めてあげるのは、領主の立場としては反逆行為である。

宗教の二重性を見た思いであるが、われらに対しても神の御心は気まぐれで、突然の試練の門を開くのだと今は感じている。

居候生活に引け目を感じてるころに、母の噂をテテサが教えてくれた。

「マーサーは、王宮が炎に包まれる前に自害して果てたようで、ミクタ侯爵様のことは、誰も知らないらしく、王宮で傷の手当てを受けてたことさえも、誰も知らないらしい。」

母の最期を知らされて、悲しさと寂しさの中で最後の母の言葉を思い直し、ドーミイ公爵とタリア伯爵に対する怒りがこみ上げてきた。


 孤児院の年長の子ども達と山菜狩りに出かける毎日だが、山菜の事が良く解らない、

葉の形が同じでも、食べられない物を多く集めてしまう。

子ども達にどこが違うのか説明を求めると、丁寧に教えて貰えるが山菜はみな同じ様に見えるし違いが判らない。


 山菜狩りに夢中になっている時、子ども達の騒ぐ声で振り向くと、異様な荷車の周りで騒いでいる。

テテサが子ども達をわれらの方へ追いやると、異様な甲冑を付けた女性と会話して、

駆け寄ってきた。

「あの人たちの手伝いをすると、各自に麦とイモ類を各十キロずつ、支払ってくれるらしい。どうしますか?」

「手伝います。」

皆も、子ども達も歓喜した。


手伝いの最中に魔物を倒したと聞き及んだ。

信じられない、魔物は誰も倒せないし、魔物を倒せるものは魔物だけである。

それが常識である。

例え先程の爆裂魔法と自力で動く荷車が強力だとしても、魔物には無理がある。

伝説の爆裂魔法使い勇者さえも、魔物には傷一つ付けられなかったと聞いていた。

エルフは魔物と魔物が対峙しているのに遭遇し、瀕死の状態の魔物を倒したと伝説は伝えられている。

倒したのが本当なら、運良くそんな状況で倒しのだろうと思った。


そんな会話の最中に、エルフの所で騒ぎが起き、異様な甲冑をまとった男が領主の剣を切り落とし、領主を十五メートル位先に投げ飛ばした。

凄い怪力である。

二列二十人の衛士兵が男に抜刀して向かって行くが、五人を除き何の前兆もなく十五人の頭が消えたと思ったら、男はあっと言う間に残りの五人を甲冑ごと体二つに切り伏せた。

強い、そして人力を超えたスピードにも驚愕した。

身体を悪寒と感動が貫いて天命を受けたと感じた。

この者たちとならと、ドーミイ公爵とタリア伯爵の顔が浮かんだ。

しかし、テテサの顔も浮かび、領主を投げ飛ばした最悪の状態で更に衛士兵を多数殺害した事で、テテサと子ども達の身が危険と感じ、マーガレットにテテサ様の保護を頼んだ。


テテサとマーガレットの話し合いの後、修道院に向かい、手伝いをした全員と孤児の全員が闇の樹海を開墾した砦へ向かうこととした。

砦に着いてビックリさせられた。

まだ門は工事中であるが、五メートル幅の石を五個積み上げた外壁の内側に、更に十メートル以上の高さに、二メートル位の幅丸太を立てて打ち込んである。

丸太の砦の内側には、エルフの世話で一角牛と一角羊が放牧されている。

牛も羊も豊満な乳房で、牧草の栄養は豊かであるようだ。

見慣れない顔が長くて、胴も長い四つ足の動物がいるが、エルフに近寄り頭をエルフに押し付けてじゃれているようである。

見慣れない大型動物は,人なれしているようなしぐさに思えた。

 正面を見ると、巨大な王宮がそびえている。

我が元王宮の五倍はあろうと思われるし、屋根には巨大な網を広げて何かを回転させている。

王宮の通路は光沢のある白い壁で、強い光魔法で明るい。

三グループに分かれて壁の前へ立ち、壁と思ったがドアが自動で開き、我々はエルフの案内で小部屋に立ったままでも狭い部屋であるが、何の部屋なのか理解出来ない。

狭い部屋のドアが再び開き、巨大な部屋へ案内された時に気が付いたのだが、小さな部屋だと思ったのは勘違いで、魔法の移動箱であったようである。


巨大な部屋の三方が透明なガラスで、樹海を一望できる窓である。

樹海の地平線までもが見て取れた。

大河の上流は巨大な滝のようで、滝は樹海に落ちている。

大河の中ほどにやはり樹海の島が見えるが、島の先は霞んで見えない。

外壁工事は全て完成されているようだが、樹海を分けるように先程の石の壁とは別に、さらに新たな石壁を工事中である。

完成された壁を見る限り巨大な城壁で十万人の住民の住居が可能で有りそうな広さであるのに、更に、新たな壁を延長するように石の壁は樹海の方へ建設中である訳は、三十万以上の人を集める予定だろう。

丸太の内側では猫亜人と思われる農耕民が、広大な耕作地で麦やら緑の葉を耕作しているのが見て取れる。

平和な農村地帯の風景である。

茶色に焼けた耕作地で、奇怪な二匹の四角い動物が麦を刈り取る姿を目にした。

魔物を飼いならして、麦を刈り取らせているのかと思えた。

 子ども達の歓声が聞こえ、声のほうへ振り向くと猫亜人の子供が大きな箱から長方形の何かを取り出して子供たちに配っている。

子ども達は受けっとった長方形の銀色の皮を破いて、中身を食べている。

食べ始めた子供から次々と歓声が上がってくる。

 猫亜人の女の子が、私にも長方形のものを渡し、

「チョコレートです。甘いですよ。」と、渡してくれた。

 子供たちの真似をして銀の皮を破き、中身のグロテスクな色の物にかじりを入れたとき、

「美味しい!」ジャネックが、叫んだ。

 侍女等も口をもごもごさせながら、首を縦に振りながら目を細めている。

近くのテーブルの上に、エルフの娘たちと猫亜人の娘が陶器製のカップを並べて、

黄金色の飲み物を注いでいた。

「紅茶です。猫種族の栽培している、お茶の葉から作りました。」

チョコレートを頬張り、紅茶を飲むと何とも言えない幸を感じた。

緊張の糸が切れそうにも思える。

色は麦茶と似ていたが、香ばしくて口当たりがよくて好きだと思った。

山盛りに盛った柑橘の輪切りと、一角牛の乳をテーブルに置き、細かく四角にした白い大理石を置いていった。

「紅茶に好みで加える、こちらがレモンと一角牛の乳、好みのものをお選び下さい。白いのは砂糖です。」

 砂糖の量にも盛り方にも驚いたが、貴重な砂糖を一介の避難民である我々に提供してくれることへの、気遣いに感謝申し上げたいと思った。

周りを見渡すと、子ども達とテテサ、見習い修道女のカサチーも、何時の間にかいなくなり、エルフの娘と猫種族の娘が近づいてきた。

「今、総司令官はシスターたちと、協会の建築場所と孤児院の運営方法を話し合っています。子ども達は、私の弟アーマート、妹マクリーが、スクリーン室でアニメを見に連れて行きました。」

「スクリーン?アニメ?聞いたことない言葉です。」

「壁に映し出された、動く紙芝居です。見に行かれますか?」

皆が私を含め、興味ありそうなのでスクリーン室へ向かった。

窓のない明るい部屋で、子ども達の歓声が聞かれた。

壁に猫顔のキャラクターが、せわしなく走り回り、ボールを蹴りピンを倒していた。

何かの遊びのようだが、子ども達は歓声を上げて猫顔のキャラクターを、応援しているようだ。





 


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