違和感
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 / 俺ちゃん / 古本屋店員
・マスター / 僕 / 古本屋店主
・サトリ / 依頼主
病院帰りに見つけた美味しそうな弁当を3つ下げて古本屋の入り口に向かったら、そのままドアにぶつかった。
自動ドアが、作動していないだと・・・。
こっちは、怪我してるんだから頼むよ。
デツには、行ってそうそう怒られるし・・何なんだ。
そう思いながら、裏口に向かうと開けっ放しになっている。
よし、今度はちゃんと開いてるな。
中に入ると・・・ん??・・何か違う。
何だ??よくわからない違和感だ・・。
「あ、お帰りなさい。」
サトリが、出迎えてくれた。
弁当を持ち上げて見せて、
「お昼にしよう・・。
マスターは??」
「お帰り~。
どうよ、綺麗になったと思わない。」
マスターの衝撃の一言が、脳細胞を刺激した。
あ!!そうか、違和感の正体は、綺麗になったことか。
弁当をテーブルに置きながら、ゆっくりと眺める。
確かに、バックヤードだけだが、綺麗になっている。
ゴミ(推定)と思われていた謎の物体が駆逐され、部屋全体も明るく見える。
曰く、要らないものを捨てて、埃を落としただけらしいが。
なるほど・・・ここを綺麗にするのは、マスターのやる気ではなかったって訳か・・。
・・・そりゃそうだな。
「やっぱり、しばらくお店は休んで、店内を綺麗にしようと思って・・。
この状態じゃ、お客さんも商品選べないから。
ただ、力仕事は、俺ちゃんがいないと進まなくて。」
”俺ちゃん”か・・・。
確かにマスターじゃ、力仕事は直ぐにギブアップだろうな。
「それは構わんが・・手が治ってからだな・・。
また、デツに怒られる。」
「あ!!やっぱり怒られた??
ごめんね~支払いのこと忘れちゃって・・・。」
謝る気のない顔で、口だけ謝ってくるマスターにウンザリしながら、
「支払いは今度マスターが、直接払いに来いと・・。
ご指名だったぞ。
怒られたのは怪我の方だ。
何をしたらこうなるんだと・・・。」
唸りながら頭を抱えるマスターを、無視してテーブルに弁当を広げる。
サトリは、冷蔵庫からお茶を持ってきた。
3人で、テーブルを囲むと、賑やかな食事が始まる。
「美味しい!!!」
サトリが、満足げに声を上げる。
マスターも美味そうに喰っている。
お気に召したのなら良かった。
2人を眺めながら、自分も箸を進める。
食卓の話題は、今日の掃除がどうだっただの・・古本屋としての心構えがどうのと、他愛もない話だ・・。
だが、日常に置ける普通の食卓。
1人増えただけで、雰囲気が変わるものだ。
この感じは、久しぶりだ・・・。
「あのさ、前から募集していたバイト決まったんだよね。
しかも、住み込みで!!!」
突然の発言に、弁当からマスターに視線を向ける。
「ご紹介します、ツグミちゃんで~す。」
と、マスターの御発声に合わせて、サトリが立ち上がり深々とお辞儀をした。
「色々と慣れませんが、宜しくお願いします。」
・・・・”ツグミ”???
・・・・ああ、新しい名前か。
そうだな、このままじゃ・・色々不都合あるだろうしな・・。
「そうか・・こちらこそ面倒をかける。
宜しく、ツグミちゃん。」
「今までに習って、ツグミって呼んでください。
俺ちゃん!!」
満面の笑みを向ける。
”俺ちゃん”・・・そうだな。
俺はこれからも、”俺ちゃん”が煩わしくなくて良いかもな。
「はい、では、了承も出て、紹介も終わりましたので、ツグミちゃんの部屋は、2階の空き部屋に決定。
隣の部屋だからって、悪さしちゃだめだぞ!!
家具は何もないから、今度買いに行こうね。
あ!!そうそう、服もいるね。
僕はいかないけど、俺ちゃんが全部付き合ってくれるからね。」
マスターの話を、嬉しそうに万歳して喜ぶツグミを眺めならお茶を飲む。
今日は、よく笑う。
いや・・これが、本来の姿なんだろう。
伊達と手島の記憶にある、まだ何も知らない時のサトリの笑顔が重なってくる。
「さて、私片付けますね。
こういうのは、ちゃっちゃとやるのが、片付くコツです。」
そう言って、テーブルの上を片付け始めた。
そんなツグミの後姿を眺めていると、足元に目がいった。
「そのスニーカー、履いてるのか。
こんな日に履いてしまうと、汚れるだろうに・・。
それに、こだわりのタグは、どうした?」
「何言ってるの、俺ちゃん!!
スニーカーなんだから、履いてなんぼ!!
タグは、危ないから取っちゃった。
あ!!捨ててはないよ。」
そう言って、また満面の笑みを浮かべた。




