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Memory Cage ~ メモリー ケージ ~  作者: アニマ
繋ぐ者
76/77

身分証と一生のお願い

宜しくお願いします。


○登場人物

 ・俺 / 俺ちゃん / 古本屋店員

 ・マスター / 僕 / 古本屋店主

 ・サトリ / 依頼主

俺とマスターが、朝食を食べているとサトリが目を覚ました。


「おはよ~。」


マスターの抜けた挨拶に、バツの悪そうなサトリが小さな声で挨拶を返した。

サトリの朝食を用意するか・・そう思って立ち上がると、サトリがぶつかってきた。

そのまま抱きつくと


「ごめんなさい・・・・・・・・・・・・・ありがとう・・。」


と、言ってきた。

頭に手を乗せて髪をクシャクシャにすると、


「朝食、食べるだろ。

 顔洗って来い。」


と、言って洗面所に送り出した。

今の俺が、俺ちゃんだということを受け入れてくれたようだ。

ニヤニヤしているマスターの顔が横目に見えたが、無視してやった。


「今日は、古本屋開けるのか?」


サトリの朝食を運びながらマスターに声をかける。


「う~・・・どうしようかな??」


「私、手伝います!!!」


悩んでいるマスターとは正反対の前向きな返事が聞こえた。


「じゃあ・・開こうか。

 気乗りしないけどな~。」


そう言って笑うマスターは、とても嬉しそうだった。


朝食後、開く前に古本屋の掃除をしようという話になって、2人は掃除、俺は病院ということになった。

マスターが、病院へ行くなら・・と、何かをゴソゴソ探している間に、サトリは猫を伴って古本屋へ降りて行った。


「猫・・完全にサトリに懐いたな。」


「そうだね~。

 そういえば、いつの間にか”サトリ”って呼んでるね。」


こちらに目もむけず、何かを探しながら質問してきた。


「ああ、サトリからのお願い・・約束なんだ。」


「へぇ~、お願いか。

 あ、あった、あった。」


興味がないなら質問するなよ。

そう思いながら、マスターの投げてよこしたものを確認する。

それは、新しい身分証だった。


「ま、必要ないけど・・念のためね。」


「・・だな。」


そう言って事務所を出た。




あ!!支払いの事いうの忘れた!!

薬の分析費用と治療費・・・。

まあ、いいか。

デツとデップの事だ、許してくれるだろう。

ま、彼からは、文句言われるだろうな。


古本屋のバックヤードに入ると、サトリちゃんが一生懸命、埃落としをやっていた。


「10日程閉めてただけなのに、埃ってすぐ溜まるんですね。

 これだけでも、結構大変です。」


・・・ごめん、サトリちゃん・・・それ・・・ずっと前から・・・。

申し訳なさ過ぎて涙が出る。

それにしても、箱入り娘だった割には、掃除とか・・手際がいい。


「ん~・・サトリちゃんって、家でも家事とかしてたの?」


「一応・・。

 自慢できるほどはやってないけど、適当には。

 自分の部屋とか・・やっぱりね。」


へ~、その辺すべて付き人の方々が、やってくれていると思ってた。

そういうことを自分でやる、やらないは、人によるのかね。

そんなことを考えていると、サトリちゃんの手が止まった。


「私・・存在してない・・んだよね・・・。

 家族も帰る場所もない。」


黙って、話を聞こうかとも思ったが・・フェアじゃないな・・。

そう考え、机の上に封筒を置いて声をかけた。

封筒の中身を見たサトリちゃんは、僕と猫に順番に目を向けた。


「サトリちゃんの新しい戸籍・・。

 もちろん、ちゃんと正規で通用するよ。

 一応、色々経歴みたいなものもあるから読んどいてね。

 ・・高卒だけど・・大丈夫だよね。

 それと、名前が変わっちゃうけど・・そこは勘弁してね。」


まだ、状況がよくわからず、ポカンとしている。

そりゃそうか・・普通、目の前に戸籍だされて、”これがあなたです”なんて・・ないよな。

苦笑いしながら話を続ける。


「この戸籍を受け入れてくれるなら、サトリちゃんは実生活において不自由はないよ。

 誰も気にすることなく自由に生活できる。

 働くこともできるし、学校にも行ける。」


僕の話を黙って聞いていたサトリちゃんが、急に封筒の中身をしまうとテーブルに置いた。


「これは貰えない・・・。

 私は、二人に散々迷惑をかけて・・俺ちゃんなんて、2回も死んじゃって・・。

 それなのに、私は散々ひどいこと言って・・。

 何も返せてないのに・・・私だけ・・・。」


「大丈夫だよ。

 最初に言ったでしょ。

 依頼があれば、報酬がある。

 まだ、報酬の額って言ってなかったよね。」


ニッコリ笑って、サトリちゃんの顔の前に目いっぱい開いた掌を見せる。


「5000万円!!

 ぴったりこっきり、サービス料込。

 分割手数料無料、ある時払いの催促なし。

 それにさ・・戸籍ないと働けないよ。」


「でもそれじゃあ・・。」


言いかけるサトリちゃんを静止して話を続ける。


「でも、5000万円なんて払えない・・と、お困りの貴女。

 大丈夫、ここでスペシャルなお知らせ。

 今だけ、この5000万円をチャラにする方法をお届けします。

 方法は、簡単。

 僕のお願いを聞くだけ。

 今度は、僕が依頼主。

 さあ、どうする?」


サトリちゃんの目を真正面から見て返答を待つ。

僕が冗談で言っているわけではないことを、十分感じ取っているはずだ。

帰ってきた返事は、


「わかった。

 お願いを聞く。」


強い意志を持った返事だった。


「とんでもないこと言われるかもしれないよ。

 手籠めにされたり。

 もっと、酷いことかも。」


「それでも、構わない。

 私は、あなた達に救われたから。

 ある時払いの5000万円なんて、あやふやなモノじゃなくて・・。

 私のできることで返したい。」


強い娘だ・・。

お願いも断って、5000万円も少し払って後は誤魔化すこともできた。

というか、遠回しにそうするように言ったのだ・・。

が、そうはしなかった。

なら・・僕も、お願いをしよう・・一生のお願いだ。

僕自身も請けた・・一生のお願いを・・。

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