似合わない男
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 / 俺ちゃん / 古本屋店員
・マスター / 僕 / 古本屋店主
・サトリ / 依頼主
・曉院さおり / サトリの母
・伊達 / 曉院さおりの部下
・手島 / 曉院さおりの部下
・蒔田 / 曉院さおりの部下
彼が、軽いノリで返す。
チャラ男の時と、違って声が渋いね~。
彼が、その渋い声で詳細を聞かせる。
信じられないという顔をしながらも、突然現れた手島、態度が急変した伊達、視えた何か・・、話の辻褄が合っていることに徐々に納得していったようだ。
「さっきマスターも言っていたが・・手島も蒔田も詳しいことは何も知らなかった。
2人とも、失踪したことに驚きながらも、心から心配していた。」
そう言って、彼は冷めたコーヒーを一口飲んだ。
「蒔田さん・・私のために・・。
あの時も、怪我はないかって・・。
自分が、大怪我してるのに・・・・。
それに私・・必死に守ってくれてた俺ちゃんにも・・酷いことばかり・・。」
ポソリと・・小さな声を出すと、そのまま大粒の涙を流し始めた。
黙って見つめることしかできない僕は、彼に視線を移した。
その彼も、俯いて・・ただ黙ってコーヒーを飲み続けていた。
緊張が緩んだのか・・相当疲れていたのか・・。
彼は、そのまま眠ってしまったサトリちゃんに毛布を掛けていた。
また、このパターンか・・。
「マスター・・古本屋が気になるな。」
「そうだね。」
2人で静かに部屋を出ると1階に降りて、しばらく黙り込んだ。
今回は、すごく疲れた。
バックヤードの椅子に腰を下ろしてからの沈黙の長さが、今回の疲れを表している。
「まともに寝ていなかったのか・・相当、緊張していたんだろうな。」
唐突な彼の言葉に、耳が痛かった。
ここしばらく、サトリちゃんを安心させてあげられなかったのは、僕の不徳と致すところだ。
「薬のことは?」
「もう伝えてある・・飲まなくても大丈夫だって・・。」
彼は、安心したように頷いている。
今の彼は、古本屋に似つかわしくない。
服装が悪いのかな・・・。
そう思って、ラフな格好を想像してみるが・・それも可笑しかった。
「笑うところは、無いはずだが?」
憮然として言い放つ彼に、
「ゴメン、ゴメン。
いや、古本屋と君があまりにも違和感あってさ。」
僕からの釈明を聞いた後も、彼は憮然としていた。
「ところで・・向こうはやっぱり君のこと監視してたの?」
「ああ・・監視というか・・包囲網を張られていたようだ。
薬を届けに行く姿を捉えられて、そこから解析されていた。
ちなみに、薬は睡眠薬入り。」
「なるほど、向こうも想定してたんだ。
誘拐するにしても、暴れられるのは・・避けたいもんね。
あ!!ところで、あの隠れ家は何??」
僕からの質問に、一瞬に返答に困る様子を見せた彼だったが、
「前話したろ・・チャラ男の彼女。
大桃桜子の部屋だ。
直ぐに切ると目立ちそうだったから、半年分の家賃を通帳に残しておいた。
まさかこんなところで、役に立つとは思わなかったがな・・。」
そう言って、また、憮然とした表情に戻った。
そうだ、肝心なことを聞いておかないと。
その返答次第では、今後の展開が大きく変わる。
「一応、彼女は天涯孤独の身になったわけだけど・・。
念押しで・・・・曉院家の方は、本当に大丈夫だよね?」
念のため改めて聞いてみる。
「大丈夫だ。
もとより極秘の計画だからな。
サトリのことを知っている人間自体少ない。
その少ない人間にも、相応の脅しをかけてある。
俺自身は、仕える人が亡くなった以上・・暇をもらった。」
「じゃあ、君には、古本屋としてバリバリ働いてもらわないとね。」
そう言って笑っても、彼の顔は憮然としていた。




