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Memory Cage ~ メモリー ケージ ~  作者: アニマ
繋ぐ者
72/77

帰還連絡

宜しくお願いします。


○登場人物

 ・俺 / 俺ちゃん / 古本屋店員

 ・マスター / 僕 / 古本屋店主

 ・サトリ / 依頼主

 ・曉院さおり / サトリの母

 ・手島 / 曉院さおりの部下

 ・蒔田 / 曉院さおりの元部下

二人を乗せた車で向かったのは、曉院さおりのいる場所。

もっと早くに、サトリを連れてくるはずだった場所。

駐車場に車を止めると、数人がこちらに向かって走ってきた。


「申し訳ありません。

 手を尽くしましたが・・。」


「・・・分かった。

 車内に手島と蒔田がいる。

 手厚く頼む・・。」


そう言って、曉院さおりの元へ急ぐ。

あの時、届いた連絡・・それは、曉院さおりの死を知らせるものだった。

伊達の狂気は、これが原因。

扉を開けると、静かに・・生前のままの姿で横たわる曉院さおりがいた。

俺自身、この女性に何かの思いがあるわけではない。

が、自然と溢れ出た涙を止めようとは思わなかった。


伊達は、曉院さおりをずっと見てきた。

夫を亡くし、病気を持つ身体で奮闘する彼女を・・。

そして聞かされた・・クローンの話を。

伊達には、それに反対する理由はない。

彼女のために、これまでも手を汚してきた。

彼女以外の人の生き死になど今更な話だ・・。

愛する人が生き長らえることができるなら、他はどうでも良かった。

ただ、彼女に生きてほしかった。


今回の件について詳細を知っていたのは数名だけ。

サトリの存在についても同様だ。

そいつらには、選択させた。

誰も、秘密の暴露を選択した人間はいなかったが・・念を入れて脅しは入れておいた。

その後、俺がしたことといえば、曉院さおりが病死したことを公表させたことと、例のバイクを片付けさせたくらいだ。

会社のことは、誰かが何とかするだろう。

そうでなくても、曉院さおりの地位を狙っていた奴はたくさんいた。

そんな連中が、先を競って仕切りだすだろう。


手島と蒔田については、事故死として手厚く葬った。

二人には身寄りがなかったため、屋敷にあった彼らの私物を引き取る者はいなかったが・・。

伊達を、親のように慕っていた二人の記憶に心が痛む。

休まる暇のない数日を過ごし、最後に自分の部屋・・正確には伊達の部屋を片付けようと屋敷を訪れる。

そうだ、片づけをする前に・・・と、スマホを手に取る。


「マスター、今大丈夫か?・・って、そんな訳ないな。

 駄目なら、すぐ移動して折り返してくれ。」


案の定、直ぐに切られ・・しばらくして折り返しがあった。


「そろそろ、こちらは片付きそうだ。

 これから、自室の片づけ。

 そっちらは、どうだ?」


「ん~・・・・。

 サトリちゃんが、元気ないね。

 あれから一週間だけど・・ずっと塞ぎ込んでる。

 もうすぐ、俺ちゃんが帰ってくるよ・・って言ってるんだけど。

 信じてないかも。」


俺が、サトリの前に姿を現してもいいものかどうか・・。

そんな思いが頭をよぎる。


「そうか・・・。

 ところで、もう話はしたのか??」


「まだ・・。

 ”俺ちゃん”が、いないとね・・説得力がね。」


・・・一人で話をしたくないだけか。

まあ、気持ちは分かる。


「わかった。

 明後日には戻る。」


「了解。

 え~っと、今・・確か40歳過ぎだよね。

 こっちも、準備しとくよ。」


スマホを置いて、しばらく部屋を見渡す。

片づけるといっても・・・捨ててもらっても構わないものばかりだからな。

それに、大したものがあるわけでもない。

若いころ曉院さおりと一緒に撮った写真一枚だけ・・目の前にある。

生活必需品以外で・・伊達が唯一持っていたものが、この写真だった。

それ以外は、特に何もない。

きっと、自分が思う以上に、伊達の思いは強かったのだろう。


しばらく写真を眺めていたが、我に返ると・・クローゼットを開けて服を出す。

やっぱ、スーツばっかりだな。

記憶からわかりきっていたことだが、着るものがないのは困るからな・・。

スーツケースには、似たようなスーツを詰め込んでいく。

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