嫌な質問
宜しくお願いします。
○登場人物
・マスター / 僕 / 古本屋店主
・サトリ / 依頼主
一台の車が出ていくのを見送ってから動き出す。
いつもの愛車じゃないと、気分が乗らない。
トラック・・嫌いじゃないけどね。
とりあえず、屋上駐車場を目指そう。
上にサトリちゃんがいるのは感覚でわかる。
僕の役割は、サトリちゃんと壊れたバイクをピックアップして撤収すること。
また、お外の仕事だけど・・調査じゃなくて、事後処理だからね。
スマホ拾いに行くようなものだとしよう。
屋上に出ると、座り込んでいる人影が見える。
車を降りて、
「サトリちゃん、迎えに来たよ。」
そう声をかける。
予期していなかった声に、驚いた顔でこちらを見るサトリちゃん。
ニコリと微笑みかける俺。
周囲を見渡すと、ボロボロのバイク。
「ちょっと待ってて・・。」
サトリちゃんに声をかけて、バイクを見に行く。
あら~・・こりゃ、足回り逝かれてるし・・とてもじゃないけど一人で載せるのは無理だね。
あれこれ悩んでも仕方がない、見切りは早めにつけないと後々迷惑がかかる。
スマホを取り出すと、
”無理!!”
そう一言連絡を入れると、サトリちゃんに声をかける。
「さあ、帰ろう。」
サトリちゃんを助け起こすと、助手席に座らせる。
大きなケガもなさそうで良かった。
さっと様子を眺めてから、運転席に座る。
立体駐車場を出て暫くして、サトリちゃんが話し始めた。
「人が死んだの・・私のために。
でも、わからないの・・誰が味方なのか・・。
今、私はどうなっているのか・・。」
その疑問は、おそらくごもっともなんだろう。
が、困ったな・・。
どう返事を返したものか、言葉が出てこない。
「私、家の人全員に狙われてると思ってた。
でも、2人・・私のことを守ってくれたの。
それなのに、2人とも私のために死んでしまった。
その上、2人を殺した人から、"おまえは自由だ"と言われて・・。
何が何だか・・。
2人が死ぬくらいなら・・・・・やっぱり、私が死ねばよかった・・・・。」
そう言って、サトリちゃんは号泣しだした。
うん・・気にしなくていい、彼の事情を知っている僕でも、理解するには時間が必要みたいだ。
って、言えればいいんだけど・・さすがに言えない。
ホント・・気の利いた言葉が出てこない・・。
我ながら、残念な男だ。
何の言葉もかけることができないまま、泣き続ける彼女の様子を伺っていた。
土砂降りが、小雨になったかな・・そう感じ始めたタイミングでサトリちゃんからの避けたい質問が飛んできた。
「ねえ・・マスター。
俺ちゃんは?」
「ん?ああ・・ねえ。
元気だよ・・・多分。」
段々語尾が小さくなる曖昧な返事だが、僕の言葉を聞いて、少しホッとしたのかもしれない。
彼女から感じる何かが、和らいだ気がした。
「サトリちゃん・・・今は少し落ち着いた方がいい。
目を閉じて、何度か深呼吸するんだ。」
そう言葉をかけると、サトリちゃんは目を閉じ深呼吸を始めた。
静かに規則正しい呼吸音になるまで、そう時間はかからなかった。
どう話せばいいのだろう・・。
薬のことは、誤魔化すこともできるかもしれない。
ただ、彼女自身に起きていたことを話せば、自然と生い立ちも話さなければならない。
何より元気だと伝えた彼のことをどう話すのか・・。
何をどう伝えたらいいのか・・いつも通り言葉が見当たらない。
ただ、彼女に期待するならば、全てを話した方がいいのだろう。
知らなくていいことも、知ってもらう・・。
こちらの都合で申し訳ないが・・。




