死闘決着
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 / 俺ちゃん / 古本屋店員
・サトリ / 依頼主
・伊達 / 曉院さおりの部下
・蒔田 / 曉院さおりの元部下
圧倒的なタフネスとパワーを誇ってはいるが、逆に動きは雑になった。
ただ、読みやすい分カウンターは狙いやすいが、ダメージを負っても関係なく追撃してくる分、こちらもダメージリスクが上がる。
さらに、捕まれでもしたら終わる。
圧倒的な不利は変わらない。
どうするかと悩んでいると、急に膝が折れる。
あ・・・そう思った瞬間、身体が逆方向に蹴り上げられた。
意識していない間に、ダメージが溜まっていたのか・・。
そう考えながら、地面を転がっていく。
勢いよく背中に何かがブチ当たる。
ああ・・当たったのは俺の方か・・。
クソッ・・焦点が合わない。
ふらつく足元で、必死に立ち上がろうとするも、どうしても膝が折れる。
このまま上手いこと、止めさしてくれないかな。
そんな思いが頭をよぎったとき、大きなエンジン音が朦朧とした意識に届く。
な・・なんだ??
タイヤの軋む音と、ゴムの焦げる匂い。
自分の横を大きな何かが走り抜ける。
そして、大きな破壊音。
何だ・・どうした?何が起きた。
思考が追い付かないまま、必死に立ち上がろうとする自分の腕を誰かが引いた。
「しっかりして。
立って・・。」
この声は、蒔田か。
「何があった?
何をした?」
「あなたのバイクで突っ込んでやったわ。
新しいの買うしかないわね。」
ああ・・ノープロブレムだ。
別にバイクに拘りはない。
にしても、どうする・・今の展開で、伊達に殺されるのが理想だったような気もするが・・。
さすがにバイクの体当たり、ダメージは深いはずだ。
こっちの身体もガタガタだけど・・。
ようやく視界がはっきりしてきたが、伊達がいない。
倒れているのか??
ハッと気付き、サトリが倒れていた方を見る。
そこには、サトリへと手を伸ばす伊達の姿があった。
「貴様らのせいだ。
貴様らのせいで、こいつも結局、死ぬんだ。
こいつの最後は、何も変わらない!!!」
叫ぶように吐き捨てる伊達に引きずり起こされたサトリは、まだぐったりしていた。
そうだ、そのまま気を失っていろ。
目を覚まされると面倒だ。
そう、願ったが・・俺の願いを神様は聞いてくれない・・。
サトリが、呻き声をあげる。
目を開けるが、目に入るのは血だらけの伊達・・。
そのまま、サトリを釣り上げた伊達は、容赦なくサトリの首を絞めにかかる。
サトリは、苦悶の表情を浮かべながら、伊達の腕を必死に振りほどこうとしている。
「離せ!!!!!!」
蒔田が、伊達の腕に警棒を振り下ろし、そのまま頭部に向かって振り抜いた。
さすがの伊達も、まともに喰らって身体が揺らいでいる。
周りが見えていないほど錯乱しているのか?一体、何があった??
崩れるように地面に落ちるサトリを蒔田が抱きかかえ、伊達との距離を取ろうとしている。
サトリを逃がすことに意識がいった隙に、伊達の拳が放たれた。
鈍い音を立てて、蒔田の体がくの字に曲がる・・。
「蒔田ぁ~!!!!!」
駆け出していた俺の手は、間に合わなかった。
拙い・・・肋骨が逝っている程度ならいいが、下手をすると内臓がやられている。
「サトリ!!蒔田を頼む。」
そう言って、伊達の前に対峙する。
咄嗟に拾った警棒で、伊達の腕を打ち払いながら二人から距離をとる。
っていうか、先に警棒が逝かれそうなんだけど・・。
蒔田の名を叫ぶサトリの声が止まない。
どうなっている・・。
あっちに駆け寄りたいが、伊達の攻撃がそれを許さない。
どれだけ攻撃をやりあっただろう・・伊達も自分も肩で息をしながら余裕もない。
「蒔田さん!!!蒔田さん!!
どうして!!」
悲痛なサトリの声が響いた・・。
二人の方へ視線が動く、その刹那・・伊達の腕が俺の首に巻き付いた。
「余所見をするなと、教えたはずだ。」
警棒、拳、脚・・全てで抵抗を試みる。
闇雲に攻撃を当てに掛かるが、振りほどける様子はない。
「無駄な抵抗だな。
俺と一緒に自身の行動を悔め。」
その言葉を聞いた後、俺は自分の首を絞めていた。
サトリの悲鳴を聞きながら腕を離すと、手島の身体が崩れ落ちた。
頸椎損傷か・・。
異常な角度に捻じれた手島の首を見ながら、自分の死因を確認する。
「手島さん・・・。」
現実を受け入れられないサトリは、悲しみと恐怖と怒りの入り混じった顔で、手島と俺を交互に見ている。
まあ、サトリ目線だと、死んだ手島、殺した伊達・・だ。
何も言わず、しゃがみ込み手島からスマホを回収する。
そのまま、車に向かいドアを開けると座席を倒してスペースを作り、まず手島を乗せた。
そして、サトリと蒔田の方に歩みを進める。
「人殺し!!」
そうだけど、そうじゃない・・というか・・辛いな。
守った相手から、憎しみの目を向けられるのは・・。
動かない蒔田の傍らにしゃがみ込み、脈をとる。
口元には大量の血の跡がある。
やはり内臓を損傷していたのか。
彼女の顔を見ながら、彼女が伊達を裏切った理由を考える・・それはおそらく・・。
唐突に中断された思考は、痛みに変わった。
側頭部を抑えながら、衝撃の方向を見ると、涙目のサトリが警棒を振り上げていた。
「私のために、手島さんと蒔田さんが死んだ。
もしかしたら他にも・・。
あなただけは許せない・・絶対に。」
・・黙って、何発かの打撃を受けた後、蒔田を抱き上げると車まで運んだ。
しばらく車に横たわる二人を眺め、スマホで二件連絡を入れる。
連絡を終えスマホを懐にしまうと、改めてサトリの方を見た。
ここで死んでもいいかのような覚悟に満ちた目をしながら警棒を構えるサトリに
「もう、これで、お前を狙う者はいない。
お前は自由だ。」
そう一言残して、車に乗ると駐車場を後にした。




