誘拐一味
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 /俺ちゃん / 古本屋店員
・サトリ / 依頼主
・曉院さおり / サトリの母親
・蒔田 / 誘拐犯A / 曉院さおりの部下
・伊達 / 誘拐犯B / 曉院さおりの部下 トップ
・手島 / 誘拐犯C / 曉院さおりの部下 / 現俺ちゃん
助手席に座ると同時に、
「いったいどうなってるの??」
誘拐犯Aが、かなり苛立った口調で問いただしてくる。
「途中から替え玉を使われていた。
俺は、捕まって色々問いただされたが・・。
最終的には、相手を始末した。」
「捕まったあげく・・始末って・・殺したの?
何やってるの!!!
手がかり何もないのよ!!!」
さらに苛立ちはヒートアップしている。
「仕方がない・・でなければ俺が殺されていた。
どこで入れ替わったのか分かれば、そこから追える。」
「とりあえず、伊達さんに連絡入れるわ。」
そう言って、スマホを取り出した。
報告を入れる誘拐犯Aを見ながら一息つく。
あ~・・何て名前だっけ・・何とか田・・・そう、蒔田!!
名前を思い出して喜んでいると、
「すぐ戻るわよ。
此処のことは、伊達さんに連絡したから何とかしてくれるでしょ。」
誘拐犯A改め蒔田は、それだけ言って車を発進させた。
少し身体が痛むな・・。
前の身体に比べて、かなり鍛えてあるようだし体力もありそうだ。
まだ、慣れてないが、戦闘になっても前より動けそうだ。
しばらく身体の痛みを確かめていると、
「どこか痛むの?」
前を向いたまま、声をかけてくる。
先ほどよりは幾分、声のトーンが柔らかだ。
「・・そうだな。
縛られていたし、結構暴れたからな。
色々擦り剥けているようで痛む。
それ以上の怪我は、ないと思う。」
「大体、あなたが捕まるなんて、どうしたの??」
その時の記憶を探りながら、正直に答える。
「さっきの場所に追い詰めて、捕まえたつもりだったんだが・・油断した。
女が背中を向けて手を挙げているところに、
近づいていったら足払いを喰らって転倒、スタンガン一発だ。
気が付いたら、椅子に縛り付けられていた。
そういう、そっちはどうだったんだ。」
話の流れで、相手の状況も聞いてみる。
聞かなくても、知っているけどな。
「今の状況から察してほしいわね。
残念だけど、やられた。
伊達さんが来てくれて、追い込んだんだけど・・逃げられた。
私だけじゃ、まったく相手にならなかった。
ただのチャラ男だと思っていたのに・・。」
へ~・・ちゃんと、そこは冷静に分析できるんだ。
決して自分を過剰に評価していないところが、プロっぽい。
「ああ、悪いことした・・・。
もうリベンジは無理だ。
その男は、さっき始末した。」
「別にいいわよ。
私は、今日より強くなるだけだから。」
そこからは、沈黙だった。
そろそろ、眠くなってきたな・・と、欠伸が我慢できなくなったころ目的地に着いた。
屋敷の中では、誘拐犯B改め伊達が飯を作って待っていた。
な・・なんと言う、ギャップ。
こういう人間だということは、奪った身体の記憶から垣間見ることができるが・・対峙して闘った身としては・・。
40代前半・・それで、あの身のこなしと圧倒的な破壊力。
基本、部下思いであり、雇用主に忠実な人間。
それが、伊達という男。
「とりあえず飯を食ったら休むぞ。
時間はないが、肝心な時に動けないのでは意味がないからな。
それと手島、お前は飯を食ったら傷を見ておけ。」
そう言って、俺と蒔田をテーブルに付かせる。
毒でも入ってんじゃないだろーな・・そう思ったが、特に問題もなく食事は終わった。
会話は、まったくなかったが・・。
そうは言っても、少しでも情報を得なければならない。
「伊達さん・・。
あの日、お嬢様を、どこに連れていくつもりだったんですか?
今、何が起きているんですか?
何故、お嬢様は逃げたんですか?
自分も蒔田も時間が無いとは聞いていますが・・一体??」
表情を崩すことなく、伊達は話し始めた。
「奥様が、倒れられた。
あの日は、奥様の入院している病院に行く予定だった。
お嬢様が、なぜ逃げたのかは分からない。
ただ、あの時、俺も気持ちが動転していて、何も話していないのは事実だ。」
奥様・・・ということは、サトリの母親か・・・。
身内の危機に病院へ行くなら、サトリの感じた殺意とは?
いや、異常な緊張感をサトリが勘違いしただけか?
「奥様は、危ないのですか?」
蒔田が、狼狽した様子で伊達に問いかける。
「予断は許されん状況だ・・。」
身内の危機であるなら・・むしろサトリをここに返さなければならないのではないか?
ここは安全なのか・・サトリの勘違いということはありえるのか?
・・駄目だ・・判断する情報がなさすぎる。
「今は、休め。
入れ替わった場所と、その後、何処へ向かったのかは調査中だ。」
そう言って、食器を片付け始めた。




