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Memory Cage ~ メモリー ケージ ~  作者: アニマ
奪う者
6/77

彼が彼である確認

宜しくお願いいたします。


○登場人物

 ・俺 / 古本屋店員

 ・マスター / 古本屋店主

 ・猫 / 古本屋のペット

 ・大鷹玲子 / 今回の依頼人

 ・運送屋の兄ちゃん

「こんちゃ~、お荷物です。」


運送屋の兄ちゃんが、荷物を持って立っている。

元気いっぱい・・に見えるが、お疲れの様だ。

さらには、かなりのうっ憤というか鬱積したものがあるのだろう。

どんよりとした暗いものが見える。


「はい、ハンコね・・・。」


「あしたー!!!!!」


ダッシュして去っていく姿を見送りながら、

暗いものを見たせいで、ちょっと可哀想になる。

頑張れ若人!!!


バックヤードにあるパイプ椅子に座り、コーヒーを飲む。

届いた荷物の中身を確認しつつ、スマホを取り出し・・


「もしもし、大鷹さんでしょうか。

 御依頼ありがとうございます。

 本日より調査を遂行させていただきます。」


通話越しに、頭を下げているのが容易に想像できる頼みっぷりで返された。

どう頼まれようと、依頼料分の仕事はする。

しかし、美人にここまで頼まれると、頑張りたくなる。


「あ、すいません。

 確認ですが、大鷹さんご自身のお生まれはどちらですか?」


少しの間、相手の話すがままに任せる。

下手に話して、会話が途切れたら大変だ。


「そうですか・・わかりました。

 それでは、また連絡させていただきます。」


奥からカウンターに、向かいながら声をかける。


「忙しくなるね。」


ヒョイと届いた荷物を投げて渡す。


「決まりか・・・。」


箱入り装丁の本の中身を取り出し、分厚い表紙をめくると探し人の写真と情報が・・。

彼が情報を確認する様子を見ながら、猫を抱き寄せる。

猫も彼をじっと見つめる。

人間と猫が、そろって同じ方向をじっと見つめる光景というのも、傍から見ると異様な光景かもしれない。


「探し人の情報と住所遍歴については、

 わかる限りそこに書いてあるけど、

 追加情報として、依頼者は生まれてから他県で暮らしたことはないらしいね。」


「そうか・・

 となると、まずは生き別れた姉を

 どうやって探したか・・から攻めるか。」


「だね。」


情報を読みながら、ずっと左のこめかみを押すしぐさは、おなじみの癖だ。

あえて指摘したことはない、これを見ると彼が彼なのだと再確認できるから・・。


「いや、戸籍売買のラインでも・・攻めるか。」


「だね。」


「だね、じゃなくて考えろよ。」


「だね。」


「とりあえず、この情報には探し人の

 情報しかないから、

 もっと依頼人の情報を確認しといてくれ。

 あと写真だな・・

 年代別に何枚かあると助かる。」


大きなため息をつく彼を見ながら、もっとも大事なことを伝える。


「必要経費は、このカードとこの口座に

 振り込んでおいたからね。

 くれぐれも、無駄遣いはしないように、

 まあ、無駄遣いは経費として認めないけどね。」


「別にしねぇーよ。

 とりあえず、依頼料が入ったんだから、

 上のソファ買い替えてくれ。」


まだ、拘ってたのか。

そんな彼の言葉にかぶせるように、


「いや、前から思ってたんだけど、

 一人店番は辛いからバイト雇うことにするね。」


と、次に大事なことを伝える。


「あ??それって・・おい!!」


「さっき言ったでしょ、

 忙しくなるって、”僕”がね。」


何か言っているようだけど、聞こえないふりをして猫と奥へ引っ込む。


「依頼者の追加情報は、また送るね。」


今日も、コーヒーが美味しい。

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