買物行脚
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 /俺ちゃん / 古本屋店員
・マスター /僕 / 古本屋店主
・サトリ / 依頼主
「ごめん、サトリちゃん。
さっきの薬、ワンセット貰えないかな・・。
調べて、もし分かれば、追加の薬をゲットできるかもしれない。
ただ、一回分減るリス・・。」
マスターが全てを言い終わる前に、ピルケースが目の前に出ていた。
「はい。
信用してるから。」
サトリは、そう言って、こちらを見つめる。
「ありがと。
早速だけどサトリちゃんには、
この後、彼と出かけて別の場所に行ってもらおうと思ってる。
道中は、彼の指示に従って。」
俺をチラ見して、再びサトリに視線を戻すマスター。
「毎度おなじみの、俺ちゃんで~す。
早速、準備しよっか。」
うん、馬鹿みたい。
何が ”俺ちゃん ”なんだか・・・。
自分というものを理解できているのか不安になってきた。
マスターからの冷ややかな視線を避けきれない状況を、何とか無言でスルーした。
「じゃあ、行ってくるっす。」
準備を済ませたマスターに声をかける。
「うん、気を付けて・・。」
パソコンに向かいながら、手を上げて、ヒラヒラと振っている。
そんなマスターを横目に見て、事務所を出た。
「よし、サトリちゃん!!
直ぐに目的地に行くのも味気ないし、どこか行こうよ!!」
表に出るなり、そうサトリに声をかけた。
「え?いいの?」
「いいの、いいの。
ただ、一つだけ俺ちゃんのいうこと聞いてね。」
人差し指を立てて、サトリの顔の前に近づける。
もの凄く怪訝な表情というか、警戒されたみたいだけど・・。
そんなことでは、へこたれない。
「じゃあ、行こっか。
何処がいいっすかね~。
あ、さっき欲しいものは買ってもらえたし、
お供付きでお出かけもしたって言ってたけど、
一人になって行きたいところある?」
スマホを眺めながら、サトリに問いかける。
「え・・どうかな。
急に言われても・・。」
「いつもは、どうしてたの?
欲しいものとか・・行きたい場所とか・・
どうやって決めてたっすか?」
「それは、雑誌とかTVとかネットとか。
健康の問題で、外出は制限されていたけど、
何もかも制限されてたわけじゃなかったから。」
ふ~ん・・と頷きながら、しばらくスマホを眺めていたら、足に衝撃が走った。
「痛った!!!」
横を見ると、さらに蹴り込もうとしてくるサトリがいた。
「あ~・・ゴメン、ゴメン。
謝るから、蹴るのはやめてね。」
そう言って、両手を前に突き出す。
「じゃあ、今日は俺に付き合ってよ。
俺からのお願いも含めてさ。」
返事は待たずに、手を引いて地下鉄に向かった。
とりえずサトリは何も言わずに付いて来てくれた。
ド平日の日中、あまり人は多くないかな。
そう思いながら俯く。
話題が思いつかない・・まいった。
マスターのこと笑えないな・・と、顔を上げてガラスに映る見慣れない自分を眺めていると、
「ねぇ・・、そのスニーカー、タグ付いてなかった?」
ん??唐突な内容に、自分の足元を見る。
「タグ??」
「そう、プラスチックの・・。」
「ああ、付いてたよ。
ムッチャ邪魔だったから、とって捨てた。」
「えええ??それって、そのスニーカーのことわかってて履いてる??」
さらなる問いかけに、
「ああ、わかってる。
でも、邪魔なものは邪魔だし、本当はこの中途半端についてるコレも引きちぎりたい。
デザインとしてギリギリのラインで我慢してる。」
と答えた。
サトリは、冗談じゃないというような顔をして俺を見ている。
「こんなのは、履く人の自由でいいでしょ。
俺は、そこに拘りがなかっただけ。
他のもタグは捨てた。」
この身体の元の持ち主の記憶から、このスニーカーがレアで大切にしていたことは知っている。
が、俺と価値観が違っただけだ。
スニーカーは、消耗品だし、履くのに邪魔なカニのタグは要らない。
どこかに引っかかって、怪我でもしたら大変だ。
「他にも持ってるの??」
「何足かあったな。
何よ、サトリちゃんスニーカー好きなの??」
すぐさま頷くサトリは、嬉しそうだ。
「うん。
見てるだけでも、楽しくなる。
ただ、あまり外に出る機会もないから、買わなかったけど。」
「そうか~。
じゃあ、ちょうどいいや。
サトリちゃんのスニーカー買いに行こうよ。
で、この間みたいにお茶して、目的地に向かおう。」
そう言って、サトリを見た。
嬉しそうなサトリは、そのまま俺の履いてるスニーカーの蘊蓄を語りだした。
まあ、知ってるけどな・・そう思いながら、目的の駅までサトリの蘊蓄を聞いた。
たくさんのショップで、サトリは嬉しそうに商品を見て回った。
試し履きをし、ああでもないこうでもないと、選ぶサトリは楽しそうだった。
ひとしきり見て回り、ようやく1足のスニーカーに決めたようだ。
新しいスニーカーを履くと、鏡の前で嬉しそうに眺めていた。
ちなみに、古い靴は、そのまま処分してもらった。
そろそろ、お茶でもしようかと、目についたスイーツショップに入る。
サトリは、ゆっくりとメニューを見ながら、スニーカーショップと同じように悩み始めた。
俺はコーヒーだけを頼み、サトリが注文を決めるのを眺めていた。
「さて、そろそろ、お願いを聞いてもらおうかな。」
「私も、お願いがある。」
お互いに笑いながら、お願いを聞きあった。




