根拠
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 /俺ちゃん / 古本屋店員
・マスター /僕 / 古本屋店主
・猫 / 古本屋のペット
・サトリ / 謎女
朝食を食べ始めたマスターを見ながら、コーヒーを片手にパソコン前の椅子に座っていると、サトリが起き上がった。
キョロキョロと、周囲を見ながら、現在の自分の置かれている状況を整理しているようだ。
「あ・・・あの・・・。」
「朝起きた時は、おはようっしょ。
とりあえず、顔洗って、歯磨きなよ。
歯ブラシは、その新しいの使っていいからさ。
あ、朝食食べる??」
返事を待たずに、サトリにタオルを投げて渡し、自分は朝食の準備にシンクへ向かった。
まあ、作るといっても目玉焼きとトーストにコーヒーぐらいだ。
「おはよ~。
早くこっち来て座んなよ。」
マスターが、パンをかじりながらサトリを呼ぶ。
それを横目に見ながら、手早くテーブルに朝食を並べ、彼女が来るのを待つ。
少しして、こちらにやってきたサトリは、マスターに促されて朝食を食べ始めた。
それを眺めていたマスターが、
「ずいぶん、疲れていたみたいだね。
大丈夫??
てか、駄目だよ~知らない人の家に入ってきて寝ちゃったら。
僕がいたから良かったけど。
こっちの彼は、危なかったよ。」
「あ~・・ぶん殴っちゃうっすよ。
マジ殴りだから、相当、痛いけど良いかな?」
俺とマスターを交互に眺めながら、笑顔をみせるサトリに続けて声をかける。
「ただ、ホント、簡単に知らない人についてっちゃ駄目だよ。」
「・・・ごめんなさい。」
これまた、謝られてもな・・。
招き入れたのは、こっちだし。
何なら、事案として注意の緊急メールが回る案件だ。
「で・・昨日は、話を聞く前に寝ちゃったから・・あれだったけど。
今日は聞かせてもらえないかな?」
マスターが、やんわりと話を切り出した。
サトリは、急に食べるのを止めて・・ジッとこちらを見つめだす。
「あの・・私・・。」
一言言って、黙り込む。
「さっきは、簡単に人を信用するなと言っておいて何だけどさ・・。
俺たちは、悪いスラ・・人間じゃないよ。
あ、自分で言っといて、むっちゃ胡散臭ぇ~。」
そう言ったと同時に、
「にゃあぁ~~。」
と、間抜けな鳴き声がした。
フッと視線を下に向けると、ソファの陰から猫が、こちらを伺っている。
知らない人が食事をしているから、遠慮しているようだ。
マスターが、手を差し出すと、待っていたかのように静かにマスターの膝の上に乗ってきた。
その光景に少し緊張がほぐれたのか、また朝食を食べ始めたサトリは一気に食べ終わると、またこちらに視線を向けてきた。
「いくら視ても、わからないよ。」
マスターが、ボソリと呟く。
ギョッとした顔で、マスターの顔を見たサトリは、そのまま俺の方に視線をスライドさせてきた。
「・・サトリちゃんに何かが視えているのは、わかってる。
そして、サトリちゃんの行動決定に、その何かが大きく影響していることも。
ただ、それが何なのか・・視えたからどうなのか・・そこまではわからないけど。」
俺の言葉を受けてサトリは、
「何も分からなかったから・・信用した。」
そう一言呟いた。
俺とマスターは、そのまま黙って話を続けさせた。
「初めて、俺ちゃんを見た時、驚いた・・何も視えなかったから。
っていうか・・視えるんだけど・・なにも感じ取れないというか・・。
こんな人初めてだったから・・気が付いたら腕を掴んでた。
ひょっとしたらって・・。」
俯き、言葉が途切れていく。




