チャラ男のドヤ顔
宜しくお願いいたします。
○登場人物
・俺 /俺ちゃん / 古本屋店員
・マスター /僕 / 古本屋店主
・サトリ / 新手のナンパ師 / 謎女
「遅かったね。」
事務所の扉を開けた彼に声をかける。
「いや~可愛い女の子から熱烈なナンパを受けてさ。
美味しいスイーツ食べてきたっす。
イケメンは、大変だな~。」
「いやいや、僕はお腹減ったんだけど。
勘弁してよね。」
このチャラ男に、あの後どれだけ忙しかったかを、しっかりと聞かせないとな。
「ちょっと待っててよ。
適当に作るっす。」
そう言って、シンクに向かう彼に向って、
「若い女の子にナンパされて、
お茶するのは君の勝手だけどさ。
お持ち帰りは、どうなのかな???」
彼が、帰ってきた時から気が付いていた。
階段付近で動かないなんて、明らかに不審人物。
そもそも、このビルの2階に用がある人間などいないのだ・・。
「あら~・・・撒いたつもりだったんだけどな・・。
人ごみに紛れても、上手いことついて来たんすよね。
ゴメン、マスター。」
「ゴメンて、言われても。
階段から動く気配ないよ。」
彼をどうやって尾行してきたのか・・興味あるな~。
どうするか悩んでいたら、夕飯を作っている彼から、
「こっちは今、手が離せないからさ。
しくよろー。」
の言葉をいただき、全てを諦めて溜息とともに立ち上がると、入り口に向かった。
ん・・!!??
そのまま、ドアを開け、階段向かって声をかける。
「そこにいても、仕方ないでしょ。
とっとと家に帰るか、こっちに入ってくるか。
決めてくんないかな?
対面が悪いからさ。」
そう言って、ドアを開けたままにして部屋に戻った。
しばらくすると、入り口付近に影が見える。
「そんなとこにいないでさ、中入んなよ。
お腹減ってるなら、一緒にご飯食べよう。
あ~・・でも、パンケーキ食べたし・・そんなに減ってないか・・。
とりあえず、コーヒーでも入れるから座んなよ。」
そう言って、彼がソファへ促す。
僕は、すました顔でテーブルに夕飯をスタンバイする。
「たいしたものなくて、ごめんね。
無理して食べなくてもいいけど、我慢はしないでね。」
「マスターが、言うことじゃないっしょ。
作ったのは俺なんだから。
そういうのは、俺のセリフっす。」
シンクから聞こえる声を無視して席に着く。
とりあえず、僕はお腹が減っているから、二人がどうあれ、たくさん食べよう。
そう思って、前を向くと、彼女は立ったままだった。
「はい、コーヒー。」
彼は、彼女にコーヒーを渡すとソファに座った。
と、同時に彼女は、すかさず彼の隣に座った。
「あははははは、気に入られてるね。
羨ましい。」
すでに食べ始めていた僕が、ニコニコ話しかけても彼女は能面のようだ。
う~ん・・嫌われたのかな??
「とりあえず、キャップはとったら。」
続けて声をかけると、黙ってキャップをとった。
そのまま、黙り続ける彼女に、彼が声をかける。
「う~ん・・・どうしたのかな?
一応、サトリちゃんとは、美味しいスイーツを食べて、
円満にお別れしたつもりだったんだけど?」
「へぇ~サトリちゃんて、名前なのか~。
よろしくね~。
僕はね~・・・僕は・・・・・・。
マスターって呼んでね。
でもさ・・ホイホイ知らない人についてっちゃ駄目だし、
その後、知らない人をストーキングするのも感心しないな~。」
箸の動きを止めることなく茶々を入れる。
「・・ごめんなさい。」
「謝らなくてもいいんだけどね・・・。」
せっかくの夕食なのに、会話がない・・。
何だか、ものすごく切ない。
その時、彼が急にぶっこんで来た。
「で、どこから来て・・何から逃げてるの?
誰に追われてるの?」
驚いた表情で、彼を見るサトリちゃん、当たり前でしょとドヤ顔を向ける彼。
ヤレヤレといった表情で、それを眺める僕。
と、彼が一口コーヒーを飲んで話し始めた。
「ビルの間から出てくる。
被せたキャップをとろうとしない。
一人ではなく誰かといることで、自分の存在を誤魔化そうとした。
飲食店では、窓際を避け、終始周りに気を張っていた・・。
まあ、言えば切りがないけど、わかりやすいのはこんなところかな。」
「あららら、結構わかりやすかったんだね。
そりゃそうだ。」
ばつが悪そうに俯くサトリちゃんは、まだ一口もコーヒーを飲んでいなかった。
しばらく黙って様子を見ていたら、サトリちゃんは、うつらうつらと頭を上下させていた。
なんだ、黙っていたわけじゃなく、眠かったのか。
そう思っていると、彼が立ち上がり毛布を持ってきてサトリちゃんに掛けてあげた。
「へぇ~優しいね。
まあ、懐かれると悪い気はしないよね。」
「俺は今、20代だからね。
むしろお似合いなの。
おっさんのマスターとは違うのさ。」
そんなチャラ男の発言は無視して、ソファで寝るサトリちゃんを眺めながら呟いた・・。
「気が付いてる?」




