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Memory Cage ~ メモリー ケージ ~  作者: アニマ
繋ぐ者
48/77

甘味処

第3章開始です。

宜しくお願いします。


○登場人物

 ・俺 / 古本屋店員

 ・マスター / 古本屋店主

 ・猫 / 古本屋のペット

 ・新手のナンパ師 / 謎女

どうして、こんなことになったのだろう・・・。

聞こえるのは、自分の荒い息遣いと、地面を蹴る音だけ。

此処が何処なのかもわからない。

行くべき場所があるわけでもない。

足がもつれる・・呼吸が苦しい・・胸が痛い・・。

でも、止まるわけにはいかない。


----------------------------------------------------------


猫が、居眠りをしているのは、いつものこと。

その猫を膝にのせてマスターが、居眠りしているのも、いつものこと。

俺が、それを見ても何も言わないのも、いつものこと。

いつもと違うのは、店内に客が複数いること。

珍しい・・ま、たまには、こういう事もあるんだろう。

そんな稀な光景を眺めていると一人の客が、数冊の本を持ってカウンターにやってきた。


「すいません。

 これ、欲しいんですけど・・値段がなくて。」


「はい、すいません。

 ちょっと見せてくださいね。

 あ~・・・ホントだ。」


このやり取り・・いつまで続くんだろうな・・。

そう思いながら立ち上がり、マスターの座っている椅子を軽く蹴り上げる。

本当に、軽くだ。

この世の終わりのような顔で、こっちを見るマスターに本を見せ、


「また、本に値段がないっす。

 そろそろ、いい加減にしてほしいんですけど。」


と、本を押し付ける。

あたふたと本を受け取ったマスターは、まだ状況が理解できていないのか本を見つめている。

その点、すぐに状況を理解してヒラリとマスターの膝から降り、何処かへ姿を消す猫はさすがだ。


「マスター、お客さんが待ってるっす。」


「ああ・・うん・・そうだね。」


やっと立ち上がったマスターは、カウンターへ行き客と話をし始めた。

それを見届けて、マスターへ声をかける。


「マスター、少し外へ出るから、お店お願いでーす!!」


そう言って、バックヤードへ向かった。

こういう時は、返事を聞かないのがコツだ。

バックヤードに入り、周囲を見渡す。


「にゃぁ・・。」


段ボールの陰から、顔を出す猫に向かって、


「お前も行くか??」


と声をかける。

考えるように首を捻ったが、スッと顔を引っ込めた。

行かないってことね。


「じゃ、マスターとお店のこと頼むっす。」


バックパックにキャップ、財布を掴んで、裏口から通りへ出た。

今日は、夕飯どうするかな。

特に思いつかないし・・・お店で決めるか。

スマホの時計を確認して・・古本屋の閉店まで・・後2時間。

戻るのは、2時間後だな。

そう決心して、店を後にした。


2時間・・往復の時間に、買い物する時間・・。

意外と長いぞ2時間、間が持たない。

猫も居ないし、途中でコーヒーでも飲むか?

いや、ケーキってのも良いな。

久しぶりに糖分補給・・アリだな。


当然、買い物前に行った方がいいよな。

買い物後だと重いし、食材が悪くなったら大変だ。

そうなると、何処が良いだろう・・買い物経路からあまり離れるのも嫌だ・・。

先生に聞いてみるか・・おもむろにスマホを取り出し、呼びかける。

人工的な声で返事があり、周囲にあるスイーツショップの情報を画面に映し出す。

・・・・わからん。

情報を見ても、どのショップを選べばいいのか・・さっぱりだ。

慣れないことをしても、こんなものだ。


っと、こんなところで立ち止まっているのも邪魔になるな・・。

周りに迷惑をかけてしまった。

そそくさと脇によった時、ゴソリと何かの動く気配がした。

ん??何だ??猫かネズミか??

こんなビルとビルの間からする気配なんて、そんなところだろう。

まあいい、俺はそれどころじゃない。

スマホに再び注目するも、ズ・・ズル・・もはや気配ではなく、完全に音がする。

何・・ゾンビでもいるの??

そう思った瞬間、グッと手首を捕まれた。


「あなた・・、変わってるね・・。」


フッ・・よく言われる。

じゃない、なんだこいつ??


「なになになに。

 急にビルの間から、知らない男の腕を掴むって・・新手のナンパ??」


精一杯の笑顔で話しかけてみる。

とりあえず、腕を離してもらえないだろうか・・。


「そうね。

 新手のナンパってことで良いわ。

 お茶、付き合いなさいよ。」


「甘い物もいいかな?」


そう言って、相手の返事を待たずに、頭に自分の帽子を被せた。

と、同時に、彼女は俺の腕を離し、今度はそのまま手を繋いできた。


「わかったわ。」


「では、お供させていただきます。」


傍から見ると、恋人同士に・・見えるのか??

ちょっと心配になりながら、手を繋いで歩きだした。

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