土産話
第二章終了です。
よろしくお願いします。
○登場人物
・俺 / 古本屋店員
・マスター / 古本屋店主
・戸々谷茂 / 今回の依頼人
・戸々谷佳代子 / 依頼人の姉
・渋谷小五郎 / 交渉対象 & ホスト
・大桃桜子 / 交渉対象の恋人 & 行方不明
これで、粗方やることは終わった。
五月蠅いTVレポーター系の人間もいない。
俺が、土地と家を国に寄付するというとザワついたが、曰くつきの土地はどうにもならないと気が付くとスッといなくなった。
いつも通り、仕事を辞め・・住まいを引き払った。
意外と好みの服が合ったのと、新しいスニーカーがあったので頂いて、あとはすべて処分した。
そして肝心の髪も黒髪にした。
少しチャラさが落ち着いた感じがする。
ここまでやって、マスターに連絡。
「TV見たけど・・残念だったね。」
第一声がこれか・・どんだけ楽しみにしてたのよ。
思いのほかガッカリ感が凄い。
「余計なお世話。
あまり目立っちゃ駄目でしょうが。
目立たず静かに忘れ去られるのが一番。」
「ま、そうだね。
そういった意味では、確かに大成功。
ところで、連絡があったということは、もう手抜かり無しってことだね。
こっちの作業に入らせてもらうよ。
あ、そうそう、歳いくつだっけ?」
「あ~25歳くらいでいいんじゃないかな。
大体でいいよ。
見た目変わっても、中身変わんないから。
あ、それと、今回の依頼は失敗。」
それだけ言って、通話を切った。
何か、切り際に聞こえた気もするけど、大したことは言ってないだろう。
さて、前に買った服は、全て意味なかったなー。
と思いながら、今回は服買わなくて済みそうだし良いか・・と気持ちを切り替えた。
あ、でも、パンツ・・合うかな~。
これだけは譲れないからな。
とりあえず、この間買ったものを履いてみてから考えよう。
事務所に向かおうと、しばらく歩いていると目の前に、例のコーヒーショップが目に入る。
あ!!これひょっとしていけるんじゃね。
颯爽と店内に入り、カウンターへ向かう。
笑顔の店員に向かって一気に
「トールソイオールミルクアドリストレットショットチョコレートソースアドホイップフルリーフ・・・・」
と、言い切った。
俺は、さぞかし満足げな顔をしていただろう。
ただ・・なんだこの違和感。
注文を笑顔で復唱する店員を眺めていたのだが・・・
スッと申し訳程度に手を挙げて会計を止めると、
「ゴメン・・やっぱり今日のコーヒーにして。」
復唱した店員に謝って、”今日のコーヒー ”を受け取ると、定番の外が見える席に座った。
やっぱり俺は・・これが一番だ・・。
俺は、俺だ・・。
俺が好きなのは、”今日のコーヒー”。
外を眺めながら、ゆっくりコーヒを飲んでいると、目の前の光景に目を奪われた。
正確には、光景ではなく一人の女性。
瞬きもできないとは、このことだ。
別に派手な格好をしているわけでもない、奇異な行動をとっているわけでもない。
控えめな格好で普通に歩いているだけだ。
ただ、どうしてもその姿から目が離せなかった。
それが、”大桃桜子 ”その人だったから。
見た感じ元気そうだ。
あの、様子なら依存症から抜け出たのだろうか。
いや、まだ大事な時かもしれない。
いろいろ思いは廻った。
俺が彼女に会いに行くことはできないし、帰らなかったのだからきっと彼女も会いたいとは思っていないのだろう。
ただ、この身体の持ち主の記憶に強く残るこの女性が、元気だと知れて良かった。
しばらく眺めていたが、彼女は、こちらに気づくこともなく何事もなかったように行ってしまった。
コーヒーを飲み終え立ち上がると、再び事務所に向かって歩き始めた。
彼女が笑顔だったという土産話を持って。




