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Memory Cage ~ メモリー ケージ ~  作者: アニマ
視る者
44/77

超感覚

宜しくお願いします。


○登場人物

 ・俺 / 古本屋店員

 ・マスター / 古本屋店主

 ・戸々谷茂 / 古本屋の客 & 今回の依頼人

 ・戸々谷佳代子 / 依頼人の姉

 ・渋谷小五郎 / 交渉対象 & ホスト

 ・大桃桜子 / 交渉対象の恋人 & 行方不明

「それじゃあ、最終の詰めをしようか。」


そう言って、マスターが目の前に座る。

天井を見上げていた俺は、再びマスターに視線を戻し、


「進行は、任せるよ。」


と、先を促す。


「じゃあ、まずは、確認。

 依頼人に、土地と家・・売る?

 今なら、簡単にできるけど。」


「答えは、NO!!

 絶対に売らない。」


「ファイナルアンサー?」


「ファイナルアンサー!!」


少し間をおいて、マスターがゆっくりと返答する。


「正解」


「正解って・・これ正解、不正解の話??」


不満げに答えると、


「ごめんごめん。

 場が暗かったからさ・・。

 ま、僕も同意。

 売らないということで、可決だね。」


「異議なし。」


マスターは、頷きながら話し始める。

ま、マスターなりに暗くならないよう気を使ってるのかな。


「で、依頼人はどうする。」


「ちゃんと引き取ってもらう処があるでしょ。」


シッシと追い払う仕草を見て、マスターが、


「じゃあ、その方向で。

 ・・もう、出てこれないかな・・。」


「かもね。

 どれだけの遺体が埋まっているかもわからないけど・・。

 あの時のマスターの感じからして、

 片手では、足りないと思うよ。」


そう言いながら、あの日のマスターが頭をよぎる。

あの憔悴しきったマスターが・・。


マスターは、視える。

それは、普通の人間には視えないものだ。

稀に、人の感情や音、形に色がついて視える人がいるらしい。

共感覚・・それの、スーパーハイスペック版・・と、言っていいのだろうか。

マスター自身、何が視えているのかは、わかっていないらしい。

ただ、人に重なるように見えるそれが、感情や揺らぎを漠然と視せてくれる。

ちなみに俺は、他の人とは異質の唯一無二・・な何かが視えるらしい。

俺の外見が変わっても、マスターが俺を俺だと認識できるのは、そのおかげだ。

そのおかげで俺は、どうなろうとも帰る場所がある。

俺の存在を、認めてくれる場所がある。


おそらく人から発せられているであろう何か・・を視ているので、人に会わなければ視えることはない。

それも、ある程度、意識しないと視えない。

しかし、強い感情は意識しなくても視えることがある。

というより、マスターの意識に無理やり干渉してくるらしい。

この辺に、マスターがコミュ障な原因があるともいえる。

この力が、良いものなのか、悪いものなのか・・それは何とも言えないが、致命的なデメリットがある。

強引にマスターの意識の中に入ってくるそれは、負の感情であることが多いということだ。

そして、それは、人と生死という枠を超えて、場所に溜る場合がある。

それらは、マスターの意識を強制的に蝕み衰弱させる。

負の感情・・それは死にかかわる感情。

逃れるには、その場を離れるしかない。


だから、俺はマスターを外の調査には出さない。

マスターが外に出るのは、依頼の聞き取りと危険はないと判断した特別な時だけ。

それでも、不安はぬぐえない。

うちに来る依頼は、どうしても負の感情が付きまとうことが多い。

細心の注意が必要だ・・今回は、完全に俺の判断ミス。


今回の場所・・それは、戸々谷姉弟の生家。

マスターの話では、家の前を車で走っただけで、意識を持っていかれそうになったと言っていた。

おそらく敷地内に、かなりの数の遺体が埋められている。

これが、弟に土地と家を残さない理由。


マスターの想像でしかないが、姉は弟が快楽殺人者であることを知っていた。

今まで黙っていたが、もう弟を野放しにはできないと考えた・・何故なら自分が知っていると勘付かれてしまったから。

このままでは、自分も殺される。

弟を止められなかったことを考えると自分の死は仕方がない、でも弟を野放しにはできない。

が、弟が捕まるのを見たくない。

その葛藤の答えとして、他人に土地と家を譲り、自分の死後に事実が明るみになるよう仕組んだのだろう。

奇しくも、姉を殺したのは弟ではなく、土地と家を譲った男だったが・・。


「だけど・・結局、どうして戸々谷姉は、渋谷に土地と家を譲ったのかな?

 弟に譲りたくないということは、わかったんだけど・・。

 どうもその辺が。」


「記憶にもないな~。

 ただ、渋谷は、かなり何でも話していたし、

 戸々谷姉も、親身に聞いている。

 ・・・ひょっとすると誰でもよかったのかな。

 ホストクラブに行ったのも、誰か譲る相手を探していたのかもしれない。

 急に、土地と家を条件付きで譲りますって言われても、胡散臭し。

 渋谷の話は、戸々谷姉にとって渡りに船だったのかもしれない。」


「・・何となく、納得。」


「ま、想像だけど。」


それから、しばらく下を向いたまま、二人で沈黙してしまった。

これもまた何となくだ・・。

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