狂気の暴走とスタンガン
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 / 古本屋店員
・マスター / 古本屋店主
・戸々谷茂 / 今回の依頼人
・戸々谷佳代子 / 依頼人の姉
・渋谷小五郎 / 交渉対象 & ホスト
待ち合わせは、立体駐車場。
雨も当たらなくてとてもいい。
まあ、今日は降っていないけど・・。
もうすぐ指定の時間になる。
もう一人は来ているみたいだけど・・もう一人は・・。
・・・エレベーターか・・・。
エレベーターから、降りた男は、足早に反対側へ向かった。
と、その途中、一台の車から、もう一人の男が下りてきた。
それを見た男は、足を止めもう一人の男と対峙した。
「なんだ、お前だけか?
仲介人はどうした・・。」
「何?問題でもあんの?
仲介人には、俺が遠慮してもらった。
騙して悪かったけど、どうしても釘を刺しておきたくてね。
あんたには、絶対売らないって。」
お互いがお互いを噛みつきそうな顔で見ている。
「・・・・俺に土地と家を売れ!!
金なら出す!!」
「だから、駄目だって。
あんたのお姉さんと、約束したからね。
絶対に、あんたには売らないって。」
戸々谷は、凄まじい怒りと焦りを噴出させながら、相手を睨み付ける。
渋谷もまた、強い意志でそれを拒絶する。
「おっさん・・なんで、あの土地と家に拘んの?
金持ってるし、どこでも良いじゃん?
生家??
別に、意味なくね??」
「ふざけるな・・。
あの土地と家は、俺の聖域だ。
お前に何がわかる。」
そう言って、懐から刃物を取り出し構えた。
もう、思考が感情に追い付いていない。
まさに暴走だ・・。
直情的に、刃物を振り回し、相手に迫っていく。
「そうやって、殺したの?」
その呟きに、戸々谷の動きが一瞬止まった。
「あ??な・・何言ってんだ!!??
俺は何もしていない!!
関係ない!!!!
姉さんを殺してない!!!」
「だから、それ以外・・。
いるでしょ、あの家に、たくさん。」
狂気を帯びた目が、さらに大きく開かれる。
荒い息は、獣を思わせる。
「お前、何を言っている。
俺は、ずっと見ていた。
何も、なかったはずだ・・・。」
「ああ・・あの家の防犯カメラの映像を盗んで監視していたのかな?
そんなことしなくても、わかるんだよね。
何があるかくらい。
それに、お姉さんも知ってたんでしょ。
だから、おっさんに渡したくなかった。
今日も、こんなことになると思ってたよ・・。」
「うわわわわわわわわわわわわわぁああああぁぁ~!!!!!!
ふざけるな、ふざけるな・・・。」
もはや、ただ刃物を振り回すだけで、何も見えていない。
そんな状態の人間を制するのは慣れている。
上着を腕に巻き付け、タイミングを見て突き出された腕を絡めとる。
「残念だけど、あんたはごめんだわ。」
そう言って、その腕に体重を掛けた。
乾いた音がすると同時に、刃物が落ちる。
腕が、本来曲がらない方向に曲がっているのは愛嬌だ。
騒がれても、面倒・・ラストはスタンガン!!
最初からこうしても良いけど、個人的な思いで痛い目に合わせた。
と、そのまま立体駐車場を出て、気の向いたほうに歩き出した。
見慣れた軽自動車が前方に静かに止まったのを見て、助手席に乗り込む。
「お疲れ。
危なかったんじゃない??」
「どうかな。
ただ、この身体、体力はないかな。」




