悪寒の理由と後悔
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 / 古本屋店員
・マスター / 古本屋店主
・軽自動車 / 愛車
「そろそろかな・・。」
愛車のスピードを少し落とし、周囲を伺う。
さっきコンビニの駐車場で地図を確認したから間違いない。
あの十字路を右に曲がり、しばらく走れば目的地だ。
彼からは、車で通りすぎる感じの確認で良いと言われた。
加えて、くれぐれも注意するようにとも言われている。
さあ、目的地だ・・と思った刹那。
ゾワリとする悪寒が体を包む・・。
背中に冷や汗が滲み出るのではなく、湧いてくる。
呼吸が上手くできない・・。
意識していないのに、否応なく侵入してくる。
いや、意識させられている。
とてつもなく暗く・・黒く・・触れるものを取り込もうとする何か・・。
自分の目に映る何かから目を反らしたいが、それは叶いそうもない。
ハンドルを握りしめ、とにかく事故を起こさないように前を凝視し、安全運転に徹した。
目的地を過ぎ、しばらく走ったところにあったスーパーの駐車場に入り車を止めた。
とにかく、まともに呼吸がしたい・・・。
大きな深呼吸を何度も行い・・心を落ち着かせる。
流れ出る汗を拭いながらスマホを取り上げ、震える手で彼に連絡を入れた。
「・・やばいよ。
まだ、身体が震えている。」
「マスター申し訳ありません。
まさかとは思いましたが・・そこまでとは・・。
しかし、これで拘ったわけが見えました。」
「そうだね。
こうなってくると、他殺の可能性が強い。
これから、戻って違法薬物のルートも調べるよ。」
手短に話を打ち切ると、スマホを助手席に放り投げ、ハンドルに身体を預ける。
しばらく目を閉じて、もう一度呼吸を整える。
さあ、戻って追加の調査だ・・。
愛車のハンドルを握り、エンジンを掛ける。
かなりの負担があったことを伺わせる連絡だった。
あの雰囲気からすると、追加の調査は難しいかもしれない。
こんな仕事をしていると、悪い予想はよく当たる。
・・こんな仕事だからか・・。
何にしても、コーヒーぐらいは準備して迎えよう。
真っ青な顔をしたマスターが戻ったのは、それから2時間以上過ぎた頃だった。
「申し訳ありません。
無茶をさせてしまいました。」
「いいんだよ。
僕も外で役に立たないとね・・。
とはいえ、異常だった。
あんなところに、あそこまで・・。」
憔悴しきったマスターの姿を見て、改めて後悔がこみ上げてくる。
自分の判断ミスだったのではないか・・と。
「大丈夫ですか?
追加の調査は、明日からでも。」
「いや、やるよ。
少しでも早く解決しないと・・。」
コーヒカップを渡し、ソファーに戻る。
マスターは、そのままパソコンの前に座り、調査を開始した。
「あ、そっちは休んでよ。
結局、体力勝負になるとお任せだから。
気にしないで。」
そう言いながら、モニターを見つめている。
なら・・と、立ち上がりシンクに向かう。
夕食の準備でもするか。
「では、夕食を作ります。
休ませていただくのは、その後ということで。」




