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Memory Cage ~ メモリー ケージ ~  作者: アニマ
視る者
35/77

拘りと煽り

宜しくお願いします。


○登場人物

 ・俺 / 古本屋店員

 ・マスター / 古本屋店主

 ・戸々谷茂 / 今回の依頼人

 ・戸々谷佳代子 / 依頼人の姉

 ・渋谷小五郎 / 交渉対象 & ホスト

「何やってんのさ。」


笑いをこらえながら、録音を聞き終える。


「別に問題ないでしょう。

 あなたに断ることでもない。」


「やることがあるって、ホスト。

 何をやっていたかと思えば・・・、

 似合わないにもほどが・・。」


駄目だ・・堪えられない。

しばらく心からの笑いを堪能した後、それでも笑いを堪えきれない真面目な顔で大きく頷く。


「よ・・よし。

 話を聞こうか。」


「社会勉強ですよ。

 積極的にやりたかったわけではありません。

 それと、あまりにも勧誘がしつこかったんだよ!!」


うわ、後半また切れてる。

って、切れられてもな~これは仕方がないでしょ、笑うでしょ。

何処からか”マスター アウト!!”と、アナウンスが聞こえた気がする。


「とりあえず交渉対象は、顔見知りでした。

 で、売らない理由もはっきりしました。

 雰囲気からして、売るように話を持っていくのは

 かなり厳しいと思います。」


お、口調が戻っている。

そうそう、冷静に行きましょう、冷静に。


「現状のままでは、売らない。

 なら、条件に合わせて、

 現状の建物を壊し、別のものを建ててもらう。

 もちろん依頼者に。」


半笑いで、提案してみる。


「いや、あれだけ、生家が~と、

 拘っていたのですから無理でしょう。」


少し呆れ顔の彼を横目にスマホを取り上げると、おもむろに発信を押す。

なかなかでないな・・。


「あ、どうも!!

 本日、交渉に行ってまいりました。

 はい。

 それでですね、ご相談なんですが、

 現在の建物をすべて壊して建て直す・・

 と言うご提案は、NGでしょうか?」


と、提案してみるも、何やら喚きだしたのでスマホを耳から話す。

要約すると却下ということらしい。

スマホを置き、彼の方を見ると、ヤレヤレといった完全に呆れ返った表情をしている。


「駄目みたい。」


「知ってますよ。

 聞く前から。」


「イヤイヤ、それはない。

 そんなこと聞いてないから。

 何でも、確認は大切だと思うよ。」


前に比べ口調が丁寧になった分、煽り精度がかなり上がっているのを、彼は自覚していない。

一つ深呼吸して気を取り直し、話を戻す。


「となると、もうお手上げだね。

 詰みです。

 投了、お疲れさまでした。」


「いえ、そうなると、

 マスターが、拘って依頼を受けた意味がありません。」


確かに・・引き受けるべきではないと言いながら、引き受けたのは僕だ。

ここにきて、依頼を受けたくないという気持ちが勝ってきたかもしれない。


「そうだね。

 投げるわけにはいかないか・・。

 よし、コーヒーを入れるよ。

 少し気分を変えて、考えなおしてみよう。」

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