ザルと恩恵
宜しくお願いします。
○登場人物
・マスター / 古本屋店主
・戸々谷茂 / 古本屋の客 & 今回の依頼人かもしれない人
”戸々谷茂 ”
本人に書いてもらったメモには、こう書かれていた。
ん??なんて読むんだ。
トトタニ?トタニ?
と、考えながらモニターを見つめる。
どんな時も、依頼人に会う前に、一応、身辺調査をしてはいる。
店内に仕掛けられた、カメラの映像。
本人が記入した本の送り先情報。
それらから、お外にある情報がたくさん詰まった場所に、チョメチョメして情報を貰う。
それで、納得がいけば依頼人との待ち合わせを決めている。
本を送ることで、記載された住所に実際に住んでいることも確認している。
こちらも、馬鹿みたいにホイホイ引き受けたりしないし、会いにもいかない。
ただ、これまで依頼人が浅はかなのか何なのか、この段階で話が終わる場合も多い。
そうなると、こちらは本を売っただけ、まあ、それが本業なんだけど。
こんな僕の苦労、彼知ってるのかな・・。
「へ~これで、ココタニっていうのか。
初めて見た。
名前や住所に、嘘はない・・じゃあ、何で・・。
お、最近引っ越ししてるのか。
IT会社社長・・へ~・・。
会社、個人ともに特にお金に困っている様子もないと・・。
お~!!おっ金持ち。」
一軒家から、高級マンションへ引っ越しか。
どんな依頼かわかんないけど、お金はもらえそうだな。
でもな~きな臭いし、依頼料吹っかけて、断らせるのもいいな。
それにしても、こういうことやっていると、時々感じることがある・・。
一昔前・・紙という媒体に記録するのが主だった時代に比べて、今の情報セキュリティはザルだなと。
今は、大抵データベース化されているし、ネット上に情報があふれている。
複製も簡単だし、拡散も簡単だ。
確かに情報を得るには技術が必要だが、それがあれば情報を得るのは容易い。
利便性は、イレギュラーな利用をする人間にも平等に恩恵がある。
紙なら保管されている場所へ行き、探し、写し、拡散するには更に手間を要する。
今は、一瞬だ・・拡散だけならモノがあれば、素人でも簡単。
同様にその恩恵を受けているとはいえ、恐ろしい世の中だ。
と、天井を見上げる。
あ~ここの方が、天井汚いな。
色々考えるところもあるけど、
とりあえず話を聞くだけ聞いてみよう。
ひょっとすると、連絡つながらないかもしれない。
どうしても、このまま終わらせることに抵抗がある。
スマホを取り上げ、連絡を入れる。
「失礼いたします。
トトタニさんのお電話で間違いないでしょうか?」




