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Memory Cage ~ メモリー ケージ ~  作者: アニマ
奪う者
2/77

開店休業

宜しくお願いします。


○登場人物

 ・俺 / 古本屋店員

 ・マスター / 古本屋店主

 ・猫 / 古本屋のペット

 ・美人 / 古本屋の客

「すいません、この本ありませんか?」


スッと、目の前にリストが差し出される。

ニコリと微笑みながら「お預かりします」と

渡されたリストを一瞥し、そのままマスターに渡す。


「マスターよろしく。」


「自分で探しなよね・・。」


猫がスッとマスターの膝の上から降り、何処かへ見えなくなった。


「探すのは、マスターの方が得意だろ。

 適当に仕入れるから在庫管理もできてないのに。

 俺には不可能。

 働き盛りなんだから働け!!!

 本ぐらい探せ!!!」


やたらと隠居したような雰囲気を醸しだしたがるのは何なのか・・・。

ブツブツ言いながら、立ち上がるマスターを横目に、驚いた顔のお客にペコリと頭を下げながら、愛想笑いを浮かべる。


対して広くもない店内を、ゆっくり本を探すマスター。

時間がかかると踏んで、店内を見渡す客。

とりあえず、売り場からカウンター横に移動し、パソコンを見て仕事している風を装う俺。

姿は見えないが、おそらく寝る猫。


しばらく四者四様の時間を過ごし、マスターが声を上げる。


「う~ん・・・全部は無いね。」


そう言いながら、5冊ほどの本をカウンターに持ってくる。

無いんじゃなくて、有っても見つかるわけがないと、心の中で突っ込みつつ、持ってきた本の汚さに驚愕した。

箱入りだけどかなり年代物の大型事典、ハードカバーの洋書、何か専門書らしきもの等・・古いものだらけ。

カウンター越しに見える客の顔が、青白く引きつっているように見える。

そりゃ、こんな本出されたら引く。


一冊、一冊本を手に取り状態を見る。

カウンターに積まれた本の中から、事典を再度取り上げ、


「これ値段ありませんけど、おいくらですか?」


と、聞いてくる。

マスターは、本を受け取った後、本と客の顔を見て


「ん~あ~・・・5000円?」


なんで、疑問形なんだよ。

じっと、マスターの顔を見ながら客が、


「・・・・わかりました。

 これだけください・・・・ついでに、郵送も。」


ニコッと笑ったマスターが、カウンターに紙とペンを置き


「送り先とか書いてくださいね。」


と、客に一言。

俺に本を渡しながら、


「これ、郵送ね。」


と、一言。

こんな本のどこに需要があるのかわからないが、客は、お金を払ってカウンターを後にした。


「ありがとうございました~。」


と、見送ったのが今日の最初で最後の客だった・・・。

ひょっとすると、この古本屋って営業してないと思われてんのかな。

結局、何もすることがないから、在庫整理に追われる一日を過ごし、閉店の作業をしながら横を見ると、マスターがじっと俺を見ている。


「キモ。」


「本売れないね。」


ヘラヘラしながら言うマスターに ”売れる要素がどこに・・” と、言いたいのをぐっとこらえる。


「いよいよクビか。」


「ど~だろね。」


 不意に現れた猫が、俺の顔をじっと見ているが・・・憐れんでいるわけじゃないよな・・・。

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