遅刻厳禁
宜しくお願いします。
○登場人物
・戸籍ブローカーさん
・戸籍ブローカーさんの手下 D
・????
車に戻り助手席側の窓を激しく叩く。
「まずいことになった、奴が逃げて追いかけたが、
途中で全員バラバラになってしまった。
ひょっとすると、やられた奴がいるかもしれない。」
息を切らしながら、捲し立てる様に話をする。
「お前の銃を渡せ。
俺は、外を見張っているから、
お前は、この銃に弾を込めろ。」
相手の銃を奪い取り、自分の銃を投げて渡す。
車の外を伺いながら、
「お前も来い。
探し出して、追い詰めるぞ。」
弾が込め終わったのを確認し、
考える間を与えないように、車から引きずり下ろす。
山の中を歩きながら、
「予備の弾は、持ってきたな?」
念のため、確認する。
「周りの物音に注意しろ、奴かもしれない。」
音がしても関係ないけどな・・と考えながら、
でも、野生動物ぐらいはいるかもな・・とも考えた。
しばらく意味もなく歩き回り、怖がらせるだけ怖がらせる。
俺もなかなかの演技派だな、
そう思いながら馬鹿馬鹿しい気分になる。
疲れと緊張で何も考えさせない状況を十分に作りつつ、
遠回りさせながら調べておいた崖の上に誘導する。
そして、後ろからトンと背中を押した。
奴らを始末したのは、崖から落ちた奴が持っている拳銃・・
原因は内輪もめ。
仮に発見されても問題はない。
ま、たとえ問題があっても俺は構わない・・。
雨音が、意識を今に引きずり戻す。
頭が重い、少し疲れているのかもしれない。
「あの男が、何を調べ、誰につながっているのか
それが分かるのが最良だったんですけどね。」
「大丈夫だと思いますよ、
なんとなくですけどね。
さっきも言った通り、
同じことがあっても、今回と同じ結果にしたらいい。」
無表情だった顔が、苦笑いを浮かべる。
「そういう、根拠のない話は好きじゃないのですが、
まあ、あなたが、そう言うのなら・・。」
その瞬間、右側頭部に冷たく硬い感触がする。
「何かの冗談ですか?
それとも、そういうことですか?」
こちらからの質問に、感情のこもらない冷たい声で、
「そういうことの方ですね。
もう、あなたとも、縁を切りたくてね。
申し訳ありません。
時間にルーズなのは、我慢できないんです。」
と、答えが返ってきた。
「今日、時間に遅れなければ、
こんなことにはならなかったんでしょうかね?」
再度の質問への返答は、沈黙だった。
雨が降りしきる中、お約束とはこういうことかと納得する。
フラグを立てたのは、どこだったかなと考えながら、
一応、懐の銃に手は伸ばしてみるが、意味はなさそうだ。
「一発で終わらせてくださいよ・・
痛いのは苦手なんです。」
せっかく笑顔で話しかけているのに、一向に和む気配がない。
ここしばらく、笑顔に自信があったんだが・・受けがいいのは女性にだけか。
・・ん?・・それは前の話か。
「何か理由をいただけませんかね。だいた・・・。」
大きな溜息とともに、パスッという気の抜けた音・・
銃声より人が倒れる音の方が周りに響く。
再び大きな溜息をつき銃をしまう。
ゆっくりとしゃがみ込み、倒れた男の懐から銃を摘みあげてポケットに入れる。
それからスマホを取り上げ、壊れていないことを確認。
ここまでがルーティーン・・・。
で、今回の追加事項は、倒れた男の手に自分の銃を握らせること。
「高いスーツが、びしょ濡れだ。」
雨が酷い、頭を押さえながら少しふらつく足元で、静かにその場を去る。




