会食対談
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 / 古本屋店員
・小谷健一 / 依頼人の弟 & 今回の探し人
・井上勇樹 / 弁護士
嬉しそうにメニューを選ぶ男は、急にこちらへ顔を向けると、
「付き合ってもらって、すいませんね。
一人身なので外で食事を済ませることが多いのですが、
今日は話し相手ができてラッキーでした。
どうしようかと悩んでいたんですよ。」
と、笑うその男に、苦笑いを返しつつ
「お食事の邪魔にならなければいいのですが。」
「いえいえ、誰かと食べるご飯は
美味しいじゃないですか。
味の感想を言い合ったり。
もちろん、ご飯の味以外も何でも聞いてください。
あ、お酒飲まれます??
飲み屋の雰囲気は大好きなんですが
下戸なんで私は飲みませんけど、
よろしければどうぞお飲みください。
でも、酔っぱらうのはまずいか。」
と、捲し立てて笑う。
まあ、気にせずこちらも選ぼうとメニューを見る。
適当に注文をしてメニューから相手に目を移すと、一瞬無表情の顔が目に入る。
その顔は、パッとにこやかな表情に変化した。
一瞬の無表情が幻だったかのように・・・。
「で、人探しのお仕事をされておられるとか?」
「そうなんです。
まあ、何でも屋をやっているので、今回は人探しの依頼を受けたって感じですけどね。
他にも、ペット探しや身辺調査、荷物の運搬から、掃除までやってますよ。
そちらは、そのバッチからすると、弁護士さんですか。」
「ははは、目ざといですね。
って、お調べになってるでしょ。
一応、児童虐待とか少年事件とか・・その辺を専門にやってます。」
「へ~そうなんですか。
児童虐待なくならないですよね。」
「そうなんですよ。虐待を受けた子供が少年犯罪を起こす例も少なくなくて・・・。
密接に繋がっているんですよ。
っと、すいません。
人と食事をするのが久しぶりで、つい。
どうぞ、そちらのご用件を・・。」
と、
「おまちどう様でーす。」
注文した商品が、テーブルに並べられる。
お互い烏龍茶を口に運んでから、箸を割る。
「この人なんですけど、ここしばらくの間でお会いされていませんかね?
名前は、小谷健一。」
スマホの画面を相手に向けて、写真を見せる。
「よろしいですか?」
と、スマホを受け取りしばらく写真を見つめ
「はい、2ヶ月ほど前でしょうか、会いましたね。」
「どちらで?」
「事務所で会いました。
受付の人間も知っているかと。
ちょっと、正確な日付までは、覚えていないのですが・・。」
そうか、事務所となると、
他にも知っている人がいて当然だな。
「お話の内容は、さすがに無理ですよね。」
「そうですね、守秘義務がありますのでお話はできません。
本当は、事務所に来たことを話すのもダメですけどね。
人探しをされているということなので・・特別です。」
「それから、お会いにはなられていないのですか?」
「はい、一応お話を伺って、こちらの見解を話しして。
再度考えて、またお越しになるということで、
その日はお帰りになったと記憶してます。
その後は、来られていませんね。」
唐揚げを口に運びながら頷く。
淀みない返答だ。
その後も、他愛のない話を挟みつつ会話を続けるが、
これ以上は、何も聞けそうもないか・・とテーブルの上の夕飯に集中する。
今回の会食、収穫があったのかなかったのか、まだ判断できかねる状態だが、
テーブルの上に並んだものだけは綺麗にいただかないと。
「それでは、ご馳走いただいて申し訳ありません。」
「いえいえ、お話聞かせていただきましたので、これくらいは。
こちらこそ、ありがとうございました。」
ペコリ頭を下げて、あちらの背中を見送りながら、スマホに手を伸ばす。




