お誘い
宜しくお願いします。
○登場人物
・俺 / 古本屋店員
・井上勇樹 / 探し人の探し人
「ここか。」
スマホからゆっくりビルへと視線を移し、上を見上げる。
4階か・・。
我らがボロビル以外は、どこも立派だ。
周りには、少し飲食店がある。
昼少し前だし、昼食に出てくる可能性もある。
適当な場所から、様子を見るか。
もう一度、スマホの写真を確認して、ビルの入り口を見る。
はたして出てくるかね。
できれば事務所には入りたくない。
近場で、見張れる場所となると・・・道向かいのあの喫茶店か。
外が見える場所に座り、コーヒーを注文、スマホを見る。
良し、届いてるな。
ガードレールに取り付けた小型カメラからの映像を見る。
さすがに、直ぐに状況も動かないだろうと、コーヒーを楽しむ。
予想通りしばらく何もない状況を黙って見続けるが・・そろそろ間が持たない。
喫茶店に置いてある雑誌を見ながらボーっとする。
読んでいるのではない、興味がないから見ているだけ。
昼飯にサンドイッチでも食べようと思ったが、動きがあっても困るから我慢。
眠くなっても困るしな。
さて、この調査で何かがつかめればいいが、何も進展がなかったらどうする。
戸籍ブローカールートで攻めるか・・それとも・・。
にしても、今更方向転換か、めん・・じゃない厄介だな。
期間も少ない。
結果を問わず返金はしないが、こちらもプライドがある。
できるなら、何らかの結論は伝えたい・・最悪の結果でも。
そうなったら、マスターと検討だな。
と、あれこれ考えていたら夕刻。
今日はもう無理か・・と、考えた時に目的の人物が入り口に現れる。
もう一度、写真を確認するも、やはりこの男だ。
ガードレールのカメラは、マスターにでも連絡して回収させるとして・・・。
反対車線側から、相手を追いかけつつ横断歩道の信号を伺う。
この方向は・・・どうやら飲食店が多く立ち並ぶ方向に進んでいるのか。
帰るわけではない・・待ち合わせ・・か?
どんどん人通りの多いところに入っていくな。
仕方ない声、かけてみるか。
「すいません、井上勇樹・・さんですよね?」
相手は一瞬立ち止まり、後ろを振り向く。
「はい、そうですが・・あなたは??」
なんだこいつは?と言いたげな、至極当然の表情をされた。
相手の顔をじっと見ながら、
「私、実は人探しをしておりまして、
井上さんに少しお聞きしたいことが。
お手間は取らせませんので、お話し伺えませんか?
今日が無理なら、後日改めてでも構わないのですが・・。」
とりあえず、今日は次の機会への顔つなぎでもいい。
約束さえ取り付けられるなら、それでいい。
一切表情を崩さず、じっとこちらを見ているその整った顔立ちの男は、
急に笑顔を見せると
「かまいませんよ。
立ち話もなんですし、食事でもしませんか?」
まさかの、唐突なお誘いを仕掛けてきた。




