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「びっくりしたなぁ、いきなりどうしたんだよ」



「えへへー」


ゆうなは床にうつ伏せたまま、少し籠もったような声を出した。





おかしい、何か違和感を感じる。



だが、違和感の正体は分からない。





(まあ、いいか。ヨシオが狼であることは確定してる訳だし……このままゲームを進めよう)





ゆうなは、うつ伏せの体勢から進化して、その場で水泳のクロールをする様に両手両足をばたばたと動かしている。


勿論、少しも前に進みはしない。



ヨシオは、僕の後ろで大人しく伏せの体勢を取っていた。




「それじゃ、投票の時間に移るよ。三人しか居ないし”せーの”って僕が合図したら、狼だと思う人を各自が指さすことにしようか」



「あうあんううんあね!おいお!」




ゆうなは顔を伏せ、部屋の絨毯に口を押し当てながら何かを叫んでいる。


恐らく”観念するんだね!ヨシオ!”と言っているんだと思う。





「はい、じゃあ指さすよ……ほら、ゆうな顔上げて。それじゃ見えないでしょ」




ゆうなは顔を上げた。





そして、その瞬間を僕の目は捉えた。



いつも能天気に笑っている彼女には珍しく少し陰りのある表情。そこから読み取れる色は”後悔”。ゆうなの母親が大事に使っていたマグカップを誤って割ってしまった時に、彼女が見せた表情と似ている。



しかし、ゆうなはすぐにいつもの調子でニコニコと笑い、”どっちにしようかな”と指先を僕とヨシオに交互に向けたりして、おどけている。



(なんで、あんな表情を……)




今までの流れで言えば、僕とゆうながヨシオを指さして、ゲームエンド。


狼であるヨシオが負けで、僕ら二人が勝利する……はずだ。




(さっき感じた違和感……そこに答えがあるのかもしれない)




違和感。




――急にゆうなが床に飛び込んだこと――




いや、違う。



勢いよく床にダイブしたことは関係ない――そこじゃない。


”ゆうな”ならば、そんな意味の分からない行動は日常茶飯事だ。




(そうか、分かったぞ)




僕が気になったのは、彼女が飛び込む前に見せた”表情”の方だ。


あの時、ゆうなは一瞬凍り付いたような表情を見せたんだ。




(”ゆうな”は何かに気付いた……そして、それは彼女に”焦り”を与え、彼女はここにうつ伏せで寝転がることを選択させた)





「たーくん、急に黙りこんでどうしちゃったの?早く、指差そうよー」





(なんだ……何を見てゆうなは焦ったんだ?)



僕は周囲を観察する。



そして、すぐに気づく。




さっきまで存在していたのに、現在は無くなっているものがあることに。





(そうか、さっきゆうなとヨシオが走り回ったときに……)




(そうなると、人狼は……)




僕はある結論に至った。













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