ー7ー
「さて、残り時間も少なくなってきたことだし、—-そろそろ、誰が人狼なのかをはっきりさせようじゃないか」
僕がそう言うと、ゆうなは”へっ?”と不思議そうな表情を見せた。
ヨシオは、伏せの体勢のままで、さっきまで出していた舌を収めた。
「たーくんが人狼じゃないの?」
僕は静かに首を横に振った。
「……残念ながら、僕は人狼じゃないんだ、ゆうな」
「じゃ、じゃあ誰が人狼なんだろう……はっ!?」
ゆうなはホラー映画でよくあるシーンみたいに、ゆっくりと首を回して、視線をヨシオへと向けた。
「ま、まさか……ヨシオ……なの?」
ゆうながそう言うと、ヨシオは”ワン”と元気よく吠えた。
「ヨ、ヨシオだーー!」
ゆうなが楽しそうにヨシオを指差して、きゃっきゃと笑っている。
ヨシオは、”何か楽しいことがあるんですか?”といった様子で、ゆうなに釣られてその場をくるくると回転しだした。
(案外簡単に行きそうだな。もう少し”ゆうな”がごねると思ったけど……)
僕は安堵した。
残り時間は”1分”。このまま、ゆうなとヨシオがじゃれるのを見ていれば良さそうだ。
ゆうなはヨシオに抱き着こうと追い回し始めたが、先のヘッドロックの恐怖があるのか、ヨシオはゆうなから逃げようと必死だ。
「バウバウ!」
「この人狼めー、お縄につきなさい!」
ゆうなはヨシオを部屋の隅に追い詰めたが、一瞬の隙をついてヨシオがゆうなの傍を抜けた。そして、僕の背後に回ると”おい、助けてくれ”と言いたげな表情を見せていた。
「ゆうな、ヨシオを追い回すのは止めてあげてよ。ヨシオ怖がってるから……」
「でも、ヨシオ狼なんだよ。懲らしめないと」
「このゲームにそんなルールはありません。いい加減ルールを把握してよね」
”えへへー”と笑っていたゆうなの表情が一瞬で凍り付いたかと思うと、ゆうなは勢いよくこちらに向かって飛び込んできた。
「とーう!」
「うわ、びっくりした。急になんだよ」
飛び込んできたゆうなであったが、距離が結構離れていたので僕にまで届かなかった。さっきまでヨシオが伏せていた位置辺りに着地して、両手両足をピンと伸ばした姿勢でうつ伏せになっている。
そこで、タイマーが”ピピッピピッ”と煩く鳴いたので、僕はスマホをタップしてそれを止めた。




