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異世界アイドル~Lv.1から始めます~  作者: ユニコーン須田
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01 目覚めと出会い

 意識が覚醒すると、草と土の匂いが鼻をくすぐった。

 目を開け起き上がると、そこは草原だった。何もない、わけではなさそうで遠くに町のようなものと少し離れた先に古びた建物が建っており、そこからだろうか、子供の楽しそうな声が聞こえてくる。


「ここ、どこ?」


 声を出すと、その異変に気が付いた。何だろう、声が高いというか、若い。慌てて立ち上がって、自分の体を見る。胸はないし、手や足は記憶より小さい。纏っている服は簡素なものワンピースでほぼ、布一枚みたいなものだ。靴は革靴だろうか、わりとしっかりしている。

 長く伸ばしていた黒髪は肩辺りの長さで、この長さにしていたのは中学校の最初のことだと思いだす。12~14歳辺りだろう。

 冷静に考えて、私はなぜか若返ってしまったようだ。


「とにかく、ここがどこだか確かめないと……」


 町に行くには少し遠い。近くにある建物は遠目からでも古びているが、子供の声もするし大丈夫だろう。


 私は、古びた建物に歩き出した。



「あのう、すいません」


 門に近づくと、こちらに歩いてきていたのが見られていたのか、子供たちが興味津々にこちらを見ていた。建物から、子供たちに呼ばれたのだろう、大人の女性がこちらに走ってきている。


 女性が目の前にやってきた。人好きのする優しい笑みを浮かべている。少しほっとした。


「こんにちは、初めまして。私はここの孤児院の院長のソフィーよ」

「はじめまして。私、ここがどこか分からなくて……あそこの草原に倒れていて、どうしてそこにいたのか覚えていないんです」


 そういうと彼女は痛ましいものを見る目になり、私をぎゅっと抱きしめた。


「そうなの。たまにいるのよ。自分の子に記憶消去の闇の魔法をかけて、ここに捨てる親が……」

「!?」


 記憶消去!?魔法!?なにそれ、分かんない。

 聞きなれない言葉が出てきて困惑する。まるでファンタジーの世界みたいじゃない。


「ま、魔法って……?」

「あら、ずいぶんと強い魔法をかけられたみたいね。人はね魔法やスキルを持っているものなの。あなたにもあるはずよ。『ステータス』って唱えてみて?」


半信半疑になりながらも、「ステータス」と唱えると、目の前に半透明のウィンドウのようなものが出てきた。



ルーチェ 12歳

Lv.1 / アイドル

HP:10/10

MP:10/10


魔法:

光魔法 Lv.1


スキル:

歌唱 Lv.1

ダンス Lv.1

陣地形成 Lv.1

鑑定 Lv.1


固有スキル:

アイテムボックス



「本当だ……魔法とスキルがある」

「他人には見えないから安心してね。それで、あなたのお名前は?」

「ルーチェって言います」


 可愛らしいお名前ねと笑いながら、ソフィーさんは私を建物の中に案内してくれた。私を孤児だと信じ切っているようだ。


 建物内は外観と同じように古びており、一番大きな部屋に通された。中には子供たちがたくさんいた。院長と呼ばれ、ソフィーは大変子供たちに慕われているようだ。


 椅子に座り、ソフィーはここの施設の紹介をしてくれた。


「ここは12歳までの子を育てる孤児院なの。ルーチェは何歳だった?」

「えっと、12歳でした」

「そうなのね。ここにいられる期間は短いかもしれないけれど、歓迎するわ」


 優しい笑顔でそう言ってくれた。とりあえずしばらくの宿はここで決定のようだ。

 ついでとばかりに、気になったことを聞いていく。


「私のステータス、レベル1だったんですけど、それが普通なんでしょうか?」


 レベルの隣に書いてあるのはおそらく職業だろう。アイドルと書いてあって、どきりとしたが、顔には出さずにおいておく。


「まあ!そんなことはないわ!個人差はあれど、大体平均して年齢ぐらいのレベルのはずよ」


 そんなに強い闇の魔法にかかったのね、とソフィーは涙ぐんでしまった。つまり、今の私は赤ちゃんレベルということだ。


「ルーチェには少し酷かもしれないけれど、レベル上げをした方がいいわね」

「そうですね、それからこの国のことや常識なんかも教えて頂けるとありがたいです」

「もちろんよ。他の子たちと一緒の勉強しましょうね」


 ソフィーはそう言ったが、彼女の周りにいる子供たちは勉強が嫌いなようで嫌がるような顔を前面に出していた。


 ふと、ソフィーの後ろからこちらを見ている女の子が気になった。ファンタジーらしく桃色の髪をしてるが、日本人っぽい顔で誰かに似ている気がする。ここの人たちは所謂外国人顔をしており、その子だけ少し浮いていた。まあ、浮いているのは私も同じだろうが。


 ソフィーに向き直ると、手を差し出され、握手をした。握手がこちらの代表的な挨拶になるのかな。


「じゃあ、今日からよろしくお願いします」

「よろしくね、ルーチェ」


 手を離した瞬間、温かいもの……可愛らしいピンクの花が掌の中にあった。手品ではなく、ソフィーの魔法のようだ。


「魔法ってすごい……」


 生まれ変わった私は、どうやら魔法のファンタジーの世界に来てしまったようです。







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