田舎娘とは何事だ! 1
そうこうしている内に目的地のハマトヤについた。風景は如何にも田舎というようで、民家と畑が混在し、東には川が流れている。しかし、村の東西は森で被われ、北と南は街へと繋がる道しか無く、どこか孤立しているような雰囲気を感じた。
「ここまでありがとうね、あの有名な勇者様に会えると思っていなかったよ。お礼にこの野菜を何でも持っていって。」
おばあさんは荷車を指しながら言う。
「いや、そんな野菜等という腹にも溜まらない、、、」
「野菜って美味しいですよね。ありがとうございます。じゃあ、このキュウリを一本貰います。いえいえ、本当に大丈夫です。」
俺が断ろうとすると、ハルカに腹を殴られ最後まで言い切ることに失敗した。腹を抑えながら隣でおばあさんと談笑するハルカを見上げた。ハルカは腰まで伸びる長い黒髪と、170センチという高身長で吸いこまれるような綺麗な黒い瞳が特徴的な美女だ。黙っていれば綺麗なのに。『何か考えた?』と目で威嚇されたので、ここまでで考えるのをやめよう。しかし、まぁ一瞬で顔が切り替えられるものだ。女って怖い。
まぁ、ハルカの話はここまでにして、俺の名はカナタ。勇者だ。金髪碧眼のイケメン。女性にモテモテなのだが従者のせいでいつもお持ち帰り出来ない。悔しい。絶対にいつかハルカの目を盗んでお持ち帰りしてやる、と密かに思っている。思っている。
と、こんなことを考えていると、ハルカはおばあさんとの話を終えたようでとても冷たい目で俺を見ていた。
「だから、やめろって言ってるじゃない、、、ですか」
ハルカに凄まれて強く出ることが出来なかった。
「なにを?」
「だから!人の考えを読むことだ、、、です。」
またも失敗した。だって目が恐いんだもの。人間だからしょうがない。
「あぁ、そのこと。女の私に目で威嚇されるだけで強く出ることも出来ず人間だからって言い訳している脳内を読み取ること?下品なことを言わないように手伝ってあげているのにいいの?もし、これをしないと貴方の考えは口から漏れて二度と女性とはお話出来なくなるけど平気?」
「なんでそうなるんだ、、ですか?」
「私が面白くないからに決まってるでしょ?貴方の心読むの楽しくて仕方が無いんだもの。そしたら、私だけ知るか、皆と共有するかのどちらかしかないでしょう?」
「それはおかしくないですかね?」
今回は下からおどおどした様子で聞いてみた。
「わかった。そこまで言うなら、選ばせてあげる。1、貴方の考えを私だけ読み取る……」
おいおい、馬鹿かこのばばぁ。1なんか選ぶわけねえだろ。思春期の俺の気持ちを考えろ!18歳の豊かな想像力をなめるなよ。
決まってる。何があっても2だな。2を選ぶ。
「じゃあ、2番でいいのね?2番は貴方の考えを半径100mに居る人ときょ『一番でお願いします!』」
ハルカが全てを言い終える前に選択肢を変え土下座した。わぁ、地面も暑い~。
「じゃあ今回は許してあるわ。残念。自分の事をイケメンだと思っているカナタの姿を世間に広めたかったのに。そしたら、次の日から『自分のことイケメンだと思っている勇者様よ』って皆から指を指され笑って貰えたのに、残念だわ。」
そう言い終えると、ハルカはいかにも悪魔や魔女がうかべるようなニタっという笑いを浮かべた。
いや、恐いよ、恐い!てか、なんで自己紹介も読み取ってるんだよ!あれは隠しとくものでしょ!
「因みに、他の選択肢は?」
「3は女性から認識されなくなる、よ。」
あ、あぶねぇ。悪魔だよ!悪魔!
危うく俺の人生の目標が消えるとこだったよ。童貞のまま30歳迎えて魔法使いになるとこだったよ。
ハルカはクスクス笑いながら「勇者で魔法使いって、なんかいいわね」といった。
「良くねぇよ!!!」
おれの悲痛な叫びが村にこだました。
「ところでカナタ。あなた、この村に何か違和感を感じない?」
「そうだな、、、」
ハルカに言われ辺りを見回した。うーん、特に何も感じないが。自然豊かで、子供が楽しそうに走り回っていて、鳥や蝶が舞ってる。美しい田舎の村だ。
「それよ!なんで、子供しか居ないの?」
俺はその言葉に反応した。子供しか居ない。確かに大人達が居ない。いや、全く居ないわけではないが少なすぎる。これは確かに、
「おかしいでしょ?」
そして、ハルカは考えたような表情で顎に手を当てる。
なんか、その表情
「え、、、、美しいな」
俺は思わず呟いた。くそ、ゲスな言葉が出ない。悔しい。
「もう一つあるわ。」
ハルカは聞こえているはずの俺の言葉を無視し、つぶやくように言った。
「なんで、この村孤立しているのに平和なの?」
「いや、それはおかしく無いんじゃ無いか?畑もあるし、井戸もあるし、家畜もいる。困る事なんて無いじゃないか」
「それが問題なのよ。ここは『ハマトヤ』『カカタサ』『オオセゴ』という三つの村がそれぞれ稲作、牧畜、農業を担い交易し、街と繋がっている場所だったはず。」
俺は息を飲んだ。この先、彼女の言う言葉が想像できたからだ。
「村が二つ消えているわ。」
「それは、……………悪によってか」
「わからない。それは皆に聞くしかないわ。それより疲れたわ、少し宿で休みましょ」
ハルカはくるっと後ろを向き歩き出した。
「そんなことより「カ、ナ、タ?休むわよ」」
「はい。」
俺は従うしか無かった。置き去りにされた荷物を背負い宿へ向かった。どんな時も冷静に。
その時突風が吹きスリットの入ったハルカのスカートがふわっと捲れる。と、同時に俺は地面に伏せていた。見えた。白いパンツだ。
「死ね」
間髪入れずにハルカの放った渾身の踵落としが顔にめり込んだ。




