現状確認
今回は、設定についての話が多いかも。
目を覚ますと、気を失った酒場であった。しかしどこか違和感を感じる。
そう思って、手を開いたり閉じたりした時気付く。五感がやけに鮮明なのだ。今までのVRMMOは、現実とあえて区別をつけるために、五感を鈍くしていた。それがなくなったのだ。
(どういうことだ?)
思わずメニューを開くと、システムの項目がなくなっていた。
システムには、設定やログアウトも含まれている。それがなくなったのだからたまったもんではない。
「おーい天堂君、起きろー。」
天堂君を揺すると、もぞもぞと起きる。
「・・・うーん、レン、後五分だ。」
「そんなことより問題が起きてるだよ。システムの項目が消えてる上に、感覚が、現実とまったく同じなんだ。」
と今の状況を寝ぼけている天堂君がに言う。しばらくボーっとしていたが、唐突に目を見開く。
「・・・・え?まじで?」
「うん。」
どうやら天堂君の目も覚めたようだ。すると、酒場の入り口からきたさんと、マスターが出てくる。
「おや?君達も起きたのか。」
「あれ?きたさんとマスターは、どこに行ってたんですか?」
自分達が起きたのに気付いたきたさんが、そう声をかけてきたので質問をする。
「マスターと共に、他のこの国のクランの長とも会議をしてきたんだ。」
「なんつったて緊急時だからな。すぐに会議を開かねぇと色々あるってことさ。」
きたさんと、マスターが答える。それもそうだろう。
「それで結局会議ではどう言う話に?」
「まず、分かったことはNPCがまるで本物の人間の様になっている。明らかにプログラムされた動きじゃないと言うのと、定型文じゃないと言うことがそれを示している。さらに、感情も宿っている。」
つまりNPCじゃなくなったと言うことか。意味がわからない。
「それと、マズイことに・・・、同じプレイヤーに攻撃を当てられるようになった。」
今まで同じプレイヤーなどに攻撃を当てても、特殊なエリア以外、全て無効化されていた。しかしそれがなくなった。ここから起こりそうなことは、
「つまり、争い事を物理で解決や、プレイヤーを殺してそのアイテムを奪うことが出来るようになったってことですね?」
プレイヤーは死亡すると、その場所から1番近い安全エリア、つまり町などに復活する。これだけならいいのだが、死んだペナルティーとしてLvが半分になり、その上自身が手に持っていたり着たりしていた装備がその場に残るのだ。かなりの鬼畜仕様である。そしてその特性を生かせば装備を盗めるのだ。ちなみに、今まででも魔物をけしかけてやる方法があった。いわゆるMPKである。
「そう、そういうこと。でもそれが、仮想世界なら良かったのだが・・・・、ここは現実世界なんだ。」
「え!?」
一瞬きたさんの言葉に耳を疑う。何故ならここは、自分達が遊んでいた仮想世界なのだから。
「本当なんだ。痛覚も感じるし、血も流れる。本来血なんてグロいだけなのに、わざわざ追加する必要がない。」
「それに、直接脳に感覚を送るヘッドギアタイプのやつは、痛覚を追加するとショックで死亡する可能性もあるからな。」
きたさんとマスターが説明するのに驚きつつも納得する。
「他にも確定出来る証拠はあるけど、そういうのも考えてここは現実世界と判断したわけ。」
どうやら他にも変わったことが色々あるようだ。そこでふと、あることを思い出す。
「そういえばここにいない他のクランメンバーはどうなったんです?」
「それがどうやら、プレイヤーみんながこっちに来てるようだから探せばどこかにいるんじゃないか?」
「集めた方がいいんじゃ?」
「そうだな、緊急自体だし集めるか。」
マスターはメニューを開き、通信機能をタップすると首を傾げた。
「・・・そういえば通信機能使えねーの忘れてたわ。」
何事と、思いつつも自分もメニューから通信機能をタップする。すると、
ー使用不可ー
特定条件を満たしていません。
と、出る。
「なんだろうねこれ。」
きたさんが、そう呟く。どうやら他の三人も確かめたようだ。
そこで突然、ルビナス王国の兵士が酒場の扉をバタンと開け、ものすごい勢いで入ってきた。ちなみにルビナス王国は、このクランがあり、人間や他の種族が混合で暮らしている大国である。ゲームの説明書には、人間史上主義の国と争っていたようだがそのエリアは今まで解放されていなかったようだ。
「お取り込み中失礼します!ここのクランのマスターはどこでしょうか!?」
「ここにいるが・・・。」
兵士の問いかけに対しマスターは、一歩前に出て答える。
「ルビナス国王陛下からの伝言です!支給、城に来て欲しいとのこと!よろしくお願いします!では!」
兵士はそれだけ言うと、急いで出て行った。それと同時に兵士はやはりNPCではないと、実感した。
「なんだか面倒事の予感がするなー。」
時雨さんがそういう。全くもってその通りである。自分も面倒事の予感しかしないのだ。
「というわけで俺は王様のところに行って来る。きたかぜさん。あとは頼んだぞ。」
そう言うとマスターは、自分の刀を持つと外にでって行った。
その後自分達は、マスターが帰って来るまで今までのことを整理するために話し合いを始めるのだった。