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始まり

VRが発明されてから一刻、やはり人々の夢であるVRMMOが開発された。

世界観はファンタジーで、やはり定番と行ったものであったがやけにリアルで、自由度が高いものであり、爆発的な人気があった。かくという自分も、プレイヤーである。しかし、このゲームが始まった時期はまだそれほど有名ではなく、プレイヤーの数はかなり少なかった。そのものたちはαランカーと呼ばれ、プレイヤーの上位をしめていた。レンもその一人であり、「八重奏オクテット」に所属するプレイヤーであった。


「八重奏」とは、プレイヤーが作ったクラン「ユートピア」の、上位者の中でも最高ランクの魔術士八人をまとめて呼ぶ時の名前である。ちなみに魔術士とは、『魔法』を使う魔法使いの上位ジョブで特定の魔法を研究し極めたものに送られる称号である。


ここでシステムについて説明すると、RPGに定番の自分の能力値を表す『ステータス』に、補助する役割で後天的にも手に入れられる『スキル』、特定の条件を満たすと手に入りジョブを決める『称号』がある。つまり魔術士とはこの『称号』であるのだ。


さて、いつもどおりゲームにログインすると、メニューの通知機能にアップデートのお知らせが届いていた。早速そのお知らせを読むと、


ーvr5.00アップデートのお知らせー

〜アップデート内容〜

・全バグの消滅

・新モブ、エリアの大幅追加

・AIの大幅強化

・その他・・・

〜アップデート日時〜

今日、午後五時

〜運営より〜

あなたを異世界に招待します!

ーお知らせ終了ー


その内容に、首をかしげる。明らかに内容がおかしい。

ゲームにはバグが付き物であり、どんなに直しても全てのバグが無くなることはほぼないといっても過言ではない。なのに全バグと書いてあるのだ。また、修正と書かずあえて消滅と書いてあることにも違和感があるのである。さらに通知が来た当日にアップデートするのも、変な話なのだ。


「おーい」


レンがそんなことを考えていると、同じ「八重奏オクテット」のメンバーの北風さん通称きたさんがメニューにある通信機能で話しかけてきた。


「レン君、おはよう。」


「おはようございます、きたさん。」


と挨拶をいつも通りかわす。きたさんは、時空魔術の使い手で、二十歳くらいの青髪の人族男性アバターを使っている人である。きたさんの時空魔術は、転移や結界はもちろん相手の行動を止めたり出来るものである。時間停止も頑張ればできるらしい。


「アップデート内容見たかい?」


「ええ、見ましたよ。」


やはりきたさんも気になったようだ。


「やっぱりおかしいと思ったかい?」


「そりゃ思いますよ。内容に無理があるように感じますね。」


「そうだね。それに運営からのメッセージに違和感を覚える。いつもは報告の様な内容なのに今回は比喩を使っている。まるで人が変わったみたいだ。」


言われてみればそうだ。今まで運営は、「いつも遊んでくれてありがとうございます」のような、型どうりの挨拶の後に報告のようなものを書いていた。なのに今回は作品のキャッチコピーのような比喩を使ってきたのだ。


「まぁ、その時が来ればわかるよ。」


「そうですね。」


と一旦その件に結論をつけると、ゲームの内容に話は移っていく。


「そういえば砂漠の方に、かなりレアなモンスターが出たんだよね。来るかい?」


「ほんとですか!?あれ、でも砂漠のレアモンスターって・・・。」


「そう!ジャイアントデザートワームだよ!」


「げっ・・・。」


ジャイアントデザートワームとは、その名の通り砂漠に住む巨大なミミズであり、デザートワームの亜種である。この通常のデザートワームは、バスくらいの大きさを誇っている大喰らいなモンスターであるのだが、亜種のジャイアントデザートワームは、長さが150メートルぐらいある上、さらに大喰らいなのである。また、見ためもミミズというよりゴカイのような姿で気持ち悪いのだ。


「さあ、行こうか。」


「え!?ちょっ・・・。」


「いくよ。我、時空の力を用いて」


と、レンの足元に詠唱と共に魔法陣が描かれ始める。


「空間を移動させかの者を運びたまえ、『空間転移テレポート』」


そしてレンは光に包まれるとさっきまでいた場所から文字どうり砂漠に転移した。

そこには、きたさんの他に「八重奏オクテット」のメンバーで回復魔術の時雨さんと、破壊魔術の天堂君がいた。

時雨さんは、二十より若いくらいの赤髪の猫耳と猫の尻尾のついた猫型獣人女性アバターを使っていて、天堂君は十七くらいの金髪のエルフ男性アバターを使っている。ちなみに天堂君はリアルでの同級生であったりする。


「レン君〜!会いたかったよ〜!」


と時雨さんが抱きつこうと、走ってくるのを自分はギリギリでかわす。

時雨さんは、十三ぐらいの白髪の男性アバターを使っている自分が可愛く見えるらしく、事ある毎に頭を撫でようとしたり、抱き付こうとしてくるのだ。


「くぅ〜、なんでレン君は、避けるのかな!」


「いや、そりゃ避けますよ。だいたいリアルではもうそんな歳じゃないんですよ?」


悔しそうな顔で時雨さんが言うのに対し、自分はそう返す。


「ぷぷぷ。」


突然、声がしたのでそちらを向くと、天堂君が笑っていた。


「ちょっ!天堂君!?なんで笑ってんの!?」


「いやー、レンは災難だなって。俺みたいなアバターにすれば苦労はなかったのにな!」


「ぐぬぬ。」


天堂君の言葉に何も言い返せない。その通りなのだから。

と突然、時雨さんが天堂君に近づくと、


「そういえば、天堂君ってレン君の同級生だよね?」


「ええ、そうですよ。」


「ねぇレン君ってどんな子?」


と言う突然の言葉に思わず叫ぶ。


「し、時雨さん!?」


「それはちょっと僕も気になるね。」


と、今まで傍観を決め込んでいたきたさんまでもが会話に参戦する。


「き、きたさん・・・。」


「いやー、だって気になるものは仕方ないじゃないか。」


「そ、それはそうかもしれませんけど・・・。それよりもジャイアントデザートワームですよ!そっちの作戦会議をしましょう!」


と自分は話をそらす。


「そうだね。それじゃあジャイアントデザートワームだけど、魔術で確認したところあっちの方角にいるみたいなんだよね。」


きたさんは、どこまでも続く砂漠の方を指す。


「さて、どのように戦うかい?」


と、作戦会議を始めるのであった。

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