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白崎にとっての異世界  作者: 南京西瓜
2章 宗教国家エクシオン
32/34

これはこれは予想外

 サエからの連絡通り、面会時間は繰り上がった。まずは先行していたサエがエルの別荘を訪れる。


 「久しぶりですね。不自由をかけていますが、元気そうでなりよりです」


 彼女とはエクシオンに着いてから行動を別にしていた。こう顔を合わせるのはそれほど長い時間は経っていないが、久しぶりといえる時間は流れている。


 「久しぶりだね。って素直に再会を喜ぶべきだろうけどね、うん。素直に喜べないよ」


 「エル経由で愚痴は聞いています。面会時間が早まったことは意図しないところですが。この面会の真意はまぁ、態々告げる理由もありませんでしたから」


 完全に組織の人間だなと柚姫は思う。都市連合ではあくまでもサエ個人との協力関係だったが、今はサエはエクシオン諜報機関の一員と振舞う。つまりはもう、個人の裁量でどうのこうの出来ない状態だとうことだ。


 「冷たいねぇ」


 そう言いつつも、柚姫の中でこの後の交渉で聞かれていないことは丁寧に教える必要は無いと方向性を決めることが出来た。実質、先のサエの言葉も親切心で遠回りにエクシオンの態度を教えてくれたのかも知れない。


 「気付いているでしょうが私は既にエクシオン諜報機関としてでしか動けません。ですがまぁ、都市連合の姫についての情報は約束通り出来る範囲で提供はします」

 

 サエは一歩下がった場所に控えていたレティアに携帯端末を投げて寄越す。


 「私とエルの連絡先は既に登録されています。私的な連絡先ですので私達の機関に逐一監視はされていませんが、暗号化もされません。あくまで連絡用とだけと思ってもらったら結構です」


 「助かるよ。それとついでに、神宮寺さんの他に、エクシオンからは誰が面会に随伴するのか、教えて貰っていいかな?」


 「構いませんよ。政府機関の行政と軍部が一名ずつと教会関係からは司祭が……教会については知っています?」


 恐らくエルが言っていた宗教組織のこの国での正式な呼び方だろう。頷くと、


 「司祭と、後はオブサーバーとしてあなたとの第一接触者である私が出席予定でしたが、急遽教会側の護衛として派遣されていた人物が白崎に会いたいと言い出したもので……。美夏の許可もあり彼もあくまで護衛として面会の場に立つこととなりました」


 (白崎に会いたいか)


 サエの言葉が終わると同時に、面会に備えて共有したままの思考が伝わる。朧だ。


 (この世界で勇者とも、異世界人とでもなく、あえて白崎に会いたいと言うか。シェナ、津宮はこれまでこの世界と干渉したことはないのでしょう?)


 (はい。しかし津宮に魔女が駐留してまだ長くありません。過去のデータの検証も不十分ですし、人一人程度が偶然世界を超えても痕跡なんて残りもしません)


 津宮には神隠しが古くから発生している。その主な原因は自主的な失踪や誘拐、遭難など大部分は事故や事件なのだが稀に神様が気に入った人物等を人知を超えた手段で自分のものにする、文字通り神様が絡る例も存在する。それに関しては白崎が把握しているのだが、文字通りの神隠しよりさらに少ない数だが本当に原因不明の神隠しが発生する。これは白崎ですら頭を抱えていたのだが、異世界の存在を知った今は異世界召喚などで違う世界に行ってしまったのではと思うようになった。面会を希望するその護衛とやらもそうだろう。

 

 (だがまぁ、白崎を知っているなら、大人しくしているほうが無難と判断出来るだろうから無害と判断してもいいんじゃないか?)


 と、銀百合。確かにそう判断できないこともないが、柚姫は別の判断をしている。その判断とは、


 (白崎がいると知って進んで声をかけるのって美夏のような白崎には絶対服従な人か、白崎に対して好奇心旺盛な人だよ。普通の人は白崎に関わろうなんてしないしね)


 (触らぬ白崎に祟り無しですね。今から対策なんて出来るわけ無いし、せいぜいまともな好奇心を持った人であることを祈ることしか出来ないか)


 朧が同意する。それと同時にエルが、この面会で使用予定の応接室から顔を出し準備が出来たことを告げる。


 「先に行ってもらって結構ですよ」


 サエの言葉に甘え、柚姫は応接室に向かう。視界はレティアと共有。銀百合と朧のレクチャーを受け、レティアは柚姫との視界共有時の視線をある程度は理解出来たため、買った当初の様に腕を掴んだ誘導は不要となった。都市連合から逃げる時の視界共有はあくまで非常時だったため、お世辞にも良いものではなかった。その状況でも勇者を圧倒出来たのは彼の強さか勇者の未熟さか。


 応接室に設置されたソファーに座るのは柚姫のみ。レティアはその背後で起立。朧と銀百合、シェナは隣室で待機。万が一何かあったら壁をぶち破って乱入する算段である。エフィーはカイと供に生活に宛がわれた部屋で待機。緊急時はカイが彼女の護衛をする。


 待つこと数分。最高に不機嫌面したエルが扉を開けた。言葉を発することはなかったが、なるべく早く話しを終わらせてくれと言わんばかりだった。彼女の後ろから続いたのは久しぶりに見る美夏と背広と制服、祭服の男が三人、そして急遽参加が決まった護衛の男なのだが、


 (これはこれは予想外だね)


 その男に銀百合と同じ特徴の獣の耳と尻尾があるため、柚姫は驚嘆の声が出そうになったのをぐっとこらえる。


 「では、何か用があるなら呼んでください」


 護衛の男の後ろにいたサエが入室したのを見て、エルがそくさくと退室。扉が閉まる音を合図としたかのように口を開いたのは美夏ではなく護衛の男だった。


 「白崎と聞いていたが……あの化け物ではないのか?」


 化け物とは柚姫の親である椿姫のことだろう。白崎の歴史はもう数百年となるが、白崎が代名詞となる人物は二人しかいない。柚姫とその親の椿のみ。


 「その化け物の息子だよ。一応、白崎の現当主なんだけど……知らない?」


 「知らないな。とういことはあいつはくたばったか?」


 「僕の親がくたばるような生き物に見える?」


 見えないなと。護衛の人狼は肩を竦めた。柚姫のことを知らない。このことからこの人狼がこの世界に来たのは二十年以上前のことになる。椿姫に子供が出来たことは一大ニュースとなっていた。人狼という妖怪の類なら絶対に耳にしているはずだ。


 「それで、わざわざ僕に会いに来たのに自己紹介も無しなの?」

 

 「今はまだ。先に本件を済ませてから改めて。両者、色々と聞きたいことがあるだろうし、折角違う世界で同胞がすぐそばにいるのだ。彼女を交えて話がしたい」


 レティアの視界に映る男の視線は壁の向こう側を見ている。サエからの報告と、この別荘に残る匂いから同じ人狼の銀百合がいると確証を持っての言動だろう。思考共有で銀百合の憂鬱が共有される。


 (面倒だなぁ。あぁ、面倒だ。人狼のなかでの最も面倒な分類な奴だあいつ)


 (今回面倒だと逃げた方が後々面倒臭いと思えるけどね。まぁ、銀百合。逃げないでよ)


 付き人にそう釘をさしてから柚姫は今まで大人しくしていた美夏に声を掛けた。


 「君とは本当に久しぶりだね、神宮寺さん。色々と感謝しているよ」


 「いえ。心配は無用だったかも知れませんが。しかし、こうしてゆっくりとお話が出来る機会が出来ているので正解だったのかなと思っています」


 礼儀正しく頭を下げる美夏。そんな彼女を司祭は面白くなさそうな表情をしていたが、少し柚姫が見えない瞳をそちらに向けると、司祭らしい柔和な表情を貼り付けた。

 

 「サエさんから聞いた話なのですけど、高浜くんと戦ったのですか?」


 高浜とは誰だと思ったが、この世界で交戦した人物で津宮の苗字を持っていそうなのはあの銃を嬉しそうに使っていたあの勇者だけだ。今度はちらりと軍人と文官の男達を見ると、根堀り聞いてやると言わんばかりの興味を示していた。次にサエを見るが彼女は無表情。情報を読み取ることは出来ない。だから後腐れなく柚姫は答える。


 「サエさんからの情報とおりだよ」


 サエとは約束で供に行動する期間で彼女達が知りえた情報に制限は掛けていない。彼女がどう言う報告をしたかは知らないが、虚偽の報告していても柚姫の責任ではない。


「それについて、確認したいことがある。少しいいかな?」


 初めに柚姫に質問を投げかけたのは軍人の方だった。

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