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白崎にとっての異世界  作者: 南京西瓜
2章 宗教国家エクシオン
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印象通りとは恐れ入る

 神様とはどんな存在かと聞かれて持論を熱く語ることが出来る人間は限られらているだろう。柚姫は語れる側の人間だ。彼にとっての神様は土地神ことである。各地の神社に祭られる産土神を氏子達がしっかりと管理しているか。それの調査を行うのが柚姫の津宮での白崎としての主な仕事である。故に神様とは土地と氏子を見守る存在だ。


 「なんでいきなりそんな話を?」


 何の前触れも無くいきなり語り始めた柚姫に怪訝な視線を向けたのは彼より少し年下の少年だ。彼の名前はカイ。銀百合と朧と同じく異世界調査チームとして派遣されたメンバー。ノブハを脱出した際に合流した。津宮人らしい名前だが、彼は異世界人である。正確には数年前の騒乱で正常な交流を持つようになった異世界のストリートチルドレン。銀百合ほどの派手な力は無いが、異世界渡航に関してはそれなりに数をこなしているせいか、その世界に溶け込むことが得意なため今回のチームに銀百合から抜擢された。ということになっているが半分は建前、残りの本音は彼女のお気に入りだから。


 「この後に会う予定の勇者が僕をよく知っている理由だからだよ」


 ノブハを脱出した後、柚姫たちは当初の予定通りエクシオンへ向かった。サエが上手く手配していたお陰か、外出不可の制限こそあるものの不自由無い生活を送れている。その生活の拠点となっているこの住居はエルの実家が保有する別荘の一つで、実質的に彼女の家である。


 「神宮寺美夏、だったか?これから会う勇者は。なんだ、俺もその会合に出席しろと?」


 自分のことを学が無いストリートチルドレンと自負しているカイは、会合などに出席してもあまり意見を述べることは無い。以前の異世界騒乱に関わった時は、仲間に政治家見習いとも言える人物が全て担っていた。


 「是非ともして欲しい、かな。小難しい話をするわけじゃないからね。まぁ、それはさておいてだよ。銀百合とはどうなの?」


 柚姫には目視することは出来ないが、カイは少し柚姫から視線を外し、僅かばかり赤面させる。彼にとって銀百合とは特別な存在である。と言うのも、カイが初めて津宮の世界に転移した日の夜、彼は銀百合に寝床で食われた。生きることに必死だっただったカイが、初めて女を知ったのが彼女の体だから。


 銀百合は銀百合でカイのことを気に入ったらしい。以前理由を聞いてみたが、


 「なんでだろうな。けど、なんかこう、守ってやりたくなるというか、母性が刺激されるというか……」


 みたいな返事が返ってきた。要は本能的にカイのことを気に入ったのだ。カイは基本、津宮と別の世界で生活しているが、津宮にもよく顔を出す。その時、銀百合が嬉しそうにしているのは誰もが知っていること。


 なら付き合っているのかと言えば違う。柚姫としては恋仲になってよろしくやれば言いと思うのだが、どうもカイが後一歩踏み込んだ付き合いを拒んでいる感じだ。


 「別に……いつも通りだ」


 「そう。あ、飲み物のおかわり貰おうか?」


 柚姫はそれ以上突っ込んで聞くつもりはなかった。人間関係なんてなるようにしかならないのだから。ちょうど、カップ内のコーヒーが無くなっていることに気付いたので、話題を変えるためにそう切り出した。一応、柚姫は仲間の視界は肉体接触がなくても視界と思考を共有するだけの繋がりは築いている。そして、この世界ではエルがもっとも深い繋がりが出来ている。


 「あのさ、コーヒーのおかわり程度でいきなり頭の中で呼びかけないでよ。びっくりするじゃん」


 思考共有でコーヒーの追加をエルにすると、私室から彼女が出てくる。撃ち抜かれた腕は既に完治している。


 「それにさ、なんの為の奴隷のレティアなのさ」


 そう文句いいつつも、このリビングに備え付けてあるコーヒーメーカーに向かうあたり、彼女は根は世話焼きなのかもしれない。


 「あいつに世話してもらう気にはなれないからね。僕の個人の気分だけで、お嬢様を使うことになり大変申し訳なく思うよ」


 柚姫がそう言うと、エルは面白くなさそうにそっぽ向いた。彼女の第一印象は不良貴族娘だったが、その印象は大方間違っては無く、エルはエクシオンにおける貴族階級とも言える家の令嬢だった。エル自身、令嬢として見られることが嫌だったらしく、服装は少し崩して着ているし、耳にピアス用の穴は開けているは、口調は決して丁寧な言葉を使おうとしない。だが、令嬢として幼い頃に仕込まれた教育のせいか、彼女の振る舞いの芯には気品さがある。


 「私さ、お嬢様扱いされるの嫌いなんだって一応言ったよね」


 自分もコーヒーを飲もうと思ったのか、カップを三つ持ってきたエルはソファーにどかりと腰を落とす。その動きは一見乱雑だが、カップを持ち上げる動作は優雅である。


 「言ってたね。今の仕事も自分の境遇に反発してやってるのかな?」


 「否定しないよ。まぁ、あんたがいつまでこの国にいるか知らないけど、おのずと理解出来るかもね。私の気持ち」


 単に自分の性格と合わないみたいな単純な理由ではなさそうだ。と、ここで今まで黙っていたカイが質問と手を挙げた。


 「この国の基本について教えて貰っても?」


 「基本ねぇ。まぁ簡単に言うと宗教国家かな」


 傭兵の国の次は宗教の国かと思いつつ、柚姫を思考の共有を行う。


 (エルのエクシオン基本講座が始まるから、みんなに共有するよ)


 共有相手は銀百合達の津宮組とレティア姉妹。彼女達は今この別荘の私室で柚姫に頼まれてあることをしている。そのあることとは、


 (エクシオンの基本ねぇ。サブカルチャーが津宮の二次元文化に汚染された国だろ?)


 うんざりした銀百合の思考からわかるように、以前エルの発言からこの国のサブカルチャーはいかがなものかと思い、彼女達にエルの私物含め可能な範囲で紙から映像にいたる全てのメディアを見てもらっているのだ。銀百合もそう言ったものは見たりするが、


 (こっちに来てからこればっか。胸焼けしそうでたまらんさ。なぁ、カイ。今夜は私の癒しになってくれよ)


 彼女の思考は柚姫経由でみんなに共有される。カイはあえて返事しなかったが、否定しないということは肯定だと銀百合は今夜は彼を小脇に抱えながらベッドに向かうだろう。


 (話を戻します。宗教国家と言う割にはエルと数日生活をともにしているが、あいつが宗教らしき行動をしているのは見たことが無いな)


 朧の思考。確かに柚姫もエルとサエとはこの中で一番長い付き合いだが、彼女達の生活に宗教らしさは全く無い。サエは元々は都市連合の人間だから宗教臭くないのは理解できるが、エクシオンの人間であるエルにもそれがない。生活態度にも、そして今住み込んでいる彼女の家が保有するこの別荘にも。


 (諜報員だからじゃないか?私レベルの学でもエクシオンの宗教はある程度は知っている。そんな奴が他国に侵入してもすぐばれるだろ)


 レティアの考えも一理ある。その答え合わせをしようと、質問主であるカイがエルに聞く。


 「宗教、と言うわりにはお前からは宗教みたいな感じはしないな」

 

 「嫌いだもの」


 エルは即答した。その口調は心の底から嫌っている声であり、今後一切関わってやるかといわんばかりだ。


 「スパイしているからとかではなく?」


 「嫌いだから宗教しなくても文句言われないスパイになったの。あ、いや。これじゃ誤解されるか。訂正、私は宗教の教え自体は好きよ。けど、この国にとっての宗教って権力みたいなもんでね。それが嫌だから信者無いみたいな感じ」


 エルの回答に真っ先に反応したのは尋ねたカイ自身だ。彼は思考共有で短く、


 (面倒くさいな)


 そう斬って捨てた。面倒くさいのエルではなく、宗教を用いて権力を得ているこの国の体制についてだろう。彼はそう言うのを嫌う。特に国家の主権の象徴である政府機関と仲違いしているなら余計にだ。だから柚姫は聞いた。


 「この国の宗教団体は政府と同じ権力を持っているのかな?」


 「と言うのは?」


 「宗教団体が政府と同じぐらいに内政や外交に関する決定権や交渉権を持っているかってこと」


 これは柚姫がカイから聞いた話だが、どの世界でも政府以外の団体が政府並みの権限を持っていると面倒しか起こらないとのこと。それはそうだろうと柚姫は思っている。白崎一族も津宮では国内外問わない交渉権や超法規的な行動を行うが、それはあくまでも妖怪や超常現象に関するのみであり、それ以外の権限は全く持ち合わせていない。故に津宮政府とは上手く共存している。だが、共存出来なかったら?答えは明白だ。さて、エルの答えはと言うと、


 「柚姫。あんた知ってるかどうか知らないけどさ。勇者召喚後のスカウトの場には政府と宗教の人間がいたんだよね。この例だけで理解してくれる?」


 

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