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白崎にとっての異世界  作者: 南京西瓜
1章 都市連合
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何も客は玄関から来るとは限らない

 あれから共有の能力を解除し、ついでエフィーの拘束を解いた。


 「少し時間あげるから心の整理でもしなよ」


 そう言って心の整理や状況の飲み込みのためにレティアに時間を与えた柚姫。そんな彼の横にレティアの拘束を止めたサエがやってきた。

 

 「次は姫と言うことになりますが……後先考えて行動していますか?」

 

 「してるよ。というか都市連合からすれば僕は邪魔者みたいだし。姫様殴りに行こうが、大人しくしてようが、死んだままでいようが変わらないだろうね。ならば僕が一番したいことをするだけさ」


 「そうですか。わかりました。では、私個人としてあなたに協力しましょう。私も姫に処分されそうになった身です。恨み言の一つや二つぶつけたいものですから。あの姉妹の処理が終わったら少し情報収集をします。ですが今回のこの契約延長について先に述べておきます。最後まで契約、あなたの言葉で言う約束を守れないかも知れません」


 「理由は?」


 事前に約束が守れないと言ってくれるのは大いに構わない。だがやはり理由はそれなりに必要だ。


 「表のメイドの動き次第です。私がエクシオン、つまり今の国に逃げる際に裏メイドの情報は全て抹消しましたから顔は割れていないと思いますが、表のメイドも荒くれ者の傭兵から姫を守る存在です。姫に対する不振な動きは直ぐに察知される可能性があります。ですが、ゆっくりと丁寧に動く時間もありません」


 サエがちらりと妹を抱きしめるレティアをみた。彼女は表メイドの特例で奴隷から解放されたし、都市連合の暗部に関わりもした。しばらく監視されている考えるのが妥当でレティアの異変を感知すれば、メイド側は何かアクションを起こすはず。


 「それに私はエクシオンの諜報員です。本国に迷惑は掛けれません。その辺りはご理解いただけれたらと。そしてあなたを手伝う立場として私が提示出来るプランは二つです。まず一つは今の段階で出来るところまでやってみる。もう一つは今はこの国を離れ、万全の態勢が整い次第、姫を殴りに行く」


 前者のプランの問題点は先ほどサエが述べた通りだ。ならば後者はどうだ?行き当たりばったりの前者よりは確実だが、この国を離れてどこに行くと言うのか?


 「この国を離れて、それで君の国にでも来いとでも?」


 「はい。私としては個人的にあなたを匿いたいですが、あなたは勇者として召喚された人物です。上に対しては一報を入れますので、どのような待遇になるか明言出来ませんが……」


 サエは少し間を空けてから、


 「エクシオンで一番長く接した現場の人間の意見として言葉添えはしましょう。約束通り、姫を殴る機会を設けるよう手は回します。これでも私、諜報員の中では顔が利くほうの人間なので」


 本当なのかと確認の意味を込めてエルの方を見る。するとエルはどこか誇らしげに、


 「お偉いさんだよー」


 と答えてくれる。


 「あくまで現場組の中でトップにいるだけで、組織全体で見れば中間管理職です。それでどうしますか?」


 どうしようかなぁ、と柚姫なりに両者のメリット、デメリットを天秤に掛けているとサエの携帯端末が鳴る。仲間からの連絡かなと思っていると、


 「どうやら後者を選ぶ方が良いかもしれません」


 「理由は?」


 嫌な予感がするな思いながら柚姫が尋ねると、


 「メイドが動いたそうです」


 「私は言われた通り、誰にも知らせてないぞ!」


 尋ねるまでもなく、レティアが大声で叫ぶ。メイドが動いたことから、レティアが何か連絡したのだろうと思いはしたが、深く疑うつもりはない。


 「ユーミというメイド以外に他の者があなたを常に監視していたみたいですね。無論、その可能性も考えていましたが、どうやらあなたは問遠目に見ても不振な動きをしていたみたいですね。今ならまだ逃げの手を打てますが?」


 「それしかないと思うけどね。サエ、準備をお願い。それでレティア、妹はどうする?僕としてはここに置いていっても、一緒に連れて行ってもいいけども?」


 「連れて行くに決まってるだろうが」


 「だろうね」


 エフィーの同行は温情でも何でもない。この都市に残していけば姫に何をされるか予想出来ない。最悪、口封じの一環として殺される可能性もある。そうなってしまえばレティアを縛るものがなくなってしまう。


 「なら手伝って貰いますよ。レティア、あなたが乗っていたバイクですが……」


 サエを陣頭に逃走の段取りをしようとしたところで、インターフォンが部屋に鳴り響く。


 「もう少し早く伝えて欲しかったものですね」


 サエが大きくため息をついた。


 「さて、どうしましょうか。メイド達はどこまで把握しているのでしょうか?」


 メイドが動いた。これは間違いない。ならばどうしてメイドが動いたのか?その理由がレティアがいつもと違う行動をしたから、何かしら彼女が柚姫殺害に関して外部に漏らしているのではないかと疑問を持って確認のため動いた。これなら口先で誤魔化せそうだが、もし柚姫が生きていると何処かでその情報を掴んだため動いたのなれば厄介極まりない。


 「けどまぁ、出るしかないね」

 

 「ですね。さて、口だけで帰ってくれたらいいのですが」


 柚姫の言葉に、あまり自信がないような仕草をしながらサエは備え付けの受話器を取る。


 「どちら様でしょうか?」


 「名乗る前に確認を。あなたはエクシオンのスパイで間違いないでしょうか」


 受話器からこちらの素性を当てられ言葉に詰まるサエ。その沈黙を肯定と捕らえたのか、


 「この都市で何をしているのか、じっくり吐いてもらいますよ」


 その宣言と同時に壁際に立っていたエルが悲鳴を上げて床に倒れこむ。


 この状況でまず初めに動いたのは柚姫だ。エルが何らかの攻撃で視界として使えなくなったと知ると、彼はこのなかで最も共有の効果を発揮できるエフィーの視界を共有する。ちょうどその視界はエルが立っていた場所を見ていた。壁には穴が開いていて、倒れているエルは腕の肉の一部がえぐられていた。


 (狙撃?)


 壁の穴の先の床にも穴があることからその考えは間違いでない。だが、この部屋は大きな窓は無く採光用の小さな窓があるだけで、それもカーテンで覆っている。床と壁の穴の先、つまりはどこかしらの上階から狙うしても中の様子は見えないはず。だが、結果としてはエルは負傷した。サエが駆け寄り手当てをしている。命に危機があるような怪我ではないように見える。


 (まぐれ?それともわざと外した?)


 柚姫は銃火器についてそれほど詳しい訳ではないが、ともに仕事する軍隊のチームからある程度のレクチャーは受けている。壁を貫きつつも人の肉の一部を抉り取る得物となれば対物を目的とした大口径の銃となる。


 ここまで考えたときに第二射が来た。着弾。今度は治療中のサエの足付近に弾丸による穴が出来たが体に命中弾はなかったようだ。


 「レティア。この世界に大口径の個人携帯用のライフルってある」


 「対物銃のことか?あるけど、わざわざ個人携帯を可能にするほどコンパクトなものはこの世界にはねぇよ」


 妹に覆いかぶさりつつレティアが答えてくれる。


 「ならば壁の向こうにいる敵を撃つにはどうする?」


 「車載の重機関銃で撃ちまくるか、貫通力強化の魔法弾を使って狙撃だ。無論、普通の狙撃銃でな」


 魔法弾。姫の腕がすぐに治っていたから魔法みたいなものがあると思っていたが本当にあるとは。


 「だから、私も想像できねぇ。あの弾痕は魔法弾にしてはでか過ぎるし、かといって重機関銃でこんな単発射撃が出来るはずがない」

 

 前の職業からしてこの狙撃に違和感を覚えるレティア。だが、この世界の銃火器について知識があるレティアが違和感を覚えたからこそ、柚姫は確信出来た。


 (これは勇者による対物ライフルによる狙撃だね。確か読み漁った異世界転生系主人公の能力の中に元の世界の兵器を使える能力ってあったよ)


 読み漁ると言っても、柚姫は物語を読んではいない。付き人的な人物三人に読んでもらい内容を共有しただけだが。


 (勇者となれば壁越しにこちらの位置を大体把握して撃ち込むことなんて容易いか)


 どんな能力か知らないが、先ほどか撃ちこまれる弾丸はエルとサエの近くに着弾している。狙い自体正確ではないが、何かしらの能力でサエ達を把握しているのは確かだ。


 撃ち込まれた弾が十一発になったところで射撃は止まった。柚姫の知識が正しかったら弾倉の弾を全て撃ち切った筈。


 「リロードタイムだよ。どうする?逃げる?」


 「逃げましょう。このままここに篭ってもいずれは体が吹き飛びます。エル、動けますか?」


 「一応。ものすごく痛いけど」


 いつもの口調のままだが、エルの声は必死に痛みを堪えている。悲鳴を上げて暴れないあたり、諜報員の端くれと言ったところか。


 「逃げる手立ては?外に止めたバイクもあるが、まぁ使えねぇだろうし使えても二人乗りだぜ」


 「近くに私達の車がありますのでまずは……」


 そこまで行きましょう。サエがそういう前にこの部屋の壁が爆音とともに吹き飛んだ。

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