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白崎にとっての異世界  作者: 南京西瓜
1章 都市連合
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見た目だけが恐怖では無いんだよな

 指定された住所でバイクを止めて、一番にレティア目に入ったのは光沢の無い灰色の髪の女だった。


 「あぁ、あなたがレティアですね。お待ちしていましたよ」


 彼女のよく通る声は少し前に端末越しに聞いたものと同じであった。ならばこいつが誘拐犯に違いない。彼女はバイクのハードポイントに収納してあるハンドガンに手が伸びかけた。だが、それより先に誘拐犯の手に握られているハンドガンがこちらに向けられた。


 「私は撃つつもりはありません。あなたが撃たないならですが?」


 「あぁ、いや、すまない。傭兵なもんでな。妹誘拐した私の敵と思うと本能的にな」


 レティアが言うと灰色の髪の女こと、サエはハンドガンを降ろす。彼女のそれはこの町でごく普通に売られているものだった。使用武器からこの女の素性を探ろうとしたが、サエは国家諜報機関の構成員である。簡単に尻尾を掴めるはずも無い。


 「それで、妹は無事なんだろうな?」

 

 「えぇ、もちろん。妹さんはあなたに騒がれることなくここに来てもらうための餌ですから。危害を加える理由は特に持ち合わせていません」


 「そうかい。だけどあんたと私は初対面だ。こんなことしてまで私に会う理由が検討つかない」


 「でしょうね。ですが、あなたはもう気付いているのでしょう。いえ、そうあなたが理解するようにメールを送ったわけですから」


 無表情な表情を貫いていたサエだが、このときはほんの少しばかり口の端を上げた。気付いているのに理解しているに受け入れようとしないレティアの言動がほんの少しばかり可笑しいと思えたからだ。


 「まぁ、どうぞ中に。あなたの目で確かめてみてはどうでしょうか。そうすれば嫌でも受け入れるでしょう」


 サエが玄関のドアを開けた。なんの変哲のない一軒家。ドアから見える内装も普通。だが、レティアにはこの扉が牢獄の入り口に見える。入ってしまったらもう二度と戻ることができないような。


 「けどな……」


 しかしこの家の中には唯一の肉親である妹がいる。逃げるなんて選択肢は無い。逃げてしまえば、それこそ自分の今までの人生を全て否定することになってしまう。


 意を決して玄関に向けて一歩を踏み出す。手は無意識にさきほど収納したハンドガン周辺に行ってしまうが、それを見たサエは武器の回収はしようとはしなかった。武器を携帯しようがしまいが、結果は変わらないよ分かっているからだ。


 「入って突き当たりの部屋です」


 レティアが玄関に入ったのを確認してから玄関を施錠しつつサエは口頭で妹の居場所を告げる。すると吹っ切れたのか、先ほどまでおどおどしていた足取りから一変し、かつかつと廊下を進むレティア。


 「あぁ、その部屋ですよ」


 言われた通り突き当たりにあるドアに手をかけると、少し離れた位置からサエが告げる。自分の心臓の鼓動がやけに大きく響いているが、緊張しようが、言い表せない恐怖を感じようが、もう結果は変わらないのだ。短く息を吐いてからノブを回しドアを開けた瞬間だ。レティアの左のつま先に何かが乗った。何事かと視線を下にすると、誰かが自分のつま先を踏んでいた。慌てて視線を上に戻そうとしたときだ。右の頬に強烈な衝撃を受けた。


 「うわー、痛そ」


 誰だか分からないが女性の声が聞こえたレティアだが、それが誰でこの部屋に何人いるか把握する余裕なんてない。つま先を踏まれた上での打撃。本来ならよろめくことなどで威力が減衰されるのだが、足を固定されたことで、打撃のエネルギーが逃げる事無くレティアを襲う。上半身が大きく左後ろにのけぞり、しりもちをつく前に後頭部を廊下の壁にぶつける。


 打撃された頬は激しく痛み、後頭部をぶつけたことにより脳を揺らされたのか眩暈もする。だが、その声だけはすんなりと耳に入ってきた。


 「やぁ、久しぶりだね、レティア」


 気付いていた。理解していた。覚悟はしていた。だが受け入ることが出来なかった。だってそうだろう。自分の手で殺して、その死を複数人で確認した男が目の前でたっているのだから。


 「……柚姫」


 やっと搾り出した声で眼前の青年の名前を呼ぶ。


 「あぁ、よかったよ。もしかしたら僕の名前忘れられたかと思っていたよ。サエさん、そいつ部屋の中まで連れてきてよ」


 青年こと、白崎柚姫はそれ以降の暴力は行わず、すんなりと部屋に戻っていく。レティアはサエに強引に立たされる。


 「歩けますか?」


 肯定するように自分の足だけで歩いて見せる。そしてその部屋に椅子に縛られている妹を見つける。


 「エフィー!」


 最愛の妹に駆け寄ろうとしたのは反射だった。だが、その足も振り返った柚姫に睨まれて止めてしまう。


 童顔で、男の癖に可愛い顔つきの柚姫が睨んだところでそれほど恐怖を感じない。だが雰囲気は本能的に恐怖を与える。それでもレティアは傭兵だ。相手の威圧なんて慣れているのだが、今のレティアの心理状態が最悪だった。殺したはずの男が目の前にいる。そんなレティアの常識に当てはまらない人物がこれからの自分と妹の人生を握っているのかと思うと強く出れない。

 

 「お姉ちゃん……。私は大丈夫だから」


 エフィーが少しばかり力なく自分の無事を伝えた。外見も大きな傷なども見受けられない。


 「まぁ座りなよ。君のこれからについて言いたいことがあるんだよ、レティア」


 言いたい事か。話し合いではないんだなとレティアはサエが整えた椅子に腰を下ろした。

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