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白崎にとっての異世界  作者: 南京西瓜
1章 都市連合
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ギブアンドテイクの精神で行こう

 拳銃を構えるサエに対し、柚姫はエルを盾とする位置取りになったこの状況。柚姫はサエが次の行動を起こす前に、けん制のためこう告げる。


 「動かないでよ。下手に動けば痛い目みるのはこの子だから。大人しく僕の質問に答えてくれるなら、二人とも五体満足で解放してあげるよ」


 せっかくだと、柚姫はエルの向きを握手したままの右手を捻り上げる形で百八十度変え、視界を共有しサエを見た。


 エルにサエと呼ばれている女性は上品な野生的な女性だった。光沢の無い銀色のショートカットの髪は綺麗に手入れされており、アイアンサイトごしの顔は凛々しい。体つきはスレンダー、だが訓練され鍛えられた身体だと分かる。


 対して、記憶の中で見たエルの特徴は大きなサイドテールだ。少しばかり目つきが悪く背丈も小柄。柚姫の彼女に対する第一印象は不良貴族の娘だった。ちなみにサエの印象はパーティ会場にいそうな暗殺者だ。


 「目的は何?」


 思考を共有すれば分かることだが、柚姫はあえて口頭で問うた。理由は敵意の程を知りたいから。


 「えーと、さっきも言ったけどたまたまここを……痛い、痛いって!」


 明確な嘘をエルが口走ったため、柚姫は右手に力をぐっと入れた。ぎしりと骨が軋みそうな力加減で。


 「目的は何?」


 再度、今度は見えない目でサエの方を見た。君が答えてと。しかしながら、サエは沈黙を貫いた。だがそれは答えられないと言うわけではなく、どこまで答えたらいいのかを整理しているのだろう。そう思っている時点で、彼女達は柚姫に対して何かしら言えないことをたくらんでいる。彼はそう判断した。


 「答えられないの?」


 脅しの意味もこめて、柚姫はエルの拘束している右肘に左手をゆっくり当てる。何をされるのか悟ったエルが叫ぶ。


 「言うから!言うから!そばにいてあげてって頼まれたの!」


 「君に聞いてないよ。サエさん、だっけ。本当にそう?嘘ついてない?」


 「間違いない。美夏が上層部に懇願し、私達が派遣された」


 共有する視界で、サエが拳銃を下ろし収めたのを確認した柚姫は、エルの拘束を解いてやる。


 美夏。この世界に来た学生の中で、白崎について知っていた神宮寺美夏のことだろう。柚姫のステータスの低さを気にして、サポートの願いをした。それが彼女達二人がここにいるきっかけで、任務の一部に過ぎないち考えるのが自然というものだ。


 「エルの精神攻撃にカウンターした以上、下手にだんまりは良くない。そう早く判断するべきだったな。近くに車を止めている。そこで話をしよう。それと君は目が見えないと聞いている。エル、介助してやれ」


 白崎の末代は盲目。これは白崎を知るものにとっては周知のこと。美夏経由で聞いていてもおかしくはない。


 「よろしくね、エルさん」


 にっこり笑い手を差し出す柚姫に、先ほど痛い思いをしたエルが心底嫌そうな顔をしたが、サエに黙殺される。


 「勝手に心読まないでよ?」


 「君が何もしなければね」


 「しないよ。はぁ、美夏から柚姫が精神系統の能力持ってる聞いていたらこんなことしなかったのにーだ。と言うか、簡単にカウンターされたら自信なくすなぁー」


 見た目通り、よく喋る女だ。柚姫は渋々と差し出された手に掴まれ思う。諜報機関所属の人材とは思えないが、こちらの毒気を抜くための人選とも思えなくない。それに、この世界の住人がどれぐらいの割合で魔法や超能力と言った特殊能力を持っているか分からないが、精神操作や読心が珍しいとしたら諜報機関にスカウトに身を置く理由は十分だ。


 共有した視界の先で、サエが耳に手を当てているのに柚姫は気付く。仕草としては耳に装着するハンズフリー通信機器を操作しているようだ。


 「誰かに通信してるの?」


 僅かばかり、エルの握っている手に力を入れて尋ねると、


 「上司に報告してるの。あんたを確保、あーいや、接触したってね。隠してもばれそうだから言うけどさ、命令は基本は監視と美夏の評価とステータスの評価が一致しないあんたの情報収集。異常、もしくは隙があれば接触せよ。つーかさ、いちいち強く握んのやめろ」


 その手をぺちぺちと叩きつつ、エルは素直に答えてくれた。案内された車両はやはり軍用モデル。だが先ほどまで乗っていた装甲車と違い、こちらはジープ。後部座席に座り、その横にエルが続く。しばらくして運転席にサエがやってきてエンジンを回す。


 「さて、上司にあなたと接触した旨を伝えました。そして指示はこうです。可能な限り情報を集めろ、だが穏便に、です。ある程度の権限も与えれました。そこで私はあなたに提案します。ギブアンドテイクの関係になりませんか?」


 アクセルを踏み進みだすジープ。それのハンドルを握るサエはバックミラーごしに柚姫を見る。


 「変な駆け引きは無し。と言うよりも、あなた相手では約束、言わば契約で利害を明確にした方が得るものが大きいと判断しましたが、いかがでしょうか?」


 「約束と言う言葉を持ち出したからには、破ったらどうなるか分かってる?」


 「破る気はありませんよ。万が一、約束が履行出来ない場合は約束を破棄する宣言をしますよ」


 破棄とはよく分かってるなと、彼は感心する。柚姫は約束を破られることは大嫌いだが、例外として素直に約束を守れそうにありませんと前もって言ってくれる人は素直に許してきた。だから、


 「そこまで言うなら約束しようか。条件はこちらで提示しても良い?」


 「どうぞ」


 「とある奴隷をぶん殴りたいから、そいつを見つける手助けをしてくれないかな?見返りはそうだね……何がいい?」


 何その条件と、隣のエルが呟いていたが、サエは合点がいったのか無言で少し間を置いてから、


 「行動を供にする間に得たあなたに関する情報は制限無く私達のものとする。で、どうでしょうか」


 つまりは、行動をを供にする間に、柚姫が何か能力を使ったとしても、柚姫はサエ達に今のは見なかったことにしてとは言えなくなるということだ。見返りが少ないなと思うが、諜報関連の彼女らにしてみれば提示した条件が簡単過ぎたのだろうか。そしてサエは欲張らず、見合った見返りを求めてきた。

 

 「いいよ。サエさん、君とは上手くやっていけそうだよ」


 「私も、あなたほど素直で分かりやすい人は初めてですよ」

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