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白崎にとっての異世界  作者: 南京西瓜
1章 都市連合
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特別だから体を張れる

 柚姫が約束を事ある度に出すのは親の教育が関係している。自由気ままと言う概念を人型にしたような親だが、約束だけは破ったことは無かったし、破るなと柚姫に言い聞かせてきた。何故なら、約束は守って当たり前、だが破れば人生から信用の二文字は消え失せる。その理由を聞かされた時、幼いながらも納得し、故に彼は生まれてこの方、約束を破ったことは無い。


 そして同時にこうも教えられた。相手が約束破ったら思い切りぶん殴ってやれ。つまりは仕返し、報復、制裁といった類をしてやれということだ。この教えも柚姫は忠実に従ってきた。


 「クソが」


 荒野のど真ん中で、一時失っていた意識を取り戻した柚姫は、この世界にきて初めて汚い言葉を口にした。


 「何の躊躇いもなく首を切り裂きやがって。何が感謝してるだ、金で買える価値しかない奴隷が!」


 怒りは収まらない。その怒りの矛先は、柚姫を殺したことではない。彼にとって自分の命は軽いものだ。何故なら死なないから。完全な不死では無いが、そう簡単には死なない体質である。だからこそ何か行動を起こしそうなレティア達に言葉でしか予防線を張らなかった。では、何に怒っているのか?それは約束を破ったレティアにだ。


 危害を加えるな。彼女を購入した時に約束、危害を加えるな。彼女はそれを一日で躊躇いも無く破った。最後の最後で思いとどまるかなとも思っていたが、頚動脈を一発で切り裂いた。危害どころか、命を奪った。


 「けど、この状況、どうしたものか」


 すぐにでもレティアをぶん殴ってやりたいが、今柚姫は異世界の荒野にひとりぽつんといる状態だ。視界云々の以前に地理が分からない。死なないと言っても、普通なら死ぬ傷を受けたらしばらくは意識を失う。その間に、メイドと傭兵グループに人目につかない場所に捨てられたと考えるできだろう。


 「ねぇ、どうしたらいいか教えてよ」


 だが、彼は感じていた。今この場に他の人の気配があることに。敵か味方は知らないが、少なくとも彼が意識を取り戻した段階からそこにいた。


 「ありゃ、ばれてたか」


 そう気楽そうに声をだしたのは女性だ。


 「いやさ、人目のつかない場所から装甲車が出てくるのが見えたから、何があるのかなぁと思ってね。様子を見にきたらあなたが血まみれで倒れているもんでさ」


 その血まみれの人間が起き上がったことに対して何も驚きを感じていない限り、普通の人間ではなさそうだ。恐らくは勇者のことを知っている存在。そうだとすると、この女はシャルティアのメイドの一人で、柚姫が獣にずたずたにされることを確認しにきたか、仕向けにきたとも思える。


 「名前は?」


 「エルだよ。こっちがサエ」


 「柚姫、よろしくね」


 自己紹介からの握手をするために手を出した。これがメイド部隊の一員なら握手を拒むはず。だが、エルは躊躇いもなくその手を握ってくれた。この世界に来て初めての握手だのと思いつつ、シャルティアの息がかかっていない人物なのかと思い始めたころ、柚姫の中に何かが入ってきた。


 もちろんそれは比喩だ。実際の所は精神攻撃か何かの攻撃を仕掛けられた。分類は記憶や情報を盗み見る類のもの。自身も共有を使った精神攻撃をするためか、他人のそれに気付きやすい。


 「いやぁ、久しぶりに自己紹介と一緒に握手できたよ。なんかうれしいな」


 まだ精神攻撃に気付いていませんよと、いつもの内の黒さを隠す無邪気な笑みを浮かべ嬉しそうに手をぶんぶんと上下させる。だが、裏ではエルの攻撃に対して防御に入る。と言っても、彼女の攻撃そのものを防ぐのでは無く、逆に共有をじわじわと進めていく。肉体的接触だけなら共有出来るものは少ないが、相手は今こちらの記憶を覗こうと柚姫に自ら接触してきている。深いところまで共有可能だろう。


 さてさて、こいつは何者かな?視界の共有はさておき彼女が誰かを調べる。案外、自分の持っている秘密や隠したいことは共有するのに手間がかかるが、自分がどんな存在かを全て隠しきれる人物はそうそういない。


 彼女のエルと言う名前は本名、所属はエクシオンと言う国の諜報機関、ここにいる目的は柚姫の監視。


 ここまで簡単に分かるとなれば、この女は自分がこの類の攻撃を受けると想定していない。ならば分からせてやるべきだ。油断していると自分が食われるぞと。


 エルが柚姫の記憶を見始めた。そのことは簡単に共有できた。その瞬間に、柚姫はエルの記憶を共有し、自分の記憶は共有しないと選択する。


 「あれ?」


 エルの気の抜けたような声。それもそうだろう。他人の記憶を見たはずなのに、自分の記憶しか読み取れないのだから。そしてこの時に気付く。やばいと。繋いでいる手を振りほどこうしたが、柚姫はそれを許さない。柚姫と自ら深く繋がってしまったエルは、体の動かし方すら共有されている。頭では早く柚姫から離れろと命令するが、肝心な体の動かし方を柚姫に一方的に共有された現状、体はピクリとも動かない。


 「サエ!」


 だが、口は動いた。悲鳴に近いような声で相方の名前を呼び、それだけでエルが見た目に反して危機的な状況と察したサエが懐から拳銃を抜いたのと、柚姫がエルの頭部を鷲掴みにしたのは同時だった。


 

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