(91)若干重め?
(90)話の続き。短い小話です。
遅れて二次会の会場に到着すると、集金担当の男性が七海の傍らにいる黛を見てギョッとしたように目を見開いた。
「黛……久しぶり」
「ああ」
もうちょっとにこやかに出来ないのかなぁ……などと七海は思いつつ、きっと相手が誰か分からないのだろうとも想像していた。またサッカー部の人じゃ無いよね、なんてヒヤヒヤしながらお金を払って中へ入る。一次会に比べると半分くらいに人が減っているが、それでもかなりの人数が貸し切りの店内にひしめいていた。
唯と本田が並んで座っているソファ席を見ると、周囲は満杯でわざわざ立ったまま話し掛けている人がいるくらい賑わっていた。きっと二人の結婚式が近い事もあってその話題で持ち切りなのだろう……と七海は思った。二人とはいつでも話せるので、今日は懐かしい人と交流を図ろうかとキョロキョロと周囲を見渡していると、人垣の間から彼女を呼ぶ声がした。
「江島さーん」
元クラスメイトの加藤が手を上げて七海を手招きしている。
「ここ!空いているよ!」
と満面の笑みで隣の席を差してくれた。自由席らしいので言われるがままにそちらに行こうとすると、何故か黛も後ろからピッタリと付いて来る。クルリと七海は振り返り、黛を見上げて諭した。
「黛君はさ、クラスメイトとかサッカー部の人達の所行って話して来たら?」
「何でだ?」
「同窓会ってそう言うものでしょ?懐かしい昔の友達と旧交を温める為に参加するものだよね」
何も毎日一緒にいる自分と今日まで行動を共にする必要は無い筈だ、と単純に七海は思った。黛も好きに昔なじみと話をすれば良い、と。
すると黛は首を傾けてキョトンと七海を見降ろし、こう言った。
「友達はいないし、別に知合いと旧交を温めるつもりも無い」
えっ高校に友達いないの……と七海は思わず絶句した。
しかし彼の自由な高校時代を思い起こすと、あまり否定できない気がしてきた。
「え?じゃあ、何で今日参加したの?」
「七海が心配だからだ。それ以外参加する意味があるのか?」
「……」
愛が重い。
何となく今日、七海は初めてそう思ったのだった。
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