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(75)お義母さんと3

玲子の米国行きが近づいたある日のこと。短いです。

「七海、金曜日の夜空いてる?付き合って欲しい所があるんだけど」


七海は予定を頭の中で確認した。特に予定は入って無かったように思う。


「えーと、たぶん大丈夫です」

「じゃあ、会社に迎えに行くわね」

「……」


前回の待ち合わせを思い出してしまう。

七海の頭の中に、場違い過ぎる輝きを放った立ち姿が目に浮かんだ。

一瞬駅前に待合わせ場所を変更して貰おうと考えた。

しかし人混みの多い駅前になど、ジャズピアニストのREIKOを立たせて置くわけにはいかないと、考え直した。


「……はい。分かりました」


七海の会社では囲まれずに済んだが、おおやけの場所だと本人だと気付かれてしまうかもしれない。当の玲子はそう言う話を振ると「全然気付かれないわよ。ジャズ聞く人あまりいないんじゃない?」なんて無防備に振る舞っているが、会社帰りのサラリーマンにジャズマニアが混じっている可能性はおおいにある、と七海は警戒したのだった。






結果として、七海は玲子の人気を甘く見ていた事に気が付かされた。


ロビーに降りると、玲子は数人に囲まれていた。


「課長?……と、常務と社長?!あ、社長秘書の高畑さんまで……!」


求められるままににこやかに握手に応えている玲子を、七海はロビーの端で茫然と眺めていた。お偉いさんに囲まれ、女神のように輝く玲子。衆目を集めるあの集まりに近付きたくない。例え玲子や黛のついでだとしても、目立つ事にいまだに免疫が出来ない七海には辛い状況だった。よし!ロビーの目立つ場所に近付くのは、せめて社長が立ち去った後にしよう……と、クルリと方向転換して柱の陰に隠れようとしたその時。




「あ、七海~!こっちこっち!」




ゆっくりと頭だけ振り向くと、明らかにセレブリティ、と言った目立つ容姿の玲子が満面の笑顔で、ブンブンとこちらに向かって手を振っている。当然周りの風格のある男性陣や背筋の伸びた社長秘書の高畑は、玲子に倣ってこちらに興味深げな視線を送る事になった。




「あ、ははは……玲子さん其処にいたんですね……」




七海は観念してクルリと振り向き、強張った笑顔のまま玲子の元へと駆け寄ったのだった。



社長秘書の高畑さんはジャズ好きです。一目で気付き、思わず手の甲でゴシゴシ目を擦ってしまったくらい吃驚した―――と翌週、七海に興奮しながら語ってくれました。


お読みいただき有難うございました。

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