(74)黛家の日常2 おまけ(☆)
(73)話のおまけのようなお話。短いです。
※別サイトと一部内容に変更があります。
寝室に逃げ込んだ黛を追って、七海は扉を開けた。
「あれ?……いない」
てっきりベッドにでも潜り込んでいるものと思っていたのだが、そこは平らで人の上がった気配さえ無い。
「かくれんぼ……ね、よおっし」
七海は腕まくりのような仕草で気合を入れ、ソロリソロリとクローゼットに近付いた。そしてピタリと立ち止まる。寝室の中で大きな男が隠れられるとすれば、ここしか無かった。
扉に両手を掛け、一瞬間を置く。
バッッと扉を開いて―――人の気配が全く無いクローゼットを目にし、首を捻った。
「あら?ここにもいない……」
扉を閉めて振り向こうとしたその時、ガバッと腰を抱かれて「ひゃっ」と思わず変な声が出てしまった。そのままグイッと持ち上げられた事に驚いた七海が振り向くと、そこにはいない筈の黛が。
「なっ……何処にいたの?!」
「あそこ」
クイッと顎をしゃくって示したのは、入口の扉。
「七海が扉を開ける前に咄嗟に裏に隠れた」
「えー!」
「てっきりすぐ見つかると思ったんだけど……」
そう言って持ち上げた七海の体をベッドに運び、ドサリと下ろす。
互いの両手の指を握り合わせるようにして彼女の顔の両側のシーツに縫いとめる。見下ろされて、その色っぽい表情に七海は思わず息をのんだ。
ゆっくりと黛の顔が近づいて来て―――朝っぱらから陥ってしまった危うい状況にヒヤリとしたその時。
黛が如何にも堪えきれない……と言った様子で噴き出し、七海の肩口に額を埋めて笑い出した。
「……何がおかしいの?」
「ドヤ顔でクローゼット……ククク……開けて固まってるから、おかしくって……」
七海は恥ずかしさで真っ赤になった。
黛は肩を震わせ、なおも七海に額を押し付けながら笑っている。
あまりに笑うものだから、自然とその両手の拘束が緩む。―――その隙を見逃す七海ではない。
「とりゃ!」
と、七海は勢いを付けて優位を取り戻した。
グルンっと体を入れ替えて逆に黛を仰向けにし、そのお腹にドンっ乗り上げた。思わず衝撃で「グッ」と奇妙な声を漏らす黛に向けて彼女はニンマリと嗤い、すかさず彼の弱点である脇腹をワシっと掴んだ。
「ひっ……ぎゃははっやめ……!」
「許さん!」
結局良い雰囲気はその一瞬で吹き飛んで、黛は七海が満足するまで擽られる事になるのである。彼がすっかり観念して「ゴメン!許して!」と懇願しても尚、その擽り地獄は果断にも続いたのだった……。
良い大人同士が本気で遊んでます。
お読みいただき、有難うございました。




