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(72)小日向の主張2

前話に盛り込めなかった小日向の主張の続きです。



「岬さんと仲良いから、似たタイプだと思ってたんだけど」


とついつい川奈が正直に物を言う。

七海もそう思っていた。岬より少し甘え上手で前向きな性質ではあるが、七海もどちらかと言うと仕事より恋愛重視の同じタイプに、自分の中で小日向を分類してしまっていた。

しかし確かに恋愛重視には違いないかもしれないが―――こうして色々と会話を交わしてみると、小日向は岬と大きく違うのだと改めて感じる。


「岬さん、とっても勉強になりますよ」

「そう?でもあの人、あまり仕事熱心じゃないよね?」


川奈が更に失礼な事を言う。直接岬が七海に突っかかっていた事実は知らないものの、何となく冷たい態度を取っているのに気付いていて、川奈は「仕事もしないくせに」と腹を立てていたのだ。一応職場では先輩だし、岬は人付き合いに熱心で顔だけは広かったので口には出さなかった。何より七海がスルーしていたので事を荒げるのもどうかと思って黙っていたのだ。

確かに岬は仕事より恋愛に重きを置いているし、あまり相容れないタイプだなぁと七海も感じている。しかし伊達にも厳しく言われ、意中の立川に熱心に迫っていたのに無下にされた所を目の当たりにしている七海は彼女に対して複雑な気持ちを抱いていた。岬には怖い目に遭わされたので同情は出来ないが、一番力を入れている事が上手く行かない彼女を気の毒に思わないでもない。


「そうですね、お仕事より恋愛面、人間関係の良い先生です」

「ええ~~そう?」


しれっと言う小日向に、川奈が眉根を寄せた。

するとフフッと悪戯っぽく笑った小日向が、内緒話を囁くように続けた。


「はい、あれが典型的な反面教師ってヤツですね」

「反面教師?」


川奈が驚いたように、目を見開いて小日向を見た。

思ってもみない台詞がその艶々した唇から飛び出して来たからだ。


「あれだけ取らない方が良い行動や言動を続けて反省しない人って、あの年で珍しいですよね。普通三十近くなると失敗から学んで少しは丸くなる筈なんですが……」

「「……」」


何とコメントして良いか分からず、二人は知らず聞き役に徹してしまう。


「元が良いだけに残念ですよね?『おごれる人も久しからず』―――若い頃可愛さだけを頼みにしていて、それが通用しなくなった事に気が付いていらっしゃらないのでしょうか?あまつさえ羨ましいからって、江島さんを悪く言うのって愚の骨頂ですよ。人の陰口を言う時の女性の顔って醜いですよね。『十年後にああはなりたくないな~』って見るたびに戒めにしてるんです」


あまりの辛辣さに、岬に批判的だった川奈もゴクリと唾を飲み込んだ。

七海は小日向が可愛らしく微笑みながらツラツラ続ける台詞に、呆気に取られてポカンと口を開いてしまった。


「羨ましいって思った時は、むしろ学ぶチャンスなんですよ!だから私は江島さんにはドンドン、モテの秘訣を教わろうと思っています!」

「え……私は何も……」


『モテの秘訣』どころか恋愛の『レ』の字さえ、こんなに可愛らしく知識の豊富な小日向に授けられる気がしない。


「全然モテないし、全く秘訣とか思い付きもしないんだけど……男の人と付き合ったのもつい最近だし、相手も一人だけだし」


ややこしくなりそうなので高校時代の頃はこの際ノーカンとする事にした。

戸惑う七海を見ながら、落ち着きを取り戻した川奈が深く頷いた。


「いや、確かに小日向ちゃんの言う通りだわ。江島さん優しいし一緒にいても居心地良いよね。そう言う癒しを求める男の人の気持ち、分からないでもないわ」

「ですよね、旦那さんの惚れっぷり見てやはり『天然が最強』って実感しました。そういう所は今更学びようは無いかもしれませんが、私はそれを妬むくらいなら、正直に羨ましがって参考にしたいと思うんです」


ウンウンと頷き合う二人から視線を逸らし、話題のネタになった七海は恥ずかしいやらいたたまれないやら……(早く休み時間終わってくれ~~)と心の中でひたすら唱え続けたのだった。



小日向の主張・其の弐(笑)でした。彼女は格言大好きです。

でも素敵なバッグもジュエリーも好きです。ブランドの歴史に浪漫を感じる筋金入りのマニア(オタク)です。


お読みいただき、有難うございました。

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