表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/157

(24)マリッジ・ブルー?

唯と七海のおしゃべりのみの小話です。

「打合せって大変?」


マンションの唯の部屋に七海が入ったのは久し振りだ。

テーブルに広げた結婚情報誌と式場のパンフレットを見せて貰いながら、七海は唯に尋ねた。


「うん。式場さえ決まれば後はお任せで良いのかな~ってイメージだったんだけど……結構、決める事沢山あるんだぁ。細かい事言うとお花とか料理とか……音楽にもオプションがあって凄く迷っちゃうの。比べて見てると通常プランだと物足りない感じがしてくるし、だけどオプション付けてそこまでお金出してやる必要あるのかとか……ドレスは何着でお色直しは何回とか……あと誰を何処まで招待するのか?とか。こっちの人招待してそっちの人を招待しないと拙いかなぁ、とか……まだずっと先だけど出席してくれる人が決まったら席順を決めるんだよね。それが一番大変そう。新婦わたし側の出席者はまだ良いんだけど―――とにかくポンちゃんちの付き合いが広過ぎて……正直、ちょっと面食らってるトコ」


いつも前向きで元気にニコニコしている唯が、物憂げな表情を見せている。その様子を見て七海は同情すると同時に、おののいてしまう。


「うわ~~大変だね……」

「七海の所はとりあえず籍だけだもんね。何かそっちの方が羨ましくなって来たなぁ~」


確かにかなり気分は楽だった。七海と黛はとりあえず籍を入れて同居をスタートする事となっており、披露宴や新婚旅行の検討については先延ばしにしている。


「そうだね、一応身内だけのお祝いはしようかと思ってるんだけど……黛君ちはあんまり形式とか拘らないから……嫁ぐ身としては結構、気楽かも」

「でも七海のお母さんは結婚式、見たがってるんじゃない?」

「そうだね~。でも『ハワイか沖縄行きたい』とか最近、言ってるんだよね」

「あー、海外挙式とか?」

「うん。披露宴って両親も結構気を遣うでしょ?翔太生まれてから忙しくて家族旅行全然していないし、身内でのんびりしたいみたい。あとお母さんもお祖母ちゃんも、私がウエディングドレス着る所見られれば満足みたい」

「なら私がプロデュースするから、うちの旅行会社使ってよ!飛び切り良いプラン用意するから!」


唯がドンと胸を叩いた。今の今まで彼女が旅行会社勤めだと言う事を別の事と認識していた七海は、目を見開いて頷いた。


「そうだった……!ここにプロがいたんだよね。じゃあもし旅行とセットにするなら唯にすぐ相談するね」

「まかせてちょ~だい!」


おどける唯の言い方がおかしくて、七海は笑った。唯もそんな七海を見て嬉しそうだ。

一頻ひとしきり笑い合った後、七海は話題を元に戻した。


「披露宴の打合せって、本田君と一緒に行ってるの?休み合わせるのって大変じゃない?」

「そうなんだ~。実はポンちゃん忙し過ぎて、最初の打合せ以外参加してないの」

「ええ!じゃあ唯、一人で打合せ行ってるの?それともお母さんと一緒とか?」


唯は首を振って苦笑した。


「ううん、のぶ君が代わりに付いて来てくれるの。でも、私より熱心でちょっと振り回され気味なんだ。心強くはあるんだけどね……」

「信さんってどっちかと言うと本田君より唯の事可愛がっているから―――思い入れが強くなっちゃんじゃない?」

「うん、そうかも。ヒシヒシとそう言う情熱は感じるよ」


照れているのか、諦めたような顔で唯はニコリと笑った。


「信君の勢いにちょっと引き気味になっちゃう時もあるんだけど、ポンちゃん抜きで打合せって不安だったから……正直すごく助かってる。社会人経験豊富だし本田家の事も分かっているから、色々アドバイスして貰えるしね」

「名家は大変だね~」

「ホントにね。ポンちゃんちって普段付き合ってく分には気にならないけど、こういう冠婚葬祭の時に思い知らされちゃうんだよね、そう言うトコ。……最近思うんだ。お嫁に入って私、ちゃんとやって行けるのかなぁって」


溜息をく唯が珍しくて、七海は目を丸くする。


「弱音をく唯って珍しい……!」

「そう?うーん……確かに今までポンちゃんと付き合って不安になった事ほとんど無かったから、こういうのって実は初めてかも」


唯は人差し指を顎にあてて、小首を傾げた。

七海は唯の可愛らしい仕草を見て、本田がこれを見たら身悶えるだろうな、と何となく思った。


そんな事を友人が妄想しているとは露知らず、唯は七海に向き直り今度は真剣な表情で心配そうに尋ねた。




「七海はそう言うのない?結婚に不安があるとか……結局同居するんでしょ?生活環境もすごく変わっちゃうよね」




七海は腕組みをした。そうして、暫く思案した後ゆっくりと腕組みを外し、首を振った。




「う~ん……結婚するしないにかかわらず、黛君が何を言い出すか、し出すかって予想が付かなくて振り回されるのが日常だから……今更って感じ」

「ああ……そうだね」




遠い目をする七海を見て、唯は納得したように頷いた。

そう言う意味では、七海は『マリッジ・ブルー』とは無縁かもしれない。


お読みいただき、有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ