運営からのお詫び
「さあ、勇者よ!あの憎き魔王を倒すために旅立つがよい!」
新たな勇者は、キングの演説を聞き終わると、てくてくと僕の方に近づいた。
「あなたは、王の護衛の兵士ですか?」と言われたので、「ああ、そうだ」と応えると、
「俺とそんなに装備変わらないっすよね?クソ雑魚じゃないですか。そんな装備じゃ魔王の手下に瞬殺されますよ」
などと、僕にくどくどと絡んだあげく、城の外へ出て行った。
キングは「儂らはロールプレイをして遊んでおったが、仲間に引き入れなくてよかったのか?」と僕に聞いたが、「生理的に無理です」と僕が言うと、それ以上何も言わなかった。
「それに3人揃ってもレベル3にはならないですしね」
それ以降、しばらく勇者が来ることはなかった。
そろそろ王の護衛ごっこも飽きてきてしまっていた。
すると、携帯端末からピロンピロンと通知音か流れてきた。
この携帯端末は運営からのお知らせや、相手のステータスやレベルの確認、遠くの相手へのチャットなど、様々な機能を持った冒険者の必須アイテムである。
どうやら運営からの通知のようであった。
中身は『深刻なバクについてのお詫び』というもので、運営の言い訳がくどくどと書かれていた。
どうやらプレゼントがついているようである。
『レインボーオーブ』というアイテムが5つ添付されている。
効果は……レベルを1上げるというものであった。
「儂のところにもきておるぞ」とキングが言った。
「確かにレベルの上昇はありがたいが、5だけではな」とキングはうなだれていた。
確かに運営から受けた仕打ちに対してこの報酬はあまりに少ないものであった。
焼け石に水である。
「だけど、完全に無意味というわけではないですよ」と僕は言った。
そう、レベル5になるとジョブが選択できるようになるのである。