ロールプレイング
冒険者から声をかけられると、僕はこう言った。
「やあ!ここはゴウセツ村だよ!」
そう、僕は村人Aとして村での時間を過ごすことにしたのだ。
しょぼい装備も脱ぎ、地味な服を買って自由気ままに生活をしていた。
労働をしてお金を稼ぎ、図書館へ行き、沢山本を読み、たまに村をぶらぶらする。
ちなみにだが、川での釣りはできなかった。
いや、システム上はできる。ただ、たまにモンスターとエンカウントすることがあるらしく、即ゲームオーバーの危機のある僕が取れる手段ではなかった。
村の人からクエストを依頼されることもあった。クエストをこなせば、経験値は手に入る。
しかし、「ジフ山にいって山草をとっきて」とか、ただのおつかいかと思い相手の家に行くと、「暴れ牛の角を持ってこないと、お望みの品はあげないよ!」とか言われる。
レベル1の僕には到底不可能なクエストである。
戦闘が不要なクエストなど、せいぜいさいしょの村あたりにしかないのであろう。
となると、残された手段は、できる範囲でふざけることしかない。
役割演技遊戯と書いてRPGだ。べつに勇者でなく、村人を演じればいい。
下手にまた外に突撃してゲームオーバーになるよりはマシである。
というわけで、僕は時折冒険者から馬鹿にされながらも、ゴウセツ村の村人として生活をしていたのである。
……あいつと出会うまでは。