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第47話アジトへ………その3

皆さんお久しぶりです。最後に投稿したのが8月なので約七ヶ月ぶりとなります。お待たせしました!






彼が街を出て行ってから二日ほどたった。彼を待つ間の二日間、私は何もすることなく宿屋のベッドで横になっていた。彼を心配する素振りも見せずに毛布をかぶりずっと包まっていた。




私はただ待つことしか出来ないのか?……





もしかしたら無事にあの子達を救いだしてくれたのかもしれない………



もしかしたら失敗して皆殺しにされたのかもしれない……



表面では冷静を装ってもこの毛布1枚という薄い装備の中、私は恐怖に震えている。




彼が出て行ってから食事もとることなくずっと頭の中でグチャグチャとした感情がわき乱れる。



私は奴らが怖い。目を見ただけで息をすることすら忘れてしまう。もはや悔しいという感情すらわかない。そう……言うなれば災害と一緒。通り過ぎるのを震えながら待つことしかできないのだ。






『私は本当にこのままでいいの?……』





頭の中のグチャグチャした感情の中に1つ、とうの昔に忘れ去ったと思っていたものが少しずつ、そして確実に浮かび上がる。それが段々と形となり私に問いかけてくる。




黒い靄がかかって何かはわからないがソレはスピカに確かに問いかける。


----------------





【お前は誇り高い雪豹族ではないのか?】




『誇りなんてとっくに忘れちゃったよ……』




【このまま誇りなど忘れて腐ってゆくのか?】





『誇りなんてなんの役にもたたない……』





【なにもしないで死ぬのか?】





『もう疲れちゃった……別に死んでもいいかな……なんてね……』





【お前が誇りを捨ててまで守ったものはどうなる?】





『もう何年もあの子達のこと見てないの本当はもう死んでるのかもしれない』






【貴様は奴の姿を見て何も感じなかっあのか?このまま家畜のように死ぬまで奴らの言いなりか?】





『家畜か………確かに私の人生って家畜みたい……いつか殺されることが分かっていても働き続けてゴミみたいに扱われて……それで最後は誰にも見守られることもなく殺される。私にはお似合いの最後かも……』








【戦え!】





『無理だよ』






【立ち上がれ!】






『無理……』






【このまま家畜で終わっても良いのか?死ぬのなら戦って死ね!それが………】






『それが?』







【それがお前の………いや……私の……】




黒い靄が消えていく……そこに見えるのは白黒く美しい姿をした獣の姿があった。






『黒い靄なんかじゃないこれは私の……』






【『誇りだ』】




--------------






それに気づいた時、私の殻を破る、小さな音が聞こえた。




目が覚める。



「夢?」



夢であろうがもうそんなことはどうでもいい。体に力を入れる。間接の節々からゴキゴキと嫌な音が鳴る。




顔をあげ鏡を見るといつも見馴れている顔がうつる。いつもと同じ整った顔立ち。目の下には大きなくまがある。頬も少しばかりがコケていて自分でも弱々しく感じる。ただいつもと違うのはその目には確かな意思があった。その顔を見て私は…「酷い顔」……っと呟く。







私は戦う…雪豹族としての本当の自分を取り戻すために。






私は家畜なんかじゃない………誇り高き雪豹族だ。足に力を入れる。筋肉を伸ばす。私ならできる。そう心に言い聞かせ久しぶりに外へ出る。




少し視線を感じる。そんなことはどうでもいい今はただ前へと進むだけ。





「すぅ…………はぁ………すぅ…はぁ…」




深呼吸をして脳に酸素をおくる。心臓がドクドクと鳴り響き段々と鼓動が強くなる。すると人ごみからから聞こえる音が突然と消えた。すべての動きがわかる。世界が遅れて感じる。そう思ったとき既に私の脚は地面を蹴り上げ前に進んでいた。





少し強く踏み込みすぎたせいか地面が数カ所えぐれていた。いつもは重くて邪魔だと感じていたこの鉄枷も不思議と気にならない。





スピカの姿が消えそこにはえぐれた地面と遅れて突風が巻き起こる。





「うお!」





いきなりの出来事に偶然スピカを見ていた男が声をあげる。





「なんだったんだ?今の?」








もっと速く、速く、速く、速く





「ふぅっ!……ふぅっ!……」






走れ、走れ、走れ、




本気で走るのはいつ以来か、最初は軽く感じた身体も街から二十キロほど離れてからは悲鳴をあげはじめる。





『脚がちぎれそう。疲れた。休みたい』






身体が休息をとれと命令をだしている。いつもならとうに止まっている。休もうと思っても自然に足が前に出る。胸にこもった熱はもう冷めることはない。







助けに行くのではない。






私はこれから初めて雪豹族として戦いに行くのだ。











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