第42話 わかったこと
2日くらい更新おくれました…
門の向こう側へと足をはこぶ。スピカに盗賊団のアジトを聞くことも出来たがそれをしてはいけない…何故ならスピカにはそれを話してはならない理由があるからだ。多分俺にアジトを話してしまえばスピカの言っていたあの子達になにかしらの罰が与えられてしまう可能性がある。
今までスピカの心を支えてきていたものを壊してしまうわけにはいかない。これは俺一人でやらなければいけない……
草原を歩きながら盗賊団のアジトの場所を考える。俺もただ闇雲に探すわけではなく一応目星はついているのだ。
それはスピカが俺から遠ざけようとしたあの街、…本来ならば俺が一番最初に行く筈であったミスノスという街だ。ここからどれだけ時間がかかるか分からないが今はただ前に進むそれだけだ。
場合によっては初めてこの手を血で汚してしまう事もある……人を殺すということはそんな単純な話ではない……人の人生を終わらせるということなのだ。俺にはその覚悟はあるのか?……
それはまだ分からない。……だが目の前の少女くらい救えるようになれなくちゃ勇者なんて名乗ることは出来ないのだから……
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草原を歩くこと数分で魔物に出くわす。この草原でお馴染みのブラッケスト ウルフだ。道中の魔物はスピカが殆ど1人で倒してくれていたので久しぶりの魔物との戦いである。まだ奴等は俺に気づいていないようだ。
丁度よかった…魔物に混合魔法を混めたナイフを使うことでどのようなことになるのかを試すことができる…言わばこの戦闘は実験みたいなものだ。
ブラッケスト ウルフは最初に出会った時のように群れで行動をしていた。奥にはボスである体のデカイ固体もみえる。
俺はナイフに魔力を混め混合魔法で爆発魔法の準備を始める。先ずは群れのボスを叩く……そう決めた瞬間俺は群れに向かって走り出した。
群れが一斉に襲い掛かってくるがそれを器用に避けながらボスの喉ものへとナイフを突き刺す。
「ギャアン!」
ナイフはあのボロ短刀とは違いまるで豆腐に包丁を入れた時のように抵抗なく突き刺さる。爆発がおきるまで何秒かかるか分からないので素早く距離を取り始める。
1………2………バァン!
ボス固体の頭が弾けとぶ……少量の魔力しか混めていないのになんて威力を出すんだ……
手元にあるナイフを見ながら俺は恐怖を感じる。……このナイフは予想していた物よりかなり恐ろしいものなのかもしれない……
群れがボスを失い慌てはじめる……そうか……こいつらボスがいなきゃ統率がとれないのか!
「それなら後は楽勝だな!」
少量の魔力で一頭ずつ数を減らしていく……爆発魔法の利点は回りを巻き込むと言うところだ。味方も巻き込む可能性があるので仲間がいる場合はあまり使えないのだが……
そしてもう1つ先ほど盗賊に使った風魔法の応用で音を増幅させた魔力をナイフに混めてみると…
キーーーーン
爆音と共に刺されたブラッケスト ウルフは身体中から血の泡を出して絶命した。回りを巻き込むことはないのだがこの魔法はグロすぎる……うぅ……形が残っている分、爆発魔法よりクルものがある
30頭ほどいた群れが残り10をきった頃には危険を感じはじめたのか群れが散り散りになって逃げ出した。
「ふぅ……これなら魔力の消費も少ないし俺にぴったりの武器かもしれんな」
それから道中出てきた魔物は苦戦することなく倒すことができた。そこで新たな発見をする。倒した魔物を鑑定すると今までに見ることの出来なかった情報まで見えるようになるということだ。
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ホブゴブリン 地大陸
地大陸であればどの場所にも生息している魔物。力も弱く初心者冒険者などに狩られる魔物である。肉などは硬く食べれる部分がない、持っている道具袋には時々稀少品が入っている。人の村や街を襲い農作物を食い荒らす厄介者であるのでホブゴブリンの巣を見つけ駆逐すると国から大金を貰えることもある。
弱点 火 風 水 土 雷 ………
耐性 なし
この魔物が近くにいる時アラームを鳴らしますか?
はい
いいえ
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このように1度倒すあるいは気絶させることの出来たモンスターは鑑定を行うことによって更に深く知ることができる。
そしてもう1つアラーム機能である。これを設定することによって近くにその魔物が近づくことでアラームを鳴らすことができる。はいを選択すると……
≪距離を選択してください≫
0キロ 音量 ■――――――――――
0メートル ■――――――――――
0センチ ■――――――――――
0ミリ ■――――――――――
このようにミリ単位で距離、音量を調節出来るのだ。これは非常に良い発見をしたかも知れない。これが魔物だけでなく人にも適用できたら……もしかしたら奴等のアジトを簡単に割り出せる……
ものは試しだと取り敢えずホブゴブリンの一匹を倒し鑑定を使い設定する。
≪距離を選択してください≫
1キロ 音量 ―――■――――――
10メートル ―――――――■――
0センチ ■―――――――――
0ミリ ■―――――――――
適当に音量を調節してホブゴブリンの場所を探る。
すると……ピ!…ピ!…ピ!と一定のリズムで音が鳴り始める。どういう法則かは分からないが何故か音のする方向がわかってしまう。右左と様々な場所から音がするのだが一番多く聞こえる音の方向へと足をはこぶ……すると……近くに小さな洞穴が見えた。縦横合わせて1人分が通ることが出来る程の大きさがある。
ピピピピ!…ピピピピ!…ピピピピ‼
近づく度に音が大きくそしてリズムが早くなる。そして洞穴の中に入るとそこはドーム状の空洞なっておりホブゴブリンの軍勢か広がっていた。
ギャウギャウ‼ ギャウ! ギャウ!
目で確認出来る感じで100は越えているだろう。どうやらホブゴブリンの巣にきてしまったようだ…1つの街のようにボロ布で張ったテントなどが出来ている。
良くみるとテントには血のついた子供服などが干してある。考えてみれば分かることだ……コイツらに服を縫うなどの技術などあるはずがないのだ………俺は考えることをやめ天井にむかって爆発魔法を放つ
ドォォォォン‼
瓦礫が落ちホブゴブリンの軍勢を潰して行く。それを見届けた後入口を破壊しその場を後にした。
予定と少し外れた道を通ってしまったがミスノスの近くまで来ることができた。
遠くから見てもわかる……ミスノスはかなり荒れた街のようだ。
「これでよく地図に載せることができたな……」
見ているだけで可哀想になってくるほどだ……ニーブルムのように門とよべる代物はなくどこからでも入ることができる只の家が並んでいるだけのような街というよりもはや村であった。
「まるで限界集落だな……」
「おいにいちゃん!俺たちお金に困ってんだけどさ…」
「少し貸してくんないかな?…」
街の中に入ると早速チンピラ二人組に絡まれる……右は金髪で左が青髪…チンピラというよりは背伸びをした男子高校生からDQNへと変貌をとげる最中ですって感じの奴等だな…ここは年長者として少し有難いお話をしてやろう…
「いいかい君達…そんなことでお金を手に入れても君達の心には虚しさしか残らないはずだよ…良く考えるだ…今ならまだ戻ってこれペプゥ‼」
後ろから木の棒で殴られた……痛くはないのだが不意打ちで殴られたので情けない声がでてしまう。
コイツら………俺の有難い話を無視しやがって……年下であろうが許せん‼
成敗してくれる‼
「なにすんだこの馬鹿野郎‼ 」
会心の廻し蹴りを後ろの男に叩き込む‼
「キャア!」
はっはっは‼見たかこの野郎‼………ん?………きゃあ?
嫌な予感をして蹴り跳ばした奴の顔を見ると……十代くらいの女の子が倒れていた。………
「「エウリ‼」」
チンピラ二人組がエウリと呼ばれた女の子に駆け寄る
……え……何?…………俺が悪者みたいになってるけど……俺被害者だよね……でも……女の子蹴っちゃったよ……
昔から親父に「男は女を守るものだ!」と教えられていた俺にとって異世界生活において奴隷になった時よりも精神的ダメージを
おっていた。
「「てめえよくもエウリを‼」」
二人が声を揃えて俺に襲い掛かってくる。あまりのシンクロ具合に何処かの双子を思い出す。
コイツらは怒りをむけるほ矛先を間違えてるだろ……これは本格的な説教が必要だな……
見たところ動きに無駄が多いので間違いなく只のチンピラだ……異世界人は金髪などが多いのでこの年齢で金髪やら青髪はチンピラにしか見えないと言う俺の偏見も入っているのだが…
「うぉぉぉ!」
青髪の男が俺に向かって大振りの右ストレートをかます。だがそのパンチは当たることなく空をきったあとその瞬間に顎にむかってアッパーをかます。
「ふん!」
ガッ!
「ウゲェ!」
少し手加減はしてやった……だが立ち上がることはできないだろう…脳を揺らしてやったのだから…
「アレックス! この野郎‼」
金髪の男が怒りにまかせて俺に向かってタックルをかましてくる。悪い手ではないのだが技術がないので悪手になってしまっている。
俺はそのタックルを腕を肩にそえて地面へと受け流し顔面から地面れとダイブさせる。
「ぐえ!」
まだ終わらない…肩においていた腕を金髪の手首へと持っていきそのまま背中に乗り関節技を決める。
「いでぇぇえ‼」
ミスノスの住人が叫び声を聞いて集まってくる。これはもしかして俺がコイツらを襲っていると勘違いされるのではないか……そんな不安を抱えていると1人の老人が走ってくる。
ああ…これ村長がきて俺が叱られるパターンか……
「馬鹿者‼」
杖で金髪の頭を殴りとばす……えええ!…そっちなの?
「すみません‼そやつ等は決して心からの悪者ではないのです……もしよろしければそやつ等を許してやってはくれませぬか?」
村長らしき男が土下座をして俺に頼み込む。
「都合の良いことを言っているのはわかっておる! 少ない額ですがお金もよういします!じゃからそやつ等を許してやってくれ‼」
更に頭を地面に刷り込む……やめてよ‼…これじゃ俺が悪者みたいじゃんか!
「ジジィ!勝手なまねすんじゃねぇ‼金がねぇから俺等が集めてんだろうが‼」
俺の尻に敷かれている金髪が叫び出す。カッコイイ台詞を言おうとしているのだがこの情けない格好のせいで逆に面白く感じる。
「いや……俺そこまで怒ってませんし……えっと…別に大丈夫ですよ?…あとお金も入りませんし…」
金髪の上から退き村長らしき老人の話を聞く。
「ありがとうございます! こやつ等には2度とこんなことをしないようキツく言い聞かせておきますので……本当に申し訳ない…」
再び土下座をし始める。
「やめてぇぇ! それ以上謝られたら俺まで悪者みたいじゃん‼」
土下座する村長らしき老人を落ち着かせた後、何故このようなことになってしまったのか詳しい事情を聞くことにした。
「ええ……実は」
「ちょっと待って」
忘れていた……男の傷はどうでも良いのだが女の子の傷は治しておかなければ…エウリと呼ばれていた女の子の元へ近づき傷を見る。蹴られたショックで見事に気絶していた。
女の子に失礼だが服をめくりクリンヒットしたであろうわき腹を見る。わき腹は見事に真っ青に染まっており多分肋骨が折れている。
「おい!てめえ‼エウリに何しやがんだ!」
金髪が俺に向かって走ってくる。これだけ心配するならこんな危険なことに参加させるなよ……
走ってくる金髪に向かって鉄拳をかます。
「静かにしろ‼」
ガン‼
「うがっ!」
再び元の場所へととばされる。
骨が折れない程度に顔面を殴ってやったのだ。これだけですんで感謝してほしいくらいだ。
この程度の奴等なら簡単に倒せるようになったんだな~…とウラドの特訓を思い出しながら女の子の治療に取りかかる。
抉れた肉を戻すことも出来たのだから骨折くらい治せるだろう。そう信じ回復魔法をかける。光のサークルをわき腹に集中させると真っ青だったわき腹がみるみる内に色を取り戻していく。
「良かった~治せたよ……」
安心して尻餅をついていると村人はポカーンとした表情で俺をみる。
村長らしき老人が俺の元へ駆け寄って本日三度目の土下座をかます。
「それほどの治療術をお持ちとはさぞ名のある冒険者様とお見受けしました。 何度も都合の良いお願いをしていることは分かっておりますだが私達にお力を貸して頂けないでしょうか‼」
「わかった‼ わかったから! まじで何でも話聞くから‼ 俺からもお願い!土下座だけはやめてくれ」
「これ程まで無礼を働いたワシ共を許してくださるとはありがとうございます‼」
「だから土下座はやめろって‼」
異世界に来てわかったこと
その1…基本的に異世界人は話を聞かない




