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第41話 本当の気持ち

部屋からスピカが出た後、俺は違和感を感じはじめる。最期に見たスピカの悲しそうな顔…本当は何かから逃げだしたかったのではないか?…何か理由があるのではないか?





「思い出せ……スピカの言っていたことを……」





……元々は俺を殺すつもりだと言っていた…スピカ程の実力があれば俺なんていつでも殺せるタイミングがあった筈なのに…






やはりおかしい……何がおかしいかわからないが違和感を感じずにはいられない。



今までのスピカは本当に嘘だったのか…あの時の笑顔も作り物なのか?




窓の外にはスピカと仲間らしき男がいる。スピカの手を無理矢理引きどこからに連れて行こうとしていた。多分もう2度とスピカと会うことはないだろう。これで良かった筈だ。思えばスピカと出会ってまだ1日と少ししかたっていない。それなのに俺はスピカの何をわかった気でいたのだろうか…





今までのスピカは演技をしていたと言っていた。

だが……たとえ騙されていたとしても俺は最期に見たあのスピカの表情に嘘はなかったと信じたい!






俺は宿から一心不乱に走り出す。街を歩く人々をかき分けるように前えと進みスピカを探す。



スピカは俺を逃がしてやると言っていた。本当の悪はそんなことをするのか?逃がしてやるのではなく逃げてほしかったのではないだろうか…





あの背中の紋章を見せるだけで普通の人は逃げ出す筈だと言っていた。…それほどあの紋章は有名なのだろう。逃げたいけど逃げ出せない。そんな理由が彼女にある。今までのスピカの行動から考えられることはこれしかない。







スピカの後ろ姿を見た時俺は思わず声を荒げる。



「スピカ‼」




その言葉に反応するスピカはまたあの悲しみに満ちた表情で俺をみる。



「どうして……どうして貴方は追いかけてきちゃうんですか…」





「テルさん…」



やはりスピカの様子を見るかぎり盗賊団に望んでいるとは思えない。彼女の本当の事情を俺はまだ知らないのだ。



「なぁスピカ…やっぱり俺…お前が金で人を殺すような悪人に見えないよ…」




「私はっ!」


スピカが何か言おうとした瞬間…



「オイオイオイ‼」



隣の男が声を荒げ俺を威嚇し始める。



「スピカァ~こりゃどういうことだぁ? お前いつから男なんてつくれる程えらくなったぁ!」




見るからに盗賊ですという格好をした男が汚い罵声を浴びせながらスピカ髪を掴み引っ張りあげる。




「きゃあ!」




「 予定外の行動ばかりしやがって‼ この男はなんだ? おい‼ 服でも買い与えられて情でも移ったかこの売女!」




この男……




「おい そこの三下……」



腹の内から何かがフツフツと煮えたぎる。



「あぁ? 今テメェなんつった? 三下って誰のことだぁ?」




「テメェに言ってんだよ! 汚ねぇ格好しやがってスピカに臭いがつくだろうが!」




「殺すぞお前…」





盗賊の表情が変わる。先ほどの三下臭が消え実力者のオーラを放ち始める。こんな汚い身形をしてもやはり地大陸で名を轟かせる盗賊団だ。団員もそれなりの奴を揃えているようだ。






「そんなに死にたいなら俺が殺ってやるよ…」



盗賊が手につかんでいたスピカの髪をはなす。







「……この男を殺したらお前には後から話がある。…わかったな?」





「………はい…」




スピカの様子からするとやはり何か裏がある。それが分かっただけでも良かった…




それに丁度良い…こいつには新型の魔法を試してやろう。




「おいお前…名前はなんて言う?」




名前を聞いてくるとはこいつ意外と戦いに礼儀を重んじるタイプなのか?



「俺の名前は耀だ」



「お前じゃねぇよ……お前の後ろの奴に聞いてんだ」




盗賊は俺の後ろに指を刺す。それに釣られるようにして俺はついつい後ろを見てしまった。後ろを見た時に俺は自分のミスに気づく。戦いにおいてよそ見をすることは死につながる。そんな単純なことに気がつけぬほど俺はスピカを前にして焦っていた。



それに気づいた時にはもう遅く目の前にはナイフが見えた。この手に馴れているのか投げたナイフは俺の心臓部分に真っ直ぐ直線を描いてとんでくる。そして胸にナイフが当たり服を貫く感触を感じた。




盗賊の汚い笑い声が聞こえる……




ナイフが胸に直撃した瞬間俺は後ろへと倒れた。




ドサッ!



「あぁぁぁ……そんな……テルさん……」



「バーーーカ‼ こんな単純な手に引っ掛かるとはよほどの世間知らずのボンボンとみた!」



下卑た声で男が笑う。一瞬でもこの男に感心した自分に腹が立つ。だが高い授業料だと思えば我慢出来なくもない……スピカ…そんな悲しそうな顔するなよ…お前は笑顔が一番似合うのに…




盗賊が俺の元へと近づいて来る。多分ナイフの回収と俺の生存確認だろう。抜け目のないやつだ。ニヤニヤしながら近づいて来る盗賊に俺はありったけの魔力をこめる。この男には地獄を見て貰おう。




「おいスピカ!見てみるか?この男の間抜けな死に顔をよぉ…何勘違いしたか知らねぇがお前を助けれるとでも思ってやがたのか?バカだなぁおい!」



盗賊が俺に近付き胸にあるナイフを掴んで引き抜く……



「あ?どうやってんだ?」



掴んだナイフはあるべき筈の刃が砕け散っていた。俺も刃物を体に当てたことはなかったので少し不安だったがこの体の耐久力は刃物も通さなかった。



俺は盗賊の油断を見逃さなかった。盗賊の両耳にイアーカップをあてる。その瞬間回りにかん高い音が響きわたる




キーーーーン!





「ああァああああァかァかあ‼」




膝をついて耳をおさえる。その両耳からはおびただしい量の血が出ていた。今あの盗賊には回りの世界が回って見えているだろう。




俺が奴に使った魔法は単純な風魔法だ。だが俺が風魔法で起こしたのは風ではなく音。そう…空気を超震動させて鼓膜に直接巨大な超音波をぶつけたのだ。



音はなるべく調節したはずなので死にはしないと思うのだが三半規管を揺らしまくったんだ…もうまともに歩くことはできないだろう。




「おで……おでにだにおした?」




もはや何を喋ろうとしているかも分からない。目からは涙、口からは涎をたらしながらフラフラと男は立ち上がろうとしている。生まれたての小鹿のようにプルプルと震える盗賊に指を刺しあの台詞を言い返す。





「お前の後ろの奴にでも聞いてみな…」





奴の額に指を当て軽く押すと糸が切れた人形のように盗賊が崩れ落ちる。



不意を突くような形になったが最初に仕掛けてきたのはアッチの方だ。俺は悪くない。





さて今度こそ彼女と話をしようか…




「スピカ…」




「テルさん! どうして刺されたのに生きてるんですか!?」



そういえばスピカは俺の防御力の高さを知らないんだったな。でも勇者って言っても信じてくれなかったし…うーん…何て説明しようか…






ガヤガヤ








騒ぎを聞きつけて回りが騒がしくなり始める。真っ昼間からこんな場所でケンカをしていたら嫌でも目立ってしまうだろう。門を見ると街に入る時に話しかけてきた警備兵が倒れているのが見える。殺されてはいないようだがこの盗賊を捕まえて貰う口実としては充分だろう。





近くの警備兵にこの盗賊の身柄を引き渡しスピカを静かな場所へと連れていく。





「さて……そろそろ本当の事を話して貰おうか……」





「……」




「なぁ……俺は本当のお前を知りたいよ…」






「本当の私ってなんですか?……本当の私ってなんなんですか!私こそ聞きたいですよ‼…一体貴方何様のつもりなんですか‼ もうこれ以上私に関わらないで下さい‼ 」





今まで溜めてきた何かをすべてさらけ出すかのように彼女の中で何かが爆発した。




「いきなり私を治療して! 自分は勇者だとか言い出して! 演技をしていたことにも気づかないで私をなだめだして! 貴方は一体何を考えているんですか! もう私にこれ以上期待させないで……もう……私が……あの子達を…………たすけ………貴方が私を助ける理由なんてないじゃない………」




あの子達……そう、スピカは今あの子達と言った。その言葉がしめす意味を俺は理解出来ていない。だがその言葉を聞けただけでもう充分過ぎるほどに彼女を助ける理由が出来てしまった。





「スピカ……俺…初めてスピカの心の内を聞くことが出来た気がするよ……」






「うっ……うぅぅぅっ!」




泣き崩れるスピカよ頭に手をおき乱暴にワシャワシャと撫でる。そして今スピカが一番望んでいるであろう言葉をスピカに言う。





「安心しろ……お前もあの子達も俺が全員……守ってやる‼」





「ぅ……ぁ…はぁ……あい……」





泣きながらスピカは俺に返事をする。感情が抑えきれず涙を流し整った顔をくしゃくしゃにしなごら泣きじゃくる。






「そこで待ってろよスピカ……俺が必ず……お前達を救ってみせる‼」






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