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第38話 大改造計画

町の門の向こうから見える景色は日本では見ることの出来ないそれは綺麗な物であった。水が透き通っていてまるでヴェネチアのような神秘的な街並みである。



「こりゃスゲェな、ここまで綺麗な街は見たこたねぇや…」


夜景とか綺麗な景色にあまり関心を持たない俺でさえもこの芸術的な街並みに感動している。それほどこの街は美しい…



「凄いですよね! 私も感動しちゃいました! 早速入りましょう!」


まるで初めて来たみたいな言い方だな……まぁいいか…

門を通ろうとすると鎧をきた警備兵に止められる。


「待たれよ‼この街に入るにはまず貴様等の身分証を見せて貰おうか‼」


身分証? 僕そんなもの持ってないよ? え?どう言うこと?スピカさん?

スピカに目をむけると彼女もオロオロと困惑している様子であった。何このカワイイ生物!スピカが俺に顔を近づけ耳元で静かに話しかけてくる。


「どうしましょう…私…身分証なんてもってないです…」


マジですか…何か身分の証明になるものは無いのかとりあえず荷物をひっくり返す。日記に非常食にウラドの手紙、ラピスラズリの手紙、ヤバイ…ろくな物がない!だが俺の荷物を見て警備兵の表情が一変する。


「こ…これは! ツウェペシ家の紋章‼」


ウラドの手紙に押してある印を見て驚いていた。ウラドってやっぱ結構お偉いさんなんだな…只のうるさい孫バカではなかったようだ。


「 ツウェペシ家の関係者とは知らず大変失礼いたしました‼どうぞお通り下さい!」


敬礼をしながら俺達を通してくれた。だが…


「見てあの汚い格好…どこの奴隷?」「やだ!ニーブルムが汚れちゃう」「何で奴隷なんかがこの街に入れるのよ…」「しかも獣人じゃないか…」「足に枷がついてるぞ…どこから逃げ出した?」「誰か通報しろよ…」

ボロ布を着たスピカを見て回りの人々が心ないヤジをとばしはじめる。


スピカは顔を赤くして下を向いている…なんだが腹がたってきたな…よし!


「スピカ‼」


「きゃい!」


大声を出されて変な声を出す。


「何ですか?…」


「服を買いにいくぞ!」


「ひゃ!」


スピカの手を強引に引きその場から連れ去る。お前らの目がいかに節穴か見せてやるよ‼


俺の中でスピカ大改造計画が始まった。


街で一番高そうな店に入る。中のチョビヒゲを生やしたおっさん店員は俺とスピカの格好をみて鼻で笑いながら接客してくる。


「失礼ですがお客様…当店の洋服はお客様のご予算では払いきれないかと…」


何て失礼なやつなんだろう。


「誰に口聞いてんだぁ!予算ならあるわ!」


俺はウラドから貰った白金貨を1枚見せる。


「これはこれはお客様ぁ~どれになさいますかぁ~いや~一目見た時からこれは高貴な御方だ!と思っていたんですよぉ~」


急に猫なで声になりはじめ俺をヨイショしはじめる。この変わりよう…コイツ!


「彼女に似合う最高の服を用意しろ! あとこの店にシャワー室はあるか?」


「かしこまりました!…シャワー室ですね!御用意いたします。」


良かった…やはりある程度高級な店にはウェルカムドリンクやシャワー室が用意されている。これは俺の世界と変わらないようだ。しかもデカイ態度をとることによって店員も「この人はもしかしたらお偉いさんなのか?」と勝手に勘違いしてくれる。


「あの…テルさん…私…」


不安そうな顔で俺を見てくる


「安心しろスピカ!とりあえずそのボサボサの髪と泥のついた体洗ってこい」


スピカの背中を叩くようにして送り出す。


「えっ!あの…えっと」


まだ状況を理解していないようだ。


「それとも俺に洗ってほしあのか?」


イタズラな笑みをうかべスピカに軽く冗談を言う。


「大丈夫ですーーーー!」


スピカがシャワー室へと走っていく。冗談なのにそこまで拒絶されると傷つくんですけど…スピカって実は俺のこと嫌いなのかな…女の子は皆腹黒いなんて言うけどスピカもそうなのか…


シャワー室にいるスピカに女性店員が服の要望を聞いている。小さな声で露出はおさえて欲しいと聞こえてきた。少し残念だな…




「このへんで武器屋はあるか?」


「はい~この店を右に出て冒険者ギルドに向かって進んで行くとマルクスと呼ばれる武器屋がございます~そこが一番オススメです~」


コイツ…しゃべり方がウザいな…まぁ良いだろう…俺も冒険者としての装備をちゃんと揃えないといけないしな、これを気にちゃんとした武器を買わないと…





――――――――


30分ほど時間が過ぎた頃スピカがシャワー室から出てくる。勿論ボロ布は捨てて新しい服に変わっていた。


「あの…私」


モジモジしたがらスピカが恥ずかしそうに俺を見る。やめてそんな目で見ないで恋しちゃうから!


彼女の姿は白をモチーフにした綺麗なドレス変わっていた。ドレスには黒の刺繍が入っておりそれがスピカの銀黒の髪によく似合う。泥と汗と血の臭いしかしなかった彼女の体からは柑橘系の果実のような何時までも嗅いでいたくなるそんな香りがした。




「綺麗だ…」


思わず声に出してしまう。


「そんな!私なんて全然…服が良いだけですよ…」


「いや~お客様お似合いですよ~これは街の男達が放っておきません!」


いい感じであった雰囲気をこのコイツは一気にぶち壊してくれるな!マジて少しでいいから黙っててくれよ‼ほんと頼むから!




「それよりさ…足の枷…とれないの?」



どれだけ綺麗なドレスを着ていてもやはり足についている忌々しい枷がどうしても目立ってしまう。


「やはり奴隷の枷というものは特殊な技法で作られておりますので鍵でないと外すことはできませんね…あれ?奴隷の持ち主様である貴方がお持ちでないのですか?」


なんだが面倒なことになりそうだ…話を変えなけらば…


「いや、鍵をなくしてしまってな…少し気になっただけだ。それより会計をすまそうか…」


「はい~かしこまりましたぁ~」





会計をすます。値段は白金貨1枚であったが俺の値切り交渉により半額以下の金貨20枚にまけてもらった。

最初の接客態度の悪さを指摘し次からは他の店を利用することをにおわせると簡単にまけてくれた。もう2度とこねぇよ…


「さぁお嬢様、私がエスコートしましょう」


キザなセリフを言ってスピカをエスコートする。スピカの美しい姿に回り奴等はざわついていた。


「あのテルさん…ありがとうございます…」


スピカが下を向いてお礼を言ってくる。顔が赤い。違う意味での恥ずかしさで頭を下げるスピカに俺はおもわず笑ってしまった。



「ぷっ…」



「もう!笑わないでくださいよ!私も結構恥ずかしいんですから!」


本当にスピカは可愛いな…今俺達カップルとかに見られてるのかな?…ヤバイ…なんだか俺まで恥ずかしくなってきたぞ……



「と…とりあず次は武器屋に行こうか!うん…そうしよう!」


急ぎ足で武器屋にむかう。やはり童貞にはここまでが限界であった…別にお付き合いしたことが無い訳じゃないんだよ?2日で振られたけどね!


「は…はい!そうですね!行きましょう…」




武器屋に行くまでの間スピカと俺は気まずさまからぎこちない会話しかすることができない。



「あ…あの!テルさん!こんな高級な服をプレゼントしてくださってありがとうございます!このご恩は必ずお返ししますので…」


この流れはダメだ‼前回と同じだ!これはいけない‼


「わたしのから…「大丈夫だから!俺がやりたくてしただけだから!気にしなくていいから‼」


その言葉を聞いたスピカは顔を赤くしながらうろたえはじめる。


「そんな! 俺がヤりたくてしただなんて…」


「君基本的に俺の話し聞いてないよね?ねぇ何でかな?」


「そこまで言われては断ることも出来ませんね…(チラッチラッ


「めどくせぇぇ!何で俺の話をそんなに曲解しちゃうのかな?こんな街中で真っ昼間からする話しじゃないよ!?」


「街中で!? 昼間から!? でもテルさんが言うなら…」ポッ


「誰かーーーー!通訳を呼んでくれーー!」



彼女は見た目こそ大改造することに成功したのだがその他に問題がありすぎる…





俺は異世界にきてまともな人にまだ出会っていないような気がしたのだが悲しくなってきたので考えることをやめてまっすぐ武器屋へと歩き続けるのであった…



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