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第31話 勇ましくありたい

時間で言うともう日が沈んで辺りは真っ暗であった。そんな中、俺は旅立つ決意をする。もう決めてしまったんだから仕方がない。明日まで待っている余裕なんて俺にはないのだから。


「バカ者っ‼」


ゴンっ!


「ぐえっ!」


拳骨をくらった。


「心掛けは良いっ! だが早まっては勝てる勝負も勝てんわ!」


ごもっともです。先生…ちょっと調子に乗ってました。


「テルよ少し話をしようか…」


――――――



「あいっ!…ずびぃばぁぜぇん…」


泣くまで説教されました。

めちゃくちゃ恐かったです… 最初からあの勢いでこられていたら絶対に断れずにいたと思う。それも俺に考える機会をあたえたウラドなりの優しさなのだろう。 多分…


とりあえず今日は時間が遅すぎると言うことで出発は明日の昼くらいにする。





部屋に戻り少ない荷物をまとめているとラピスとラズリが突入してくる。


「「ねぇねぇねぇ 」」


頬を赤く染め嬉しそうに話しかけてくる。こう言う時のこいつ等は、絶対にろくなことを考えていない。 賭けてもいい。絶対にだ。


かまわず荷物をつめる


「「ねぇねぇねぇ!」」


「「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ‼」」


ダメだ…永遠に終わらないパターンだこれ…


「なんだ?」


「「明日には行っちゃうんでしょ?」」


もう知ってるのか…こいつらはいつもどこで情報を手に入れているんだろう? まぁあとから言いに行くつもりだったので手間がはぶけて良いのだか。


「あぁ。 ここに長く居すぎると また行きたくなくらるかもしれないからな。」


「「いくらなんでも早すぎよ‼」」


いやいや……君たちが俺を焚き付けたんでしょ?せっかくやる気出してんのにそんなこと言わないでよ… 少し前までは自分でも勇者っぽいと思ってたんだけどな…



「まぁ、そう言うな…もう決めたんだ」



「「なら思い出作りをしましょ‼」」


何いってんの?


「「今日は私達と一緒のベットで寝ましょう!」」


何いってんのこいつら!?


「落ち着けお前らっ! 」


俺はこの子達をそう言う対象として見ることができないしロリコンでもないし…ええい‼ 不純なことを考えおって! 説教してやる‼


「「落ち着いているわ! しばらく会えないもの…いっぱいおしゃべりしたいの!」」



不純なのは僕でした…母さんごめんなさい。



「まぁ それくらいなら良いだろう。 ただし眠くなったら部屋に戻れよ。」



「「はーい♪」」


なんだか手間のかかる妹ができた気分だ。ちょっとお兄ちゃんって呼んでくれないかな…? 全然やましい意味とかないからね?



「よし! まずは何を話そうか? 」



―――――――――


その日の夜、ラピスとラズリは結局部屋もどることなく俺のベットの上で寝おちする事になる。

当然のように朝一からノエル先輩に怒られた。昨日から怒られてばかりですね‼


旅立ちの日だというのに何故、俺は朝からこんな憂鬱な気持ちにならなければいけないのだろか…これも全部双子共のせいなのだが…


皆で最後の朝食を食べる。普通の貴族は当然のように使用人などとは食事をすることはないのだが、ウラドいわく「皆で仲良く‼」と言うことでこのように俺達も一緒に食事をしている。


右側にラピス、左側にラズリ、という形で座っているのだがやはり視線が痛い。


「お前達よ…もう少し離れることは出来ないのかい?ほら見てごらんウラド先生のあの目を……今に俺のこと殺しそうなくらい睨んでるよ」


顔は笑顔だが手に持っているフォークがもう別の道具に変形している。


「「いやー♪」」



君たち僕のこと嫌いなのかな?


「ははっ」

何だか笑ってしまう。

今日が最後だというのに変わらないな、コイツらは…

こんな日々が毎日続けば良いのだが……


俺は勇者だからな…


そんな俺を見て何かを考え込むようにしていたウラドが口をひらく。


「テルよ! 食事が終わり準備をしたら屋敷の前に来るがよい! 最後の授業をしてやろう‼」


えええええ…凄く嫌なんですけどっ‼

授業とか言ってるけど絶対荒っぽいことだよね?嫌だよ!


「えっと…拒否権は…」


「ない‼‼」


拒否権などなかった…


「わかりました……」


そう言い残してウラドが席を立ち上がる。


ニヤニヤしながらラピスとラズリが俺を見る。


「「ニヤニヤ♪」」


てかもう言ってるし…


「「頑張ったらテルにご褒美をあげるわ!」」


ガン!


ウラドが壁にぶつかる。

ウラドからは何か闘気のようやものが出ていた。



「「クスクス♪」」


ラピスとラズリが笑っている。その笑顔はイタズラが成功したときに見せるときのものであった。


シーーーーーン

回りの空気が凍る…


ヤバイめちゃくちゃ睨んでる…

こわいよ!


ガチャン‼


そのまま何もなかったかのように食堂から立ち去る。


「ねぇ何でお前らそんな余計なことすんの!? 見たかあの目っ? 絶対に訓練と言う名の虐殺がおこるよ?」



「「キャハハハ♪」」


「ねぇテル?」 「カッコイイとこ見せてね?」


まったく…コイツらは


「しょうがねぇな…」


重い足取りで食堂を後にする


屋敷の前に出ると何時もとは違う格好をしたウラドが立っていた。


黒と赤をモチーフとしたナポレオンコートをはおり。手足には血のような深紅の小手を装備している。


「これからお前は旅にでる。 その先に何があるかは分からん。だが勇者である以上、強敵と闘うことは避けられんじゃろう。」


今のウラドは本気だ。いつもの授業とは違い手加減をしてくれることはないだろう。


「最期の授業じゃ‼ 1つ上の次元を見せてやろう‼」


ウラドが俺の方をみて走る。試合開始のゴングはない。



今、ウラド先生の最期の授業が始まった。



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